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気さくな侯爵令嬢は恋をする。  作者: 三条夜実
一期生編
12/12

テストと学院祭。

いよいよ中間テスト。私は歴史で満点を取らなければならない。他の教科も疎かにしてはいけない。前よりもハードルが上がっている。


「あの堅物教師を唸らせたいわ……!」


目標はシガロン先生を唸らせること。唸らせればそれでいい。


それに1日目の最初の教科は歴史。これはいける。猛勉強した成果を見せてやろうじゃない。


と、テストの時間がやってきた。

回されるテスト用紙。さあ、来い歴史!


「………!」


なんだ、簡単じゃない。でも油断したら満点は取れない。油断せずに臨まなきゃ。

私はペンを走らせ、問題を解き続けた。


***


テストは順調。ほとんどの教科で満点に近い点を取れるだろう。


やがてテスト返しの時間になり、最初は歴史。


シガロン先生から答案用紙を受け取る。


「………………満点だ。さすがだな、と言っておこうか」


「当然ですわ。私が本気を出せばこれくらい簡単なことです」


シガロン先生を挑発してみると、眉がピクっと動いた。


「………ほう?じゃあ期末のテストも満点なんだろうな?」


「ええ!満点を取ってみせますわ」


私はまた高らかに宣言してしまった。完全にやらかしてしまった。期末テストは範囲も広くどこから出るのか分からない。やってしまった。と、後悔してしまった。


***


二日後、順位が張り出され、私は自分の順位を探していた。


「あった……!」


今回も一位。フレデリックとの差も広がっている。やっぱり勉強時間を増やしたのが良かったのだろうか。


「あー……おめでとう、エルシオンさん……」


「フレデリック!ありがとう」


「……………ちなみにフレデリカは追試らしいよ………」


「あらら……」


戦術科の方も見てみると、フレデリカは下の順位だった。今回は皆で勉強会が無かった。やはりその場を設けるべきだったのかもしれない。



まあテストも終わった。あとは学院祭がある。音楽科と戦術科の発表がある。ルルとフレデリカの勇姿を見なければ。


今は二月。学院祭は二月末だ。


***


二月中旬。ルルは遅くまで音楽室に残り練習している。


「遅いわねぇ……」


私は食堂の厨房を借りてクッキーを作った。ルルが戻ってきたら一緒に食べようと思ったのだけれど。

ルルはやはり練習をしているようで、なかなか帰ってこない。


もう九時だ。予習と復習をしながら待っているがなかなか帰ってこない。と、思っていると。


「た、ただいま……」


「ルル!」


帰ってきた。少し申し訳なさそうにしているのは気のせいだろうか。


「遅いじゃない!こんな時間まで練習して……心配したのよ?」


「ご、ごめんなさい。なかなか納得といく歌い方が出来なくて……」


ルルは独唱を任されている。それは無理もない。


ハッとして私はクッキーを出した。


「これ!最近遅くまで残って練習してるじゃない?だから……私からの……」


袋に入れられたクッキーは少し歪な形の物も混ざっている。


「これ、クーデリアちゃんが……?」


「そ、そうよ。晩ご飯の後に厨房借りて作ったの。お腹、空いてるでしょ?」


「形、変なのある……ふふっ……」


「し、仕方ないでしょ!初めて作ったんだから!」


味は保証するわ、といってクッキーを差し出した。


「じゃあ、いただきます」


ルルがクッキーを食べた。


クッキーを食べたルルの動きが止まった。


「えっ、本当に美味しくなかった?不味い?」


レシピ通り作ったんだけど……。不味かったなら本当に申し訳ない。


「美味しい……けど、ちょっと甘すぎる……かな?」


「ご、ごめん………」


砂糖が多すぎたのだろう。私には丁度いいんだけど……。私は甘党なのか。


「ありがとう、クーデリアちゃん。これで明日からも頑張れそうだよ」


ルルはさっきまで疲れた顔をしていた。でも、嘘みたいに笑顔になっている。


私のしたことは、ルルを笑顔にした。


***


あっという間に学院祭がやってきた。音楽科と戦術科の生徒達がこれまでに培ってきた技術や努力の賜物を見せるとき。普通科の生徒は観覧客となる。

戦術科の発表は外、音楽科は講堂での発表となる。


開会式が終わり、それぞれの生徒は講堂に残るか外に行くかを決める。私は先に音楽科の一期生の発表を見るために講堂に残る。

戦術科の発表は弓、剣技、体術など分かれる。フレデリカは剣技の方にエントリーしているから後の方らしい。大体昼前になるそうだ。


「今から一期生ね……」


これから音楽科の生徒による発表がある。ルルは声楽コースの発表で二番目という。


「ルル、頑張って……!」


まずはオーケストラによる演奏。完成度がとても高い。一期生で経験が浅いとはいえ、レベルが高い。

ヴァイオリンやヴィオラ、フルートやコントラバスといった楽器それぞれが美しい音楽を奏でている。


オーケストラが終わると、大きな拍手が沸き起こった。それに倣うように私も拍手を送る。


「すごい……!」


思わず感嘆の声が漏れていた。


続いてルルがいる声楽コースの発表。曲はこの国を讃える歌。歴史のある歌だ。


とても荘厳。この一言に尽きる。一期生でもここまで仕上げるとは。


ルルの独唱パート。


「ルル、声綺麗……!」


とても綺麗な歌声。聴かせて、と言っても聞かせてくれなかった。


『本番までは駄目だよ?』が、わかった気がする。


合唱が終わると、私は拍手をしていた。


その後に続く四期生まで発表を見てから、外に向かった。


***


外は既に剣技が始まっており、たくさんの人が集まっていた。


「フレデリカはまだみたいね。間に合ったわ」


フレデリカの順番はあと少し。それまで他の生徒の剣技を見ていよう。


剣技は初めて見た。かっこいいものだ。




昼前になるとようやくフレデリカの順番が来た。


「フレデリカ・アンナ・ミラスカーナ。参ります」


剣を抜き、舞い始める。元々剣技を嗜んでいたらしく、とても様になっている。


「すごい………」


終わると拍手喝采。私も拍手した。




学院祭は終わり、次は期末のテスト。範囲が広く、どこが出るのかわからない。


頑張らなきゃ。

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