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薄明かりが漏れる方向へ歩を進めると、三人の耳にコツコツと足音が聞こえてきた。その音はだんだん近づいてきて、音の主が確信に満ちた動きで進んでいることが明らかだった。


「誰かが来ます……!」


サリーが息を殺しながらエレナの耳元でつぶやいた。エレナとサリーはすぐさま壁際に身を寄せ、息を潜めたが、カナエは歩みを止めなかった。


「ちょっと! カナエ!」


エレナはもはや小声になっていない声でカナエを呼び止めようとした。しかしその足音の主は一瞬で姿を現した。鎧に身を包んだ男で、警備兵の風体だった。男は手持ちの炎をかざし、自身の顔をはっきり見せるようにしてから、にこっと笑った。その顔がはっきり照らされたとき、エレナとサリーはほっと息をついた。なぜなら、その男の名はハヤテといって、ヴァレンタイン家の若い忍びだったからだ。今回ベガの城に潜入している忍びのうちの一人で、部屋で待機している間、カナエがひそかに連絡を取っていたのだった。


ハヤテは三人に向かって穏やかな声で「こちらへ」と言うと、安定した手振りで道を示した。地下牢は冷たい石壁に囲まれ、湿気の染み付いた壁が独特の生臭さを発している。通路に等間隔に設置された火の光は温かみを失い、地下の陰鬱な雰囲気を増長していた。


交代の時間は約10分間。牢の前を警備する兵はおらず、地下牢の正式な二つの出入り口にそれぞれ一名立っているのみということだった。通常であれば地下通路や牢の前にも警備が残るのだが、バナーム使節団の歓迎会に人員が割かれている。そして出入り口のうちの一つを担当していたのが、警備に変装したハヤテだった。


暗い地下通路を進み、ハヤテはソラとサミュエルの入った牢の前まで三人を案内した。カナエは複製した鍵を取り出し、緊張の中、素早く錠を開けた。


「ソラ! サミュエル!」


エレナは心臓が喉まで上がるのを感じながら、張りのある声で二人の名前を呼び、臭気立ち込める牢の中に飛び込んだ。二人は痩せ細り、特に老体であるサミュエルはかなり衰弱していて、息も絶え絶えだった。


ソラとサミュエルの顔を見たとき、エレナの心に安堵が訪れた。しかしそれは、ほんの一瞬だけだった。直後、怒りがエレナの心を覆い尽くし、その熱さが頬を紅潮させ、指先まで力がこもった。彼ら二人をこんな酷い状況に追いやったベガ王国への怨みが、まるで地下牢を窒息させるほどに膨れ上がった。エレナの目に映る二人は消耗しきっており、かつての活気ある姿は影も形もなかった。カナエからは食べ物は与えられていると聞いていたが、目の前に広がる現実は、生きるか死ぬかの厳しい環境だった。エレナは自分の甘い想像を恥じた。


「エレナ様……?」


ソラの弱々しい反応だけが返ってきた。ぐったり座り込んでおり、かろうじて意識がある、という状態だった。


「しっかりして! 助けに来たわよ!」


エレナはソラの冷たく細い肩を抱き、軽く揺さぶった。ソラは夢うつつの状態で、まだ現実を把握できていないようだった。虚ろな目を半開きにしてはまた閉じた。乾燥した唇がわずかにパクパクしたものの、エレナの名を口にした以外は、言葉にならなかった。


まさにそのときだった。牢のそばにいたハヤテとカナエが一斉に同じ方向へ顔を動かした。まもなく、たくさんの警備兵の足音が、エレナの耳に入ってきた。エレナたちのもとへ、挟み撃ちをするかのように、双方向から迫っている。


エレナは状況が飲み込めなかった。計画が狂い始めたことへの不安が彼女を襲った。

「まだ時間あるはずでしょ!?」


ハヤテは(なぜだ……?)という疑問の表情を浮かべ、この後どう行動すべきか頭をフル回転させているようだった。


カナエは落ち着いた声で、「向かって来ている警備が多すぎますね……急ぎましょう。戦闘になるかもしれません」と答えたが、その声にはわずかに震えがあった。


サリーはサミュエル、カナエはソラを背負った。警備兵の足音はさらに大きくなり、それが地下通路の上下に響き渡る。


一本道の地下通路に逃げ道はなかった。


「隠し通路も……間に合いません」カナエは冷静に言った。


あっという間に、多数の警備兵がエレナたちのもとへ押し寄せた。


全員が戦闘体制に入った。エレナも剣を抜いたが、その切っ先はビクッと震えた。彼女は自身の目を疑った。警備兵の列を率いていたのは、バナーム王国使節団の主幹、ギルベルトだった。彼の顔には、猫が鼠を見つけたときのような、したたかな、あるいは得意げな表情が浮かんでいた。


「これはこれは、エレナ様。こんばんは」

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