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中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第2章 エピローグ
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エピローグ

 次に私が目を覚ましたとき。

 目の前にあったのは、真っ白な天井だった。


「あれ……ここは?」


 呟きながら、私は上体を起こす。

 すると――私の周りには、見知った仲間たちの姿があった。


「アリス、目を覚ましたの!」

「ユピ。私、一体……?」

「丸一日も眠ってらしたんですわよ。まったく、あんな強力な魔法を連続で行使するからですわ。いくら自分が強いからって、無茶しすぎではなくって?」


 嫌みとも心配してるともつかない、そんな言葉を掛けてくるのは、チェリル。


「丸一日……そっか。私、あのあと眠っちゃったんだ」


 魔王グランロッサの声と会話をしたあと。

 リーリカに強く抱き締められながら。

 魔力を使いすぎたからか、私はどうやら意識を失ってしまったらしい。


「でも、よかったよー。もう目が覚めないんじゃないかって、リーリカちゃんが心配してたんだからー」


 ミルミーがいつもどおり、満面の笑みを浮かべる。


 そして、その後ろから。

 ユピに背中を押されつつ、リーリカがこちらへ近づいてきた。


「リーリカ……」

「――アリスっ!」


 ガバッと。

 リーリカが私の身体に覆い被さるようにして、抱きついてきた。


「ちょっと、リーリカ。そんなにしたら、痛いって」

「あ、ご、ごめん……。でも、あたし。アリスが目を覚まさなかったら、どうしようって……ずっと」


 そう言ってリーリカは、ぽろぽろと涙を零しはじめる。

 嗚咽まで漏らしちゃって。


 リーリカってば……そんなに心配してくれてたんだね。


「ほら、リーリカ。泣かないで。私は大丈夫だから」

「……うん」


 私が頭をポンポンって撫でると、リーリカはごしごしと目元を拭って、泣き腫らした目のままにっこりと笑った。


「ちぇー。リーリカを励ますのは、うちの役割だと思ってたのになぁ」


 そんな私たちの後ろで、憎まれ口を叩くのはキサラさん。

 壁にもたれ掛かって、頭の後ろで手を組んでいる。


「ねぇ、リーリカ。うちにも頭撫でさせてよ? 優しくしてあげるからさぁ」

「やです。私の頭は、アリス専用なんだから!」


 私専用の頭って、どういうことなのよ。

 よく分かんないことを言って、私の胸に飛び込んでくるリーリカに、思わず苦笑してしまう。


「はぁ……やっぱりアリスの近くは、落ち着くわ。いいにおいもするし、柔らかいし」

「ちょっ!? そんなこと言いながら、私の胸を触るのはやめてってば、リーリカ!」


 そんないつもどおりの掛け合いをする私たちに、ユピたちみんなも笑い声を上げる。

 そんな光景に――私はふっと胸が軽くなるのを感じる。


 ヴェルゴーシュとの死闘という非日常を乗り越えて。

 私は取り戻したんだ。


 眩しいくらいに明るくて、底抜けに楽しい、この平和な日常を。


「あ……そういえば、チェリル。丸一日寝ちゃってたって、言ってたよね?」

「ええ。ぐっすり眠っていらっしゃったものだから、もうとっくに日をまたいでしまってますわよ」

「ってことは、今日は日曜日?」

「そうだよー、アリスちゃん」


 そうか。じゃあ、今日は……。

 私は腰を浮かせて、スカートのポケットに手を突っ込んだ。


 そしてごそごそと、『あれ』を探す。


「ちょっと、アリス。もう少し寝てなくっちゃダメだって。まだ目を覚ましたばっかりなんだか――」

「リーリカ……ごめんっ!」

「え?」


 私の突然の謝罪に、リーリカは戸惑ったような顔をする。


「ほら、昨日。ヴェルゴーシュが襲ってくる前――私とユピで出掛けてたのを、リーリカってば気にしてたでしょ? だから、ごめん。リーリカを不安にさせちゃって。仲間外れにされたって、思わせちゃって」

「そんな……いいよ、そんなこと」


 ううん、よくないよ。


 私だって多分、リーリカとユピが私を置いて出掛けちゃったら、なんだかもやっとした気分になっちゃうと思うもん。

 これまで友達がいなかったから、あんまり意識したことなかったけど。


 友達から除け者にされたなんて感じたら、辛くて仕方ないに決まってるよね。

 理由があったとはいえ、本当に……ごめんね、リーリカ。


「聞いてほしいんだ。あのときはどうしても、リーリカを連れていけないわけがあったんだってことを。それは絶対に、リーリカに嫌な思いをさせるためじゃなかったんだってことを」


 そして私は――ポケットからひとつの箱を、取り出した。

 ヴェルゴーシュとの戦いのせいで、ちょっと砂埃がついちゃってるね。


 ごめんね。本当はとびっきりきれいな状態で。

 最高のシチュエーションで……渡したかったんだけど。


「誕生日おめでとう、リーリカ。生まれて来てくれて……そして私と出会ってくれて、ありがとう」

「……え?」


 私はパカッと、蓋を開ける。


 箱の中に据えられているのは、真っ赤な色の宝石を携えた、小さな指輪。

 リーリカの髪の色とお揃いの、炎みたいな指輪だ。


「それじゃあ、ユピと出掛けてたのも。なんだか一昨日からこそこそしてたのも……全部あたしの、ためだったってこと?」

「そうだよ。リーリカを喜ばせたくって、一生懸命隠してたんだけど……ごめんね。そのせいで、リーリカを傷つけちゃった」

「そっか。そうだったんだね。バカだなぁ、あたし……」


 ぽろりと。

 リーリカの瞳から、大きな水の雫が零れ落ちる。


「あたしの方こそ、ごめんね。アリスに隠し事されてるみたいで、寂しくって……不安でいっぱいになっちゃって、アリスにひどいこと……言った」


 そう呟くリーリカの言葉には、段々と嗚咽が混じっていって。

 最後の方はしゃくり上げるようにして、泣き崩れてしまった。


 そんなリーリカのことを、私はギュッて抱き締める。

 もうこれ以上、リーリカが不安にならなくて済むように。


 私がいっぱいいっぱい、あなたを愛してるんだって――伝えるために。


「泣かないで、リーリカ。いつもみたいに、素敵な笑顔を見せて? だって私は、いつだって……笑ってるあなたが、大好きだから」

「……うん。分かったよ、アリス」


 リーリカは、目元をごしごしとこすると。

 私の持つ箱の中から、そっと指輪を取り上げた。


 そして、それを――右手の薬指へと、ゆっくりとはめた。


「どうかな、アリス?」

「うん! とっても似合ってるよ、リーリカ」


 そう言ってはにかむように笑うリーリカが、とってもかわいかったから。

 私も思わず、笑ってしまう。


 そんな私たちの周りから――ユピたちがパチパチと、拍手を送ってくる。


「おめでとうなの、リーリカ!」

「まぁ、お祝いしてあげなくもないですわよ? リーリカさん」

「リーリカちゃん。本当におめでとー!!」

「あとでうちが、最高にかわいがってあげっからね?」


 口々に好き勝手なことを言うみんなに、リーリカはぷっと吹き出した。

 そして「あはははは」と楽しそうに笑いながら。


「ありがとうアリス、みんな! 今日はあたし史上、最高の誕生日だよ!!」



 そして私たちは、チェリルたちの部屋に移動して。

 パーティー用に派手な装飾のされたその空間で、リーリカの誕生日をお祝いする。


 ケーキの上に突き立てた蝋燭を吹き消して。

 ジュースの入ったコップで、乾杯をして。

 私たちは盛り上がる。私たち史上、最高に。


 そんな素敵な誕生日パーティーを過ごしながら――私はふっと、考える。



 ――これからもまた、ヴェルゴーシュのように凶悪な魔物たちが、この学園を襲ってくるのだろうか?

 そんな凶悪な連中から、私はみんなを……護りきることができるんだろうか?



 そこまで考えてから――私は「ううん」と小さく首を振った。


 私がみんなを護りきる、じゃないよね。


 私はカンナさんとは違う。

 誰かを犠牲にして、たった一人で孤独に強くなるんじゃない。


 みんなで一緒に、戦うんだ。

 みんなで一緒に、強くなるんだ。


 そしていつかは、必ず――。

 ――魔王グランロッサを、倒してみせる。


「アリス……なぁにボーッとしてるの!」

「あっ!? ちょっ、リーリカぁ! どこ触ってるのさぁ!!」


 相変わらずボディタッチ過剰なんだから、リーリカはぁ。

 そんなリーリカを引き剥がしつつ……私は心の底から、笑った。

 みんなで過ごす、こんな当たり前の日常が愛おしすぎて――声を出して笑ったんだ。



 願わくば、どうか。

 こんな幸せな日々が……いつまでもいつまでも、続きますように。

皆さまの応援のおかげで、第2章完結まで書き切ることができました。ありがとうございます。

感想・評価・ブックマーク……いずれも励みになります!


そして誠に申し訳ないのですが……商業・本業がバタバタしているため、しばらく更新は停止させていただきます。

連載再開まで、お待ちいただけましたら幸いです。

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