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依代と神殺しの剣  作者: ありんこ
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移植

 やっと更新できました。テンポアップできないのかなー。

 当然の結果ながら病院には間に合った。かなりのスピードで走り込んだからちょうど出て来たばあさんが腰を抜かしていたけれど、知ったこっちゃあない。だって病院の前だ。このくらいのことはあるわよね。

 自転車を駐輪場に停めて、院内へ入る。気持ち悪いくらい暖色系の、薄いクリーム色で塗りたくられている。椅子も同じようにうすら寒く感じさせるサーモンピンクだ。躊躇したが、少し疲れたので座る。

 しばらくして、呼ばれたのは弓削が先だった。私はそこから本も持ってこなかったからぼーっと、院内にかかっているオルゴール調のヘビーメタルを聞いていた。

 なんだそれと思うだろうがかかっているものは仕方ない。メロディを知っているからわかった。

 知らなければ落ち着くのかもしれないが、私は笑いをこらえるのに必死だった。逆効果だ。

「衣川さん」

 呼ばれて受付に行くと、今度は診察室まで連れて行かれた。

 ここの病院に来るのは初めてではない。前に行った診察室とは別の部屋だった。方向も全然違う。診察室じゃないのかもしれない。

 特に説明もないまま横になるように言われて、麻酔を打たれた。いてっ。何をしやがる!反論もできないまま落ちる。

 いや、完全には落ちていない。体がふわふわして動けないけど普通に意識はある。目も開いているから見えてるぞ!顔を覚えたからな!暗い夜道に気を付けろ畜生。

 一人でそんなことを思っていると部屋の奥のドアを開けてそちらへベッドごと搬入される。不思議な形のライト。どこかで見たな。

 アダムスキー型の腹側みたいなこの……な、何!?手術室だと!?何をする!さらに体を逆さ向けにされた。うつ伏せ状態だ。ひんぬーだから胸元は息苦しくないけど、顔もうつ伏せだからベッドの上とはいえ鼻と額が痛い。

 ちょっとでもずらしたいが、まるでマシュマロの塊に挟まれているようで、体が言うことを聞かない。

 首筋に何か冷たいものが通る感触があった。切られたのだろう。痛みはない。麻酔が効いているのか?傷口が開かれる。詳細に把握できすぎだろう、私。次は何だかピリッと来た。

 麻酔が効いているはずなのに?

 あっ、これ駄目な奴だ。

「――!」

 声も出せない。歯医者とかで歯を削りすぎて神経に達した時の痛みに似ている。やばさとしてはそのワンランク上。

 首筋!?よくわからないけどそこって大事な神経通ってませんか!?痛い!痛いよう!また開かれたらしい。うーピリピリする。

 今度は何かにゅるっとしたものがそこへ当てられる。何ですかこれ?お薬?そうだと言ってよお医者さん。

 言ってくれたところでもう二度とこの病院には来ないけどな。藪医者めらが!

 にゅるにゅるを神経の切り口に放置して、神経の切り口も放置して彼は外側の肉とか皮膚とかを縫い合わせた。つながなくていいのだろうか?明日からちゃんと手足動くんだろうな?寝たきりは嫌だぞ、この年で。早すぎるから。

 ま、今更オリンピックなんて狙ってないけどね?

 しばらくして麻酔から覚めた。うつ伏せのまま放置されていた。鼻が痛い。手足は問題なく動くようだ。

 首の後ろに手を回してみると、ガーゼか何かが当てられていた。あの手術は何だったのだろう。

 ここは病室らしい。私の他には誰もいない。外に出てみた。隣の病室には矢具誠一という男性がいるらしい。

 人の姓名が書かれた札を睨んでいたら、病室の中からいたずらっぽい年配の人の声がした。

「お嬢ちゃん、そんなとこに立ってないで入っておいで」

 なんでわかったのだろう……ここは死角のはずだ!一歩踏み出す。

「あ、鏡ついてる。すいません、うろうろして」

 思ったより年を取った、年配の人というより老人だった。

「僕も暇なの。話し相手になってくれない」

 さっき思ったより年を取っていると言っておいてなんだが、誠一さんは白髪頭ではあるものの、まだまだ元気そうなおじいさんだった。何で入院しているのだろうか。

「飴ちゃん食べる?」

 知らない人について行ってはいけません、が常識だが私はのこのことおじいさんのベッドの横に訪問客用の椅子を据えて座った。おじいさんだし、孫の愚痴とかそういうのだろう。

 ならば親戚相手で聞きなれている。

「神様っていると思う?」

 いきなり答えに窮した。誠一さん、いきなり深いところ来たぞ。どうしたんだ。

「えっと……進化論に逆行する話とかですか?そっちはあまり」

 旧約聖書をホラー小説だと思って読んでいた私には死角しかない。焦る。

「いいや。この世界は羊皮紙の一片に描かれた気まぐれの産物かもしれない、本当の支配者は別にいるのだっていう方」

「それって、クトゥルフ神話みたいなのですか?私は好きだけど……でもあれは創作ですよね」

 にんまりとご老人は笑った。バターボールをくれる。おいしい。

「そう、創作なんだ。アメリカの作家が発案し、そこから作家たちが作り上げていったフリーの厨二素材みたいなもの」

「あ、は、はあ」

 おじいちゃんフランクすぎィ!言い方が身もふたもない!何なんだこの人!嬉しいけど!

「でも、創作じゃないとしたら?本当にそんな存在がいて、彼らが小説家たちに何らかの影響を及ぼしたとしたら?」

「あ、そっちの方が面白いかも!」

 つい大きな声を出してしまった。小さくなって、すいません、と謝る。

「いいのいいの。どうせ誰もいないから。そんなところでネタ話なんだけど」全く関係ないが、私はこのときこの病室には窓がないことを発見した。「僕はついこの間まで15歳だった、なんて言ったらどうする?」

 何を言い出すんだこの人は。暇な老人って怖いな。

「ええと、じゃあ、信じた体で」

「信じた君のSAN値はとりあえず最大値を100として45で計算しよう」

「いきなり半分以上減ってますけど!?」

「じわじわ減って45だから。あと僕、こう見えてTRPGしたことないから適当ね」

 暇な上に雑な人だな!

「ああ、はい。じゃあ信じた体で次進めてください、誠一さん」

「雑だねえ、君。こういうのは導入が大事なのに」

 あんたに言われとうないわさ!私の中で見知らぬ血のつながった叔母さんが絶叫していたが内なる叔母さんのことなんて知らない。

「まず何から話そうかな。そう……あえて時系列を逆にしてみよう」

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