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依代と神殺しの剣  作者: ありんこ
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ウルトラスーパーアルティメット自傷行為

 ボールペンが手に刺さったことがあります。ていうか、自分で自分に刺しました。はい。赤いボールペンでした。丸付けとかに使うあれです。

 覚醒世界に戻りたいとも思うがどうやったら戻れるのかよくわからない。さっき戻ったのは目覚まし時計が鳴ったからだ。

 だとすれば起きれば戻れるのかしら。でもその時はあの白い空間にいたのよね。ここからでも同じとは限らない。

 それに……目覚まし時計をセットしてないから、明日の朝まで起きられない。どうにか起きることはできないかしら。

「……っ!」

 頬骨の衝撃、切った口の中に血の味。あと手も痛い。何したのかって?決まってるでしょ。定番はこうやって自分の顔を力いっぱい殴るやつよね。いててて。痛いけど起きる感じではない。殴り足りないのかな?

 今度は、ばき、とかなり重い音がした。指の関節がおかしな感じ。人差し指の付け根が青紫に腫れ始める。やだ、折れちゃったかしら。唇に触れる生ぬるい液体を拭った手を見たら真っ赤だった。鼻血ね。殴り足りないってことはなさそう。

 じゃあ痛みの質かな?

「う……ッ」

 服をめくって、脇腹に例の包丁を刺してみた。最初が硬かったけど、その先は意外に抵抗なく、ずぶずぶと刃が食い込んでいく。内臓に入ったのかな……そのまま横へ、動かしてみる。

 かなり硬いし、持ち手が血でぬるぬるだけど、昔の武士の切腹みたいな状態になった。あっははこりゃあ痛いわぁ。滑る、痛みで力の抜けそうな両手で包丁をつかんで引き抜く。

 死ぬほど痛いけど、目は覚めない。ポケットのハンカチを柄に巻いた。これでいくらか掴みやすくなるでしょう。何するかって、ここまで来れば一つしかないでしょう?

 痛みで起きないなら、夢の中で死んでみりゃあいいのよ。さあ頸動脈を切ってみましょう。ほんとは介錯人の仕事だけどね。

 もちろん、起きるどころか死ねなかった。すべて終わると馬鹿馬鹿しくてしょうがない。何かしらこの一人スプラッタ。一人グロ。畳がものすごい色をしているんだけど。内臓はみ出てるんだけど。しかも涙まで出てるし。

 結論、何してるんだ私。

「だめだ、起きられない……」

 おじいちゃんに相談?いつもならそうするとこだけど、さっきごゆっくりとか言って出てきちゃったわよ?戻りづらい……これは戻りづらい!どうにか一人で解決しないと。

 でもこれ以上どうしたものかしら。もうちょっと内臓引っ張り出してみる?おぅふ、きもーい。しかも痛ーい。切腹とさっきは言ったけど、切腹の場合、内臓を相手に投げつけたりもするのよねー。想像できないわあ。痛そうで。

 とりあえず、内臓は戻そっか。精神衛生に悪い。……あれ。どこに何があったっけ。腸って後ろのほう?肝臓は?これもしかして子宮?これはたぶん腎臓だけど……もう片方はどこに!?さては外国か!

 もういいや適当に突っ込もう。

「……依?」

 背筋がびくっとなった。きこきこきこ、と背後を振り返る。ちょっと呆れた顔で、ポロシャツによくわからないズボンのお兄さんがこっちを見下ろしている。お、おじいちゃんいつの間に。

「ななななななな何でもないわよ!?単にちょっと起きたかっただけで!ほら!夢の中で自分を殴って起きるの、あるじゃない!自殺未遂とかそういうんじゃないから!ね!?ね!」

「いや、その割に切腹にしか見えんし……その……これは」黒い大きな瞳が右端のほうへ泳いだ。「らっきーすけべ、と思ってよいのか?」

「……はあ?」

 いやほら、と白い眉毛をㇵの字にする。

「色々見えておる状態をそう言うと、依代の部屋にあった本にじゃな……」

 ゆうううううううううげええええええええええ!何さらしてくれとるんじゃああああああ!おじいちゃんが変な言葉覚えただろがああああ!脳内で絶叫した。覚醒世界に戻ったらひとこと言ってやらねば。

「だとしてもこのパターンは一番ありえないわよ。それはえっちい露出だから。これグロいやつだから」

「そうなのか?かなり刺激的というか、官能的じゃが」

「へ?」

「こう、濡れて線が透けておる」

 私は改めて自分の姿を見下ろした。内臓はもう大方納まったが、どこもかしこも血まみれである。確かに……服が血で濡れて貼りついている。しかし、血まみれの女の子を前にして言うセリフがそれか?

 まっすぐ、あの黒い両目を見返した。

「……クソジジイ」

「なぬっ!?」

 それっきり私はあのぐちゃっとした姿になってそっぽを向いた。おじいちゃんが泣きそうになりながら私の名前を呼びながら揺さぶっているがもう知らん。

 気づくと、あの白い空間に戻っていた。戻ろうと思えば戻れるってことかしら。しばらくして目が覚めた。やっぱり夢は夢だ。

「うわ……ほっぺ腫れてる」

 グーで二発も殴った自分の顔がえらいことになっていたのを除いて。

 授業が面白くなくって左手の親指の付け根をボールペンでとんとんしていたのです。で、もしかして刺さるんじゃないかな?と思って、ちょっと弾みをつけて赤い点がついているところに振り下ろしてみました。

 ぷすっ。

 実際にそんな音はしていませんが、爽快なくらい刺さりました。ボールペンの先端にはボールと、円錐形の金属部がありますよね。

 あの円錐形の部分が私の左手の中に潜り込みました。抜きました。意外と痛みはないんですね。

 血がなかなか止まらなかったのが唯一の問題点かな。

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