第十章 地球からの・・・
「来るぞ!」
ウォーレンは、黒い影めがけて体当たりをした。ほぼ同時に、後ろにいたロジャーも、後方からの黒い影に突進した。
一瞬、早川はどちらに向かえば良いのかわからず、右往左往していると、レイニーが、
「とにかく、まともに戦っては勝てません!きっとウォーレンやロジャーもまともに戦う気はないと思います!ここは、シーバを庇いつつ、逃げた方が良さそうです!」
「し、しかし・・・」
すると、友香が、
「レイニーの言う通りよ!ここは逃げましょう!」
シーバの前にはレイニー、横には友香がピッタリくっついて足早に移動し始めた。迷っている時間もないと感じた早川は仕方なく、友香と反対側について、キャンプ地の方向へ駆け出した。
「ここで、少しでも時間を稼ぐ!キャンプ地までの道はわかっている!適当に後から向かうから急ぐんだ!」
ウォーレンが叫ぶ。
さすがに迷っている暇は無く、ウォーレンの叫ぶ声を後に、全速力で走り続けた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・はっきり見えなかったけど・・・本当にさっきのはノレッセだったのか?」
走りながら、早川が叫ぶ。たしかにはっきりと姿を見たわけでは無かった。よくわからないままに、黒い影が近づいてきたかと思うと、皆で駆け出していたのだ。
「た、たしかに、ちゃんと確認はしてませんが、こういう状況では確認してからでは間に合いませんよ・・・。かと言って今から引き返すわけにもいきません!ここはウォーレンたちの無事を祈りつつ、キャンプ地を目指さないと!」
どうやらレイニーも、黒い影の正体を確認出来ていなかったようだ。しかし、友香は、
「はっきりとは確認できなかったけど、ノレッセとは違うと思うわ。まず、人数が少なかった。一瞬だけど動体視力には自信があるわ。黒い影は二つしか確認できなかった。もちろん、ノレッセが分散して行動している可能性もあるけど・・・」
「俺も、なんとなくノレッセでは無かったような気がする。でもレイニーの言うとおり、今更引き返すわけにも行かないし・・・」
早川たちは、とりあえず走る速度を緩めた。さすがにずっと全速力で走り続けるには体力が持たない。
「無事を祈るしかありませんね。とにかく、我々はキャンプ地を目指しましょう。」
「そうですね。今の所、追っ手が迫っている気配もありませんし・・・」
「結果的には結構距離を移動できました。あと、歩いても三時間くらいで森を抜けるでしょう。」
早川たちはシーバを囲う陣形を解いて、少し足早に、進む事にした。
と、陣形を崩した瞬間、バキっと、枝を踏むような音が聞こえたかと思うと、すぐ近くにいたレイニーが早川に飛び掛ってきた。
「危ない!?」
レイニーは早川を押し倒すようにして、二人とも地面に倒れこんだ。
「レイニー!陸!大丈夫?」
友香が叫ぶ。早川は一瞬何が起こったかわからず、横に倒れこんだレイニーを見た。
「あっ!レイニー!大丈夫ですか!?」
腕からは血が流れていた。
「だ、大丈夫です。かすっただけです!それより、これはマズい状況です。どうやらノレッセの連中のようだ・・・しかし、何故正面から・・・」
友香は、危険も顧みず、レイニーたちを打った方向へ駆け出した。
「危険だ!友香!」
しかし、友香の耳には届いていないようだった。そのまま、左右に身をかわし、飛び上がると、膝蹴りをした。
「許さないわよ!」
しかし、相手は確実に銃を持っている。このままでは、危険だ。とにかく早川は友香の居る方向へと駆け寄った。
レイニーも腕を押さえながら起き上がると、シーバの方へ向かった。
「シーバ!大丈夫ですか?」
「私は大丈夫です。とにかく、この薬を!」
シーバはレイニーに持っていた薬を渡した。塗り薬のようだった。レイニーは急いで傷口に塗りこむ。
「っ痛!」
一瞬激痛が走ったが、みるみる傷口は塞がった。
「す、凄い!」
「ホルキンス人秘伝の薬です。少々の傷は一瞬で治ります。それより早川さんたちを!」
反対方向にいる早川の下へと急いだ。
一方、早川は、
「大丈夫か!友香!」
「私は大丈夫よ!それより、まだ、何人かの気配を感じるわ!気をつけて!」
早川には今の所、どこにその気配があるのか方向さえつかめなかった。やがて、レイニーとシーバも近づいてきた。
「これは本当にマズいですね・・・左側に一人・・・右側には二人以上の気配を感じます・・・素手では限界が・・・」
「し、しかし、この状況では逃げることも出来ない・・・」
「覚悟を決めるしかなさそうですね!僕は左側を・・・早川さんと森本さんは右を、そしてシーバは、ここに居て下さい!」
早川と友香は黙って頷くと、一気に右側へ、と、同時にレイニーは右側に駆け出した。
早川の目の前に人の姿が二つ見えた。幸いにも木々が邪魔をして、簡単には当たらないだろう。
「行くわよ!」
友香の合図で、木々を避けながら、一気に早川は下半身目掛けてタックルを、友香は、また左右に体を振りながら、一気に顎を目掛けてフックを・・・
素手で向かってこられるとは思っていなかったしく、見事命中、膝から崩れ落ちた。しかし、早川のタックルは、直前で、少しかわされ、二人とも倒れる形となった。
「陸!」
友香は倒れこんだ相手の銃を素早く奪うと、早川より早く立ち上がろうとする相手のこめかみ辺りをその銃で殴りかかった。
男はうめき声をあげながらその場に倒れこんだ。
「ふふふ、やるじゃないか。だが、それまでだ・・・」
「くっ・・・」
攻撃している間に、別のノレッセが背後に近づいていた。
「おっと!動くと容赦なく撃つぞ!まずは質問に答えてもらおう。青柳教授はどこだ?」
どうやら、後頭部には銃を突きつけられているようだ。倒れこんだ早川は頭に当たる感触からそう判断した。友香も身動きが取れない。
「早く言わなければ、まずは女の方から撃つぞ!」
どうやら、背後にいるのは一人では無さそうだった。このままでは友香が殺されてしまう・・・
「こ、ここにはいない・・・。」
映画やドラマの影響なのか、これまで銃を突きつけられた経験など無いにもかかわらず、早川は自然に両手を頭の後ろで組むようにして、ゆっくりと立ち上がった。
「ここにいないことくらいはわかっている!質問に答えろ!どこにいる!」
「随分と前に違うルートへと進んだ。そのルートは俺たちは行ったこともないのでわからない。」
「ふん・・・ならばお前達にはもう用は無い。死ね!」
早川は覚悟を決めた。せめて自分を先にと思った。友香が撃たれる所なんて見たくはなかったからだ。と、頭に衝撃が走った。
「う、撃たれたのか・・・思ったより痛くはないな・・・でも頭を撃たれたのなら即死じゃないのか・・・まさか、あの世が存在するのか?まだ意識はあるようだけど・・・」
早川は衝撃で前のめりに倒れそうになる所を、とっさに手で支えた。隣には見た事もない男が倒れこんでいる・・・。
すぐに後ろを振り返ると、そこには、見た事のある顔があった。
「じゅ、順平・・・さん?」
そこには順平の姿があった。そして、その背後には武装した兵士らしき姿の男達が10人ほど目に飛び込んだ。
「陸!大丈夫?」
友香が駆け寄ってきた。
「友香こそ大丈夫?それより、大杉さん、東さん・・・無事地球に・・・良かった・・・。」
「いえ、彼女たちは無事に地球には辿り着いていますが、その援軍はまだ、こちらへ向かっている最中です。実は早川タケル・・・については僕自身怪しいと感じてましたので、独自に調査していました。ちょうど調査結果が出る直前に、彼は地球を離れてしまい、最初、どこへ向かったのかわからず、ここへ来るのが遅れてしまいました。」
「そ、そうだったんですか・・・」
「ただ、僕たちは人数も少なく、やはり援軍が到着しないと、ノレッセを一掃することは難しそうです。ここにいる連中は捕らえましたが、まだ、肝心の、二人は見当たりませんしね・・・」
「それでも、とにかく助かりました。有難うございます。」
早川はひとまず立ち上がった。とにかく、心強い仲間が増えて、少し安心できたが、一方で、ノレッセも確実に分散して行動している・・・ということは教授達のことも心配だった。早川は、順平に現在の状況を簡単に説明した。
「どうやら、そのノレッセという集団のボス、ジアーノというヤツはここにはいないようですね。それにタケル・・・いや、セルゲスでしたね・・・の姿も見当たらない。僕達の調査結果も、確実なものではありませんでしたし、地球の軍を動かすには確証を示さなければ許可がおりません。その為、今回は調査と言う名目で、この人数しか手配できませんでした。ノレッセというのは、どうやら地球よりはるかに文明の栄えた星々を相手に商売をしたきたようなので、果たして、地球の軍が、ノレッセ相手にどこまで戦えるのかも、不安は残ります。援軍の到着までは、迂闊に手は出さない方が良いのかもしれませんね・・・」
すると、レイニーが、
「とにかく、今は少しでも人数が多い方が良いですよね。ウォーレンやロジャーの事も気になりますし、一度引き返しましょう。ウォーレンたち合流して、今後の作戦を考えてみては?」
「そうですね。僕はまだ会ってませんが、お話によるとかなり鍛錬された方々だとか・・・。それに、彼らに危険が迫っているかもしれませんし、とにかく急ぎましょう!その前に、地球からの軍の人たちを簡単に紹介しておきます。ご覧の通り、10人しか連れてくる事は出来ませんでしたが各国の選りすぐりの兵士の方々です。いわば連合軍です。誰がリーダーだとか階級とかはありません。」
そういうと、一人ずつ、名前だけの簡単な自己紹介をし始めた。
色黒に日焼けした日本人っぽい男は、山本、そして、隣に居るのは女性のようで、滝川と名乗った。もう一人、日本人かと思った男はリーと名乗った。どうやら中国人のようだ。
がっしりした体つきの三人は、それぞれ、ジョン、シリウス、ディックと名乗り、アメリカ国籍だという。
一人だけ、ずば抜けて身長の高い男はサムドと名乗った。エジプト国籍で、その隣にいた白人はテリーと名乗り、イギリス国籍。残る二人は、チェコフ、イアンと名乗り、ロシア国籍だった。
タケルが何やら、山本に話し終えると、
「彼らは、彼らなりの陣形などがあるようですので、護衛は任せることにします。僕達とは少し離れた場所で、円形に陣形を組んで援護してくれるとの事です。ウォーレンとロジャーの人相や特徴などは伝えておきましたので、誤って攻撃する事は無いでしょう。また、セルゲスやノレッセを発見したら、誰かが僕達に伝えてくれる手はずとなっています。では、ウォーレン達と逸れた方へと急ぎましょう。」
10人の屈強な兵士たちは、簡単な打ち合わせの後、早川たちの視界から消えていった。
「レイニーさんは武器の扱いに多少の経験があるので、これを渡しておきます。小型のレーザー銃です。殺傷能力はありませんが、確実に相手の動きを封じる事が可能です。早川さんと森本さんはどうしますか?」
早川が躊躇っていると、友香が、
「この先は戦闘になる可能性も高そうだし、相手は武器を持っているので、いつまでも素手でと言うわけにもいかないわ・・・。というわけで、私達も貰っておきましょう。」
「わかりました。では、レイニーさんと同じものを。引き金を引けば発射できます。あえて、レーザーは赤く光ります。照準を合わせやすい反面、相手にも気づかれやすいので、その点だけは注意してください。高性能バッテリーを搭載していますが、むやみに乱射するとバッテリー切れを起こす可能性もありますので、多用は極力避けてくださいね。」
「わかりました。」
そういうと、順平からレーザー銃を手渡された。
「僕も戦闘のエキスパートではありませんが、出来る限り援護します。シーバさんは中央にいてください。僕達が周囲を囲むように移動します。後ろは僕に任せてください。」
そして、レイニーが先頭に、左右を早川と友香がシーバを護衛する形で、ウォーレンたちを逸れた場所まで進む事にした。
ウォーレン達が無事であれば、こっちへ向かっているはずなので、すぐに合流できるはずだろう。順平と一緒に来た10人の兵士達の姿、そして気配は全く感じられなくなった。しかし、戦闘のエキスパートということなので、これまでよりは、安心して行動が出来そうだった。
一方で、教授達は無事なのか心配になったが、今は連絡する手段が無かった。端末がもしかすると通じるかもしれないが、もし追われていて、隠れていたりすれば、気づかれてしまう恐れもあるので、かけることはしなかった。
地下は真っ直ぐとキャンプ地まで道が続いているわけではないとシーバは言っていたし、教授達には、速いペースで歩き続けるのは困難だろうから、まだ、早川たちの方がキャンプ地までの距離は近いだろう。
「そろそろ、ウォーレンたちと出会ってもおかしくありませんね。」
先頭を進むレイニーが、前を向いたまま話す。
「耳を済ませてみても、今の所、争っているような音は聞こえませんね。むしろ静か過ぎるくらいだ・・・。」
「やはりウォーレン達の身に何かあったんだろうか・・・。」
と、後ろにいた順平が声をあげた。
「早川さん!周囲を移動中の兵士から連絡がありました。ウォーレンとロジャーを発見したようです!ここより300メートルほど先にいるようです。怪我などはないようですが、どうやら二人組みに襲われたようです。詳しくは直接行って確認しましょう!」
早川たちは、急いで、順平の示す方角へと急いだ。しばらく進むと、日本人の兵士、山本と滝川、そして、ウォーレンとロジャー、地面には二人の男が倒れていた。
早川は急いでウォーレン達のほうへ近づくと、
「無事でしたか!良かった。この男達は?・・・あっ!?」
倒れている男二人には見覚えがあった。
「そうだ、君達を最初に助けた時に襲ってきた二人組みだ。セルゲスに見捨てられ、この辺りをうろついていたらしい。そして鉢合わせたわけだ。心配ない、気絶しているだけだ。彼らも、セルゲスに置いていかれ哀れなもんだ。たとえ金で雇ったとしても、少しは行動を共にした仲間だろうに・・・こいつらは、地球からの援軍が到着したら、どうにかしてもらおう。この星にいてはホルキンス人達が迷惑を被るだろうしな。」
「ますます許せませんね!特にセルゲスは・・・」
「ああ、必ず捕まえて、報いを受けさせねばならん。しかし、奴の事だ・・・すでに地球からの援軍が到着した事には感づいているだろう。と、なれば、逃げられる恐れも考えられる。さっき兵士の一人にも言ったが、ここを脱出できるロケットはキャンプ地にしかないはずだ。だから、あそこに人員を配置すれば、セルゲスやノレッセは少なくともこの星から逃げることは出来ない。それを伝えておいた。すぐに行動に移すそうだ。但し、そちらに人員を送り込めば、当然、こちらの人数は減る事になる。まあ、先ほど武器を回してもらったので、これで、応戦する事も出来るようになったがな。」
ウォーレンが話し終えるのを待って順平が、
「あなた方にお会いするのは初めてですね。大杉順平と言います。大体のいきさつは早川さんたちから聞きましたので知っています。次の地球からの援軍は、予定よりは早く24時間を1日で計算した場合、明日には到着すると思われます。ただ、それまでは少数で持ち堪えねばなりません。まずは、青柳教授達と合流するのが理想だと思いますが、どうでしょう?」
「異論はない。ただ、シーバの話では、青柳教授達の方が進む距離も長いようだし、進むペースも遅いはずだから、一体、今どの辺りに居るのかさえも我々にはわからない・・・。」
「シーバさんに聞いたところ、地下のルートを進んで、最終的にキャンプ地へ向かっているとの事ですが、問題は残りのノレッセの連中やセルゲスの動きですね。もし、二手に別れ青柳教授達の方も追っているとなると、とにかく危険です。シーバさんに聞いたところ、この森からも地下ルートへ合流可能なルートがあるそうなので、まずはそちらへ向かいましょう。兵士の内6人はキャンプ地へ、残った4人は我々を援護してもらう事にしまう。青柳教授達の方は武器も持っていないので、急いだ方が良いですね!」
「よし、行こうか。」
シーバに道を聞きながら、一行は地下ルートへ合流できる道を進んだ。兵士4人は、周囲を囲うように早川たちからは見えないところを進んでいるようだ。
30分程歩くと、地下へと続く洞窟の入り口が見えてきた。入り口には、すでに先を進んでいた兵士の一人、滝川が、左右から山本とリーが近づいてきた。入り口は狭いので、滝川と山本が先に入り、リーと、後ろにいるサムドが早川たちの背後から進むようだった。
洞窟は、やはり光る植物のお陰で明るく、足元も歩きやすかった。数百メートル程進んだところで、緩やかな下り勾配となった。左右の壁から湧き水が少しずつ流れ落ちていた。その水は早川達が歩く地面の両側を流れていた。その水が光る植物の光に反射して、神秘的な光景を作り出していた。
しかし、早川たちは、それらを楽しんでいる余裕も無かった。
緩やかな下り勾配を10分程進むと、再び平坦な道となり、いつしか左右を流れていた水もなくなっていた。そして、細い通路を抜けると、一気に目の前が開けた。
するとシーバが、
「ここを左側から進んでくるはずです。右に行けば、キャンプ地の方へと抜けます。どうしますか?青柳教授たちがこの地点を通り過ぎたのか、それともまだここまで到達していないのかを判断するのは時間的にも難しいかと思います。ただ、休まずハイペースで進んでいない限りは、まだ、この地点までは到達していないと思われます。」
「そうだな。我々の方が確実に進んでいると思う。が、万が一も考えねばなるまい。ただ、ここで、また人数を分散させるのもあまり得策とは言えない。ノレッセ達が先回りをして、右側から来る事は、まずありえないだろう。ということは、右側に行くのは二人で十分だ。それに右側ならキャンプ地もそう遠くはない。あちらにも兵士が向かっているから、なんとかなるだろう。ここから先は右も左も一本道なのか?」
ウォーレンがシーバに尋ねた。
「はい。私の知る限りでは、一本道です。」
「ならば、青柳教授たちは確実にここを通るだろうし、ノレッセの連中も左側。危険の無い右側にはシーバと万が一に備えロジャーを護衛につける。残った者は左側を進む事にしようと思うが、異論のある者は?」
そう言うと、全員の顔を見回した。皆、ウォーレンの意見に賛成だった。
「それでは、シーバのことはロジャーに任せ、我々は青柳教授たちと合流するぞ!」
ここでも、兵士達は二人ずつに別れ、先頭と殿へと陣取った。
「それにしても、俺達を襲ってきたノレッセはどうやって、追いついたんだろう。しかも後ろにはウォーレン達がいたはずだから、違うルートで近づいてきたことになる・・・」
早川が歩きながら友香に疑問を投げかけた。
「たしかにおかしいわね。たしかに森は広いから回り込む事は可能だけど、そうだとすると、かなりの速度で移動してきた事になるわね。」
「そうなんだ。そこが気になって・・・。だから、ウォーレンの作戦に異論は無かったけど、その点だけが引っかかってね。シーバをロジャーだけの護衛で大丈夫なのかって・・・」
すると、今度はレイニーが、
「その点は大丈夫だと思いますよ。セルゲスやノレッセの狙いは地球人。ホルキンス人ではありません。向こうも早く我々を始末したいはずなので、わざわざ、シーバさん達を先に襲うことはしないでしょう。」
「なるほど。たしかにその通りね。」
「むしろ、青柳教授たちが心配です。僕達を襲ったノレッセの連中は比較的下っ端の連中・・・腕の立つ者達の行動が気になります・・・」
「問題は、教授と私達の距離がどのくらいかと言う事ね・・・土地勘が全く無い私達には想像もつかないわ・・・」
「そうですね。それに青柳教授たちのペースもわかりませんから・・・とにかく、急いだ方が良さそうですね。」
そんな会話をしたあと、早川たちは無言のまま足早に歩くウォーレンに合わせひたすら前進した。
時々、水の流れる音が聞こえてきたが、辺りには水は見当たらない。きっと、早川達が歩いている場所とは別に空洞が存在するのだろうか。
シーバの話では一本道と言う事なので、人などが歩くスペースはないのかもしれない。
「水の音が時々聞こえてくるね。そう言えば洞窟に入ったばかりの頃、両端を川が流れていたから、それがどこかへ流れているんだろうか。」
早川が友香に問いかけると、
「そうね。きっとどこかに別に空洞があるみたい。水が流れているだけなのか、それとも別の洞窟が存在するのかわからないけど、後者だと、シーバたちは知らない別ルートが存在するかもしれないわね・・・どちらにしても、私達にはそれを知る術は無いわ。」
「別ルートか・・・それがここと繋がっていないことを祈るよ。もし繋がっていたとすれば、作戦変更しなくちゃならないしね。」
「歩いている限り、もし、分儀ルートがあれば気づくはずだから、今の所は大丈夫そうだけど・・・教授達のいる側はわからないわね。どちらにせよ、別ルートへの入り口がないかは注意しながら進んだ方が良さそうね。」
さらに早川たちは真っ直ぐな洞窟を進んだ。
道は人が五人横に並べる程度の幅だった。時折、細くなったり広くなったりはしたが、ちょうど広くなった時に水の音が聞こえる事が多かった。
と、先頭を歩くウォーレンが足を止めた。どうやら、先に進んでいる滝川と山本が何かを発見したようだ。正面から二人が引き返してくるのが見えた。
「何かあったのか?」
「教授達を発見したんでしょうかね・・・」
こちらへ歩み寄ってくる二人の表情からだけでは、状況は読み解けなかった。先に近づいてきた滝川が、
「この先に青柳教授達を発見しました。ただ、教授たちの後方に複数の生命反応を感じます。どうやら、それはノレッセ達と思われます。青柳教授たちにはその事を伝え、急いでこちらへ向かってもらっています。しかし、移動速度から考えると、10分もすれば追いつかれてしまうでしょう。どうしますか?青柳教授達と共にキャンプ地を目指すか、それとも、我々はここで応戦し、移動速度の遅い青柳教授達を先に行かせるために時間を稼ぐか・・・時間が無いので決断は急いで下さい。」
どうやら迷っている暇は無さそうだった。さすがに鍛え抜かれた兵士だけあって表情に焦りの色は見えないが、十分な緊迫感が伝わってきた。
それを察したウォーレンは、皆に向かって、
「今の話は聞こえたと思う。選択肢は二つ。しかし、考えている時間は無い。従って、迎え撃つものは俺と一緒に先へ、教授達と共にキャンプ地を目指すものはこの場に残ってくれ。」
それだけ言うと、滝川、山本と共に先へと歩き出した。すぐに順平とレイニーがその後に続いた。
「考える必要は無いようね。行くわよ!」
そう言うと友香もウォーレン達の後を追う。不安はあったが、早川も覚悟を決めた。
数分後、前方から青柳教授達の姿が見えた。サジを先頭に、一列に並んで歩いていた。ウォーレン達は、会話することなくすれ違って行く。どうやら、滝川と山本が青柳たちに状況を説明しておいたようだった。
ちょうど、早川の横に差し掛かった青柳は、早川に一言、
「すまん・・・向こうでは竹下君と牧野君が残って応戦している。」
と、呟いた。早川は何かを返そうとしたが、今は浮かばなかった。一礼して通り過ぎると、
「今回ばかりは俺達も参戦しなくてはいけないようだな。」
後ろにいた安藤が足を止めた。
「安藤さん!?」
どうやら安藤と真由もここに残って応戦するようだった。
「数は多いに越した事はないだろう?せいぜい足を引っ張らないように頑張るさ!」
そう言うと、拳を突き出し、早川もそれに応えた。友香も真由に近寄り、
「真由ちゃん、これを!」
と、大杉から受け取った銃を手渡した。
「これは?友香ちゃんが持っていた方が・・・」
「真由ちゃんの方が射撃得意でしょ?私達を守ってね!」
「出来る限り頑張るわ。」
そんなやりとりをしていると前方でウォーレンが大声で叫んだ。
「見えたぞ!皆、覚悟はいいか!?」
と、その叫び声と同時に、それまで後方に居たであろうリーとサムドが一気に駆け出し、早川たちの横を通り過ぎ、前方へと躍り出た。
もはや、後ろを守る必要がなくなったと感じた二人は、陣形を変えたのだろう。
「なんだか心強い連中が加わったじゃねえか!」
安藤がそう言って肩をポンっと叩くと、遅れを取るな!と言わんばかりに駆け出した。早川も安藤に続いて駆け出す・・・
目前には、見覚えのあるスーツに身を包んだノレッセの連中が数人、すでに竹下と牧野が応戦している所へ、山本と滝川も加わった。
ウォーレンもレイニーと共に、ノレッセの方へ襲い掛かる。
しかし、セルゲスや、ジアーノの姿は見当たらない。どうやら、今戦っている連中はノレッセの中でも下っ端連中のようだった。
前を行く安東に、早川は、
「やはり、セルゲスは警戒しているんでしょうか・・・それとも、別行動しているのか、姿が見えませんね。」
「そう言えばそうだな・・・遠くの方まで見渡せる真っ直ぐな道だが、見当たらんな。どこかで様子を見ているのか?とにかく、今は目の前の敵に集中した方がよさそうだ。」
「ですね・・・。ただ、ここは囮で、手薄になった教授達が狙われるとマズいですよ。」
「!?・・・たしかに、そうだな・・・どうする?俺達は引き返すか?」
「そうですね。二人だけでは役に立てるかわかりませんが、今なら追いつけますし・・・」
すると、友香がその話を聞いていたようで、
「急ぎましょう!真由ちゃん!行くわよ!ここはあの人たちがすぐに始末してくれるはず。あの兵隊さん、それにウォーレンもかなりの腕前よ!それより、教授達をお守りしなくては!」
「わかった!」
そのままその場はウォーレン達に任せ、早川たち四人は青柳達の方へと引き返した。
「問題は俺たち四人で、教授を守りきれるかどうかだな・・・」
安藤が走りながら不安を漏らす。
「大丈夫よ。なんとか、ウォーレンや兵士の人たちが来るまで持ち堪えれば。さっきウォーレンが私達のほうを見て目配せをしていたから、気づいているわ。」
「しかし、教授の方へ向かった部隊は、言わば最強の部隊。まあ、やるしかないな!」
やがて、青柳達の後姿が見えてきた。
「よし、まだノレッセの連中と遭遇していないみたいだ!」
後ろを歩くサジが早川達に気づいて、立ち止まった。青柳と倉本もそれに気づいて立ち止まる。
「どうかしたのか?まさか、他の連中がやられて逃げてきたのか?」
サジの表情が曇る。
「いや、そうじゃありません。向こうにいたノレッセの連中はどうやらカモフラージュで、セルゲス達のグループは俺達の知らないルートがあるのか、教授達を狙っていると・・・」
と、どこからとも無くセルゲスの声が聞こえてきた。
「ふふふ、どうやらお前達も馬鹿ではないようだな。まあ、人数が増えたところで何も変わらないがね。今度こそ逃がしはせんぞ。」
しかし、姿が見えない・・・
「ど、どこだ!?どこにいる!」
必死に声の聞こえた方角を目で追う。すると、壁の一部が轟音と共に左右に開いた。
「むっ!こんな所に・・・ワシらも知らん通路があったのか!?」
サジも驚きを隠せない。
「ふはははは!ノレッセをなめるなよ!さすがに人数が多いようだから、長引くとやっかいだ。本来なら苦しみながらあの世へ送ってやりたいところだが、さっさと片付けて方が良さそうだな・・・覚悟・・・むっ!?」
「卑怯なんて言わせないわよ!」
轟音が聞こえた直後から友香と真由は麻酔銃を構えていたのだ。そして、ジアーノの姿が見えた瞬間、照準を合わせ、狙いを定めていた。さすがに不意をつかれたジアーノはかわす事が出来ず、それでも、身を捻って被害を最小限に留めた。
「さすがね。まさか、避けられるとは思ってもみなかったわ。」
友香の撃った光線はジアーノの右腕をかすめた。
「ちっ・・・、右腕がしびれやがる・・・」
すかさず、真由がセルゲス目掛けて銃を放つ。しかし、後方に居た残りのノレッセ部隊5人が前に飛び出し、セルゲスを庇う。
「やはり、こっちが精鋭部隊のようね。真由ちゃん、来るわよ!避けて!」
「友香ちゃんこそ!」
二人は左右にジャンプしてノレッセの反撃を交わす。一方で、ノレッセの一人が青柳教授目掛けて襲い掛かった。
「し、しまった!」
友香たちの方に気を取られていた早川と安藤は慌てて教授の方へ駆け寄るが間に合わない。と、青柳の前に飛び出したのは倉本だった。素早く踏み込んで、近づくと、胸倉を掴み一気に投げ飛ばした。
「い、一本背負い!?」
「安藤さん!見とれている場合じゃありませんよ!前!」
今度は違うノレッセの二人が早川と安藤目掛けて襲いかかってきた。
「くそっ!」
身をかわそうと、横へ飛ぶが、同じ方向に飛ばれ、バランスを崩したまま逃げ場を失った。助けようと、早川が一歩踏み出すが、早川のほうにも、もう一人が素早く近づいてきたので、自分が避ける事で精一杯だった。
そのまま安藤は転倒し、上からノレッセが襲い掛かる・・・
しかし、襲い掛かったノレッセの体は横に飛ばされた。倉本が蹴りを喰らわせたのだ。
「助かりましたよ、倉本さん。」
「油断するな!すぐに襲ってくる。急いで起き上がるんだ!」
ダメージは無かったようで、安東と同時に起き上がって来た。
一方、早川はじわりじわりと詰めて来る相手に、いつのまにか壁際に追い込まれていた。撃つべきか、それとも突進して押し倒そうか・・・
走馬灯のように色々な選択しが脳裏を過ぎる・・・しかし、相手はすでに目前まで迫っていた。早川は腰を落とし、そのまま相手の腰の当たり目掛けてタックルした。
うまく、タックルが決まり、相手はそのまま地面に倒れこむ。マウント状態に持ち込もうとしたが、相手は倒れると同時に横に転がり素早く起き上がった。そして、いつのまに背後に回りこまれていた。
「マズい!?」
早川は心の中でそう叫ぶと、一か八かで背後にいるであろう相手の顎辺りを振り返りざまに肘鉄を喰らわせようとしたが、これもかわされてしまった。そのまま足元をすくわれ、今度は早川が地面に叩きつけられた。
全身に電気が走ったようで、身動きが取れない。足で必死に抵抗するが、全てかわされてしまった。
「だ、駄目だ・・・」
早川は瞬時に辺りを見回すが、皆、自分達で手一杯だった。体を動かそうにも、まだ動かない。そして、ノレッセの一人が一気に早川の上に乗りかかった。幸いにも武器は持っていないようだったが、ピンチには変わりなかった。必死に抵抗したがガッチリと両足で挟みこまれビクともしない。やがて振り上げた拳が早川の目の前まで迫り、思わず目を閉じた・・・
「あれ?死んだのか?衝撃も痛みも感じない・・・いや、正確には衝撃はあった・・・」
目を開けると、そこにいたはずのノレッセは左側に倒れこんでいた。
「すまんすまん!つい、奇妙な生物を発見したんで、そっちに気を取られてたら、戦闘が始まってたんやな。」
「さ、佐々木さん!」
そう言えば、佐々木の姿を見ていなかった。しかし、皆、ノレッセの事で頭がいっぱいで、気にも留めていなかった。
「今までどこに?」
「いや、そやから、奇妙な生物見つけてしもて、それを観察してたら、誰もおらへんようになってな・・・それより、気をつけな、すぐ攻撃してきよるで!」
佐々木の言ったとおり、すぐさまノレッセの一人が起き上がり再び襲い掛かってきた。が、今度は一気に足払いで倒れこんだところに膝を合わせた。これが見事に命中し、脳を揺らされた男は、紐の切れた操り人形のようにへなへなと倒れこんだ。
「一丁上がりってとこやな!早川君!ほな、このまま一気に他も片付けよか!」
相変わらず、テンションだけは高い佐々木だった。しかし、佐々木のお陰で助かった事も事実だった。
「助かりました。佐々木さん!」
「礼は後や!俺は教授を守るさかい、頼むで!」
「わ、わかりました。」
佐々木は青柳教授を連れて、駆け出した。
「逃がすものか!」
セルゲスがそれに気づき同じ方向へ駆け出したので早川はその行く手を遮るようにセルゲスの前へと躍り出た。
「どけ!」
と、銃を構え、トリガーを引いた。
「陸!」
友香が叫ぶ。
とっさに早川は両腕で頭部を塞いだ。しかし、玉は飛んでこなかった、
「くそ!やはりこいつは使い物にならんか!」
セルゲスは悔しそうに銃を地面に叩き付けた。そして、その時初めて、セルゲスやノレッセの連中の体が濡れている事に気がついた。
「陸!どうやら抜け道は水中を通って来なくちゃいけなかったみたいだから、それで銃は使い物にならなくなったみたいよ!」
なるほど、それでジアーノもすぐに撃ってこなかったのか・・・早川は納得と同時に素手ならと、一気にセルゲスに歩み寄り、殴りかかった。
「ふふふ、素手なら勝てるとでも思っているのか?こういう危ない仕事をしていると常に命の危険と隣り合わせなんだ。鍛えていないとでも思っているのか?」
早川の拳は空を切り、次の瞬間一気に背後を取られた。
「これで形勢逆転だ。さて、首の骨を一気にへし折ろうか・・・それとも、お前を盾に他の連中が攻撃できないようにしてやろうか?」
セルゲスは早川を後ろから羽交い絞めにした状態で、不気味に笑っている。
「い、息が・・・息ができな・・・」
早川の顔がどんどん紫色に変わっていく。
「ほら、どうした?お前達の仲間がもうすぐ死ぬぞ?」
「ちっ・・・マズい・・・」
安藤達は攻撃を止めた。
早川は手足をバタバタさせて、なんとか振りほどこうとしているのか、それとも、苦しくてバタバタしているのかはわからなかったが、とにかく急がないと窒息死してしまう。
どうして良いかわからず狼狽える安藤。と、友香が一気にジアーノに詰め寄ると、屈みこんで素早くセルゲスの背後に回り込んだ。そのまま、セルゲスの腕を掴み、早川の体から引き離した。
「ゲホッ!コホッ・・・」
「陸、大丈夫?」
「あ、ああ・・・なんとか・・・」
不意を突かれたセルゲスはすぐさま、肘で友香の腹部突き上げる。
「うっ!?・・・」
一瞬、友香の動きが止まった。そして、今度はセルゲスが友香の背後に回り込もうとした瞬間、セルゲスの体が宙を舞って、そのまま地面に叩き付けられた。
「くっ!ぐはっ!?」
「腹筋も鍛えているわよ。それでもちょっと危なかったわ。まさか、あんなスピードで打ってくるとは、鍛えているというのも、まんざら嘘ではなさそうね!」
なかなか、セルゲスは起き上がれない。その光景を見たジアーノは、先ほど現れた壁の隙間へと素早く体を滑り込ませた。
「き、貴様!?雇い主のこの私を置き去りにして逃げるのか!?許さん、許さんぞ!!!」
倒れたままの状態で大声で叫ぶセルゲス。
「哀れね・・・雇い主にも見限られるとは。まあ、自業自得ね。どうやら、これでひとまず安心ね。陸!」
「あ、ああ。ただ・・・」
「ただ?どうしたの?」
「なんだか、あまりにも呆気なくて。本当にこれで終わったんだろうかってね・・・」
そんな会話をしていると安藤達が集まってきた。
「どうやら向こうも片付いたみたいだな!」
安藤が、後ろを指さしてそう言った。そこにはウォーレンとレイニーの姿が、その後ろの方には山本と滝川の姿も見えた。
「こっちは、二人の活躍もあって、無事片付いたが、こっちもどうやら片付いたようだな。うん?セルゲスやジアーノには出くわさなかったのか?」
「そこに倒れているのがセルゲスよ。」
「ちゃんと確認したのか?」
「確認?」
すると、ウォーレンが倒れている男に近づいてヘルメットを引きはがした。
「あっ!?」
ほとんど同時に周囲にいた全員が声をあげた。
「ち、違う・・・セルゲスじゃない・・・」
声はそっくりだった。外見は皆同じようなバトルスーツを着ているので体格でしか見分けがつかなかった。てっきり振る舞いや声、体格からセルゲスだとばかり思っていた。
「まさか、別人だったなんて、思ってもみなかったは。それじゃあ、本物のセルゲスはどこに?」
詳しそうにこぶしを握りしめながら周囲を見回す友香にウォーレンが、
「奴は本当に用心深いし、頭も切れる。きっとどこかで戦闘の様子を窺っていたはずだ。そして、こちらの戦力も推し測っていたはずだ。」
「でも、こちらの戦力を見て、この星から逃げ出すとは考えられませんか?」
横から早川が訪ねた。
「前にも言ったと思うが、セルゲスの執念深さは恐ろしいものがある。この先まだまだ油断は出来ない。とにかく、我々は一刻も早くキャンプ地を目指そう。いくら執念深いセルゲスも、さすがに戦力の半分以上を失った今、簡単に襲ってくることは出来ないだろう。」
そう言うと、ウォーレンは山本と滝川に何かを伝えに向かった。
「彼らには、引き続き、万が一に備え背後から護衛してもらうように言ってきた。青柳教授の移動速度も考え、我々も教授の背後からついていくとしよう。」
「わかりました。教授に伝えてきます。」
「前から襲ってくるとは限らんが、絶対とも言い切れない。君たちは教授と一緒に歩いてくれ。最後尾はあの二人に、そして、ここは私とレイニー、それに竹下、牧野もいるので十分だ。そっちは頼んだぞ。」
「わかりました。」
早川、友香、安藤、真由、それに倉本は再び青柳教授を追いかけた。教授を追いかけ一行が足早に歩いていると、壁際にうずくまる人影が見えた。よく見ると佐々木だった。
佐々木は屈み込んで何か見つめていた。それに何やら独り言のようにブツブツ言っている。
「さ、佐々木さん。何をしてるんですか・・・。」
早川が歩み寄って尋ねる。
「おお、そっちは片付いたようやな!ほら、見てみ!こないな生き物見た事あらへんで!この星にはあんまり生物がおらへんから、発見すると、ついつい観察してまうんや。」
「は、はぁ・・・。そんな事より教授は大丈夫なんですか?」
「それやったら、倉本さんと、サジはんがしっかり守ってさかい大丈夫や!」
相変わらずマイペースな佐々木はとりあえず放って置いて、教授の元へ向かう事した。
五分程進むと、三人の姿が視界に飛び込んできた。どうやらセルゲス達は今のところ襲ってくる様子も無かった。
「無事みたいね。ひとまず三人に現在の状況を説明しておいた方がいいわね!」
そう言うと友香は走って教授達の方に行き、向こうでの出来事を、伝えた。
「どちらにせよ、急いだ方が良さそうじゃな。教授にも、もう一踏ん張り頑張ってもらおう。」
サジはそう言って青柳の肩を叩いた。やはり青柳の体力は限界のようで、顔色も良くなかった。
「皆頑張ってるんだ。私だけ弱音を吐くわけにも行くまい。私に構わず君たちのペースで進みなさい。」
声にも精気が無かった。そんな青柳へ友香は、
「大丈夫ですよ!教授。ノレッセたちも私たちの戦力に驚いていたし、ウォーレンは注意が必要だと言っていたけど、きっともう襲ってこないかもしれませんし、気楽に行きましょう!」
「すまないね。出来る限り頑張るよ。」
それからは、代わる代わる青柳に肩を貸して歩き続けた。2~3時間は歩いただろうか。同じような景色が広がる洞窟内では、時間の経過すら忘れてしまう。ようやく先の方に出口らしきものが見えてきた。
よく見ると、そこにはシーバとロジャーの姿があった。どうやら、早川たちが来るのを休憩も兼ねて待っていたのだろう。早川たちを見つけるとシーバが寄ってきた。
「お疲れ様です!こちらはノレッセが襲ってくることもなく、無事ここまで辿り着くことが出来ました。そっちはどうでしたか?」
それに対し、友香が向こうでの出来事を簡単に説明した。
「それは大変でしたね。このままノレッセが引き下がってくれれば良いのですが・・・地球からの援軍もどのくらいで到着するのかは不明ですしね。ただ、ここまでくればキャンプ地までは、もうすぐそこです。皆さん疲れているでしょうが、あと一息頑張りましょう。」
シーバたちは、一度洞窟を抜け、キャンプ地まで辿り着いたのだが、早川たちが心配で入り口付近まで引き返して来た所で、ちょうど遭遇したのだと言う。そして、シーバの言うとおり、洞窟を抜けてからは、10分足らずでキャンプ地に到着した。
「なんだか、凄く久しぶりな気がするね。実際にはそんなに時間は経過していないんだろうけど。」
早川は懐かしそうに、この星へ到着した時の事を思い出しながら、周囲を見回した。大杉と東が乗っていったロケットが無くなった以外には、特に変化もなかった。
「ほう!これが現代の地球人が作ったロケットというものか。」
後から追いついてきた竹下と牧野が珍しそうに、残ったロケットに近づいて興味津々に観察していた。
「まずは食事にしましょう。まだ、材料も残っているから、私と真由ちゃんで簡単な料理を作るわ。真由ちゃん手伝ってね。」
「あまり料理は得意じゃないけど、頑張るわ!」
そう言って調理場に向かおうとする二人に、
「そう来ると思って、材料調達してきましたで~。これも捌いてもらえまっか?」
さ¥どこからともなく佐々木が現れた。両手にはどこで捕まえたのか、魚らしき生物をたくさん抱えていた。
「い、いつのまに!?」
それを見たシーバが、
「これはカパカパですね。よくそんなに捕まえられましたね!栄養分も多く、我々には美味とされています。地球人の方々の舌にも合うと思いますよ。」
「せやろ!せやろ!そんな気がして、さっき、ここへ向かう途中捕まえてきといたんですわ!遠慮なしに皆で食べてください。」
佐々木は本当に逞しいと早川は思った。この人のポジティブさは見習わなくてはならないと・・・。
「ムニエル風に調理してみるわ!ありがとね~佐々木さん。」
「かまへん、かまへん~よろしゅう頼んます。」
なんだか、久々に気持ちが落ち着いた気がした。青柳と倉本は地面に座り込んでいる。部屋で休むようにと勧めたが、自分たちだけが休むわけにはいかないと、部屋には戻らなかった。




