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とある青年の雑談

しろの塔。最上階にて……


「本っ当に申し訳ありませんでした!」


ガバッと勢いよく頭を下げて謝罪をするのは王宮騎士団上部文官のレイ・アールグ、俺達が塔に入って直ぐにわざわざ長官のやらかした事には自分も責任があると謝罪にやって来ていたのだ。

そんな文官さんをエルがまあまあ、と頭を下げるのを止めさせようとしたがしばらく謝り続けていた所をどうにか収めた。

文官さんが一旦落ち着くとズレたメガネを軽く直し、少し落ち込んだ様子でしばらく話していた。


「まさかファイがここまでやらかすとは、どうりで昨日から様子がおかしいと思いました……」

「いやいや、文官さんのせいじゃないでしょ~それに……」


チラッとエルは視線を横に移し、机に突っ伏してひときわ暗い雰囲気が出てしまっているであろう俺に目をやった。


「な・ん・で、あの時俺は長官に全て任せると言ってしまったんだ。そもそも、それ以前のエルが罰ゲームなどと言い出した時に却下していればこのような事には……」

「あんだけ後悔して自分を攻めてもらっても困るしねぇー……」

「団長殿……」


本当になんであんな簡単に、なんの詮索も無く許可してしまったんだ。おかげで今回の演習、ただの演習では済まない問題へと発展してしまった。


「しかし、やっぱり今の状況はマズいなぁ……なんせ、この演習で俺達が長官に勝てる確率って低いし」

「……だが、決して勝てない訳じゃないんだろ?」


後悔する事を止め、その場から立ち上がった俺は今の状況について考える。

あの長官が向こう側にいると言う時点で大きく開いてしまう戦力差。だが、それぐらいの事で簡単に勝敗が付く程俺達だって出来ない訳じゃない。仮にも王宮騎士団団長と副団長なんだ、いつまでもうだうだしてなどいられない。


「確かにねぇ、それに今回はラッキーだったよ。こっちには文官さんが……いや、あの長官の事に最も詳しい幼なじみさんがいるからねぇ」


それを聞いた文官はぴくっと少し反応すると「はぁ……」と一度だけ聞こえないようにため息をつき、からかうようにそう言ったエルを見ながら釘を刺す。

「……あまり、その事は口外しないでくださいね」

「うん、うん。分かってるってば」

「とりあえず、エルの軽い口は俺が強制的に塞いでおくから大丈夫だ」

「あっれぇー…?俺の信用0?酷くない?」


そんな薄い笑顔で手をひらひらさせながら分かったと言われても、おそらく誰も安心しないだろ。

故にそれは当然の対処であって決して日頃の恨みがこもった仕返しだとか言う酷い事ではない。


「アルト、お前が本当に文官さんを庇いたいだけなのか疑いたくなってきたんだけど……」

「とにかく文官さんがこちら側で嬉しい限りだ。よろしく頼むよ」

「ええ、こちらこそよろしくお願い致します。団長殿」

「その無視は肯定と受け止めるからな」


そんなこんなで一旦この話は終わり、俺は文官さんとこの塔の模型が置いてある机に向かい合い作戦について話し合った。


そんな中エルはペラペラといくつかの書類を見ていて。見ればその書類は今回の演習での各チームの団員名簿のようだ。


「文官さんがこっちにいてくれればあと本当に怖いのは長官くらいだけど……」


するとそれまで普通に喋っていたエルが急に黙ったかと思えば、エルは唇をひきつらせながら嫌な汗をかいていた。

まるで、何がマズい事でも見つけてしまったかのように。


「あっ…やっべぇ……」

「何があった?」

「彼が、向こうのチームだった」

「彼?誰か強い奴が向こう側だったのか?」

「いや、強いっていうより今回みたいな演習で一番弱くて、一番たちが悪い奴……」

「……まさかあいつか?」


あいつはけっこう特殊な部隊だからかなかなか会えず、どっちのチームか聞いていなかったが……

その予想がそうで無ければいいと少しだけ願ながらエルの反応を待った。

しかしどうやらそうも行かないようだった。


「第10番隊クレイアードくん……今回の演習なんて彼の十八番おはこみたいなもんでしょ」




     ※




「……予想外だった」


アードの事もだがそれと同じくらい文官さんが言った長官のやらかしそうな作戦もかなり大変な事になりそうだ。


「そうだねぇー、でもまぁあの長官がなにやらかしても今更だけど」

「……と言ううかなんでお前はさっきらか無駄に機嫌がいいんだ?」

「ん?俺機嫌いい?」

「まぁ、いつも異様にへらへらしているから分かりづらいが機嫌が良すぎて少しうざい」

「いやさぁー…こんな扱いにももう慣れたし、今更なんだけどね……これ結構悲しいからな?」


いやいや、一応悪かったとは思っているんだ。さすがに本当の事をストレートに、真っ直ぐ言い過ぎたな。いつものただお前が馬鹿な事を言ってこうなったのならまだしも、今回はこちらから振ったのだし。


「なにが悲しいってお前の顔を見ただけで大体何思ってるか分かる事だよ」

「そうか、お前にそんなネリみたいな特技があったとは知らなかった」

「いや、お前が基本分かりやすいだけだからな?」

「…………へぇ」

「あっ、信じてねぇな」


するとエルは「うーん」と言いながら俺を見てきた。

すると何かが分かったのか突然ニヤニヤ笑いながら聞いてきた。


「で?アルトとリリアちゃんの間に何があったの?」

「――!?」


バサバサと持っていた資料や机の上に合った筆記類が床に落ちてしまった。

とりあえず何事もないように落ちた物を拾った。そう、何事もない…ように……


「い、いや……特に何もなかったが?」

「そんな赤面してるような青ざめてるような顔でよく言えたなそんな事」

「だから何もなかったと言っている」

「へー、何もなかったねぇ~つまりそれは何かあったうえで何もなかったと」

「……」


しまった。言葉をミスった。

そう、確かに何かあったと言われれば何かあった。勿論それは先日俺がインフルエンザになった時起こったあれ……

物凄く簡単に端的に言うのなら、寝ぼけて一晩中リリアを抱えながら寝ていた上寝ているリリアに勝手に触れて挙げ句の果てに思いっきり地面に顔面からぶつけさせてしまった。

……何度も思い返しているが、そのたびに思う。

明らかに最低だよな俺……


「本当に…なんであんな事に……」

「あんな事ねぇ」

「あっ……」


俺今声に出して……

目の前にいるエルを見るとニャァ…と最悪なまでの笑みを浮かべ俺の隣りに来ると俺の肩に腕をかけながら言った。


「さぁてアルト、そこまで認めちゃったんだ大人しく全部話しちゃおうぜ。でないと久し振りに本気で聞き出すぞ」

「後半完全に脅しじゃないか!」

「なるほど、じゃあアルト」


エルは相変わらず笑みを浮かべたままだったが、さっきよりも確実に悪い方向に完璧な笑顔だった。


「面白そうだから、全部吐け。今すぐ」


その辺りからあまりはっきりと記憶が無い。後に分かったのは俺が何故かエルに全て話してしまっていた事と、こいつが本気で聞き出す為にやった事の思い出したくもない情景だけだ。




     ※




「ぶはっ…うわっ、やっばい……笑い過ぎて超腹痛い。アルトお前…面白すぎるだろ……」

「どうやらお前の体と顔は相性が悪いみたいだな、なら今すぐその顔と胴体切り離してみるか、なぁエル?」

「まてまて、なんでお前は毎回キレると危険な方向に思考が行くんだよ……ぶっ!」

「斬る」


上から順番にスライスしよう。二度とその口が動かないようにな。


「つかお前、リリアちゃんになんて事してんだよ」

「うるさい」


寧ろ俺が知りたいくらいだ、何故俺があんな事をしたのかな。


「んー、所でアルト。1つ気になったんだけどさ」

「……なんだ?」

「リリアちゃん、怒ったりとか恨んだりとかしてないの?」

「……」


あれ?どうなんだ?

怒って…怒っては無い……はず。あれから数日経ったがそれが起きたその日以外は基本いつもと変わらなかったが、恨まれて…いない自信がない。


「あーあ、リリアちゃんかっわいそー。もしかしたらアルトの事根に持ってたりして」

「……」

(おー、悩んでる。アルトは無駄にぐるぐると悩んでた方が他の事に集中するからな。とりあえずこれで長官の料理が少しは遠のいたか)


恨まれてる、恨まれてる、恨まれてる……リリアに本気で恨まれてたらどうしよう……


(まぁ、リリアちゃんがんな事くらいで人を恨むような子じゃないけど)


完全に悩みまくっている親友をチラッと見ると面白そうだからずっと黙ってようと思ったエルだった。




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