とある青年の道のり
リリアを広場で休ませエルと二人で人通りの少なくなった通りを捜査するのを止め、少し大きな通りを歩いていたが。
「ふむ、少し人通りが多すぎる所まで来てしまったか……」
「ここじゃあ人が多すぎるかぁ……」
この通りでは、店や少し大きな家がいくつかあり大人も男も沢山いすぎて犯人はいないかもしれない。そして、人通りが多すぎると言う事は……
「あぁ!?団長!こんな所で何やってるんですか?それに、その格好は---」
「!……………ひ、人違いだ。」
「いやいや、無理があるぞアルト。」
騎士団の部下に見つかった。しかもよく知ってる奴だ、いやこれは俺の考えじゃないエルだ。はっ?そんなことは分かってる?だったらそんなにジロジロみるな。いや、見ないでくれ。
「お前こそ何をやってるんだ?」
「あっ、認めた……いや、この先の城下町での見回りですが。」
「城下町ねぇ……で、何の見回り?」
すると今まで真っ直ぐこっちを見ていた目線が右下にズレ、「あー、えぇ…いやぁー…」みたいなことを言っている。
「何かあるのか?」
「えっと……実はですね、最近城下町でちょっとした噂がありまして。」
「噂!?なんだい?面白い事か?」
「なんでテンション上がってるんだよ。」
まぁ、いつものことなので気にしなでおこう。
「そのぉ……近頃、城下町では夜になるとで、出るとか……」
「出る?」
なにが出るんだ?そしてなんだその手は、両手を手首の辺りから下にだらんとさせているが、何か意味があるのだろうか……
「そりゃあ、アルト。出るって言ったら一つだろ。」
「?」
「お化けですよ、団長。お・ば・け!」
「はぁあ?お化け?いやいや、お化けなんて居ないだろう。」
俺は基本、お化けやら霊やら悪霊なんかは信じていない。見た事ない物は精霊様以外は「居ないもの」として考えるからだ。
「それが、今回は本当っぽいんですよ!」
「“今回”は?」
「夜な夜な暗い城下町を歩く白い少女の幽霊!その赤く輝く瞳を見たら不幸になるって言われてるんですよ!」
「わぁ……すっごい、定番な話しだなぁ……」
「副団長!この定番さがいいんですって!」
いや、何がいいのかさっぱり分からないんだが。それにしても、ばったり騎士団の部下と会うような場所には犯人は居ないだろうな、やっぱり元の通りに戻るか?
「それでですね!城下町以外にも色々あるんですけど、やっぱり最近注目されているのがその少女の幽霊と隣町の『呪いの館』の噂でして!……」
「……」
「ねぇ、その少女の幽霊の見回りに行くんじゃなかった?」
するとそいつは「そうでしたぁ!すみません、もう行きますね!」と言って走って行った。その右手には色紙のような物が握られていた気がしたが、誰のサインを貰う気だあいつは……
「あいつ、あんな趣味してたのか……」
「ん?アルトは知らなかったの?」
知らなかったと言うより知りたくなかったんだが。それよりお前がどこでその情報を知ったのかの方が気になる、場合によってはその情報網を潰す必要がありそうだ。
さて、そろそろ戻るか。
※
「――――。」
「……そうか、ありがとう。」
「おっ?アルトも収穫無しだった?」
「あぁ、やはり誰も見ていないらしい。」
赤毛の手に傷のある男はなかなか見つからずそして誰一人目撃情報が無かった。リリアがその犯人は空気がどうだとか、勘がいいだとか言っていたがよくわからない。とにかく、凄く人の目をくぐり抜けるのが上手いらしい。
「その事については、リリアに詳しく聞いておけば良かったか……」
「そういやぁアルト、リリアちゃんってこっちに来てから外に出た事あんの?」
「外?そりゃあ……」
ん?そう言えば、リリアが外に出たのはこの世界に来た時に騎士団に行くまでと、一人で夜の街を迷子になった時だけだったか?ほとんど家から騎士団までの道のりを馬車で通っただけだったような……
「……」
「あれ!?アルト?」
「しまった……」
リリアはこの国の道どころかこの世界の事についてもあまり分かっていない。もしリリアがもう大丈夫だと思い、あの広場を出たらまた迷子になる可能性がある。
「いやいや、大丈夫だってアルト。さすがに馬車の所までは戻れるかもしれないぞ!」
「そうかもしれないが……」
馬車のあった所から1時間以上歩いて来てその辺の広場に休ませただけだから凄く心配なんだが。
「なんならどうせ向こうに向かうんだし、ついでに様子でも見ればいいだろ。」
「……そうだな……じゃあ行きと違う道を使って……?」
「どうしたアルト?」
「……エル、何か聞こえないか?」
「んー?」
そしてエルが耳に手をあて周囲の音をじっくりと聞き始めた。
「?確かに何か聞こえるけど、何だろ?そう言えばアルト、前にもそんな事言って無かったか?」
「あぁ、確かあの時は……」
この間あの教会でなんとなく聞こえた声、今聞こえている声に似てあるような。確かあの後リリアが落ちて来て……
『はぁああああああああああ!?』
「!?」
「この声!まさか!」
「リリアだ!」
ここはリリアがいる広場から少しは遠い、それにもかかわらずここまで聞こえた叫び声はリリアの身の危険を物語っていた。
俺とエルはその場から走り出し、リリアがいるはずの広場を目指した。果てしなく走りにくい服の裾を破きその服の下にある剣を確かめた。
「きゃぁあ!」
「うわぁ!」
すると俺の少し前を走っていたエルが二人の子供にぶつかった。息を切らせながら走って来た子供達はエルの姿をみるなり叫びだした。
「お、お姉さんが!」
「お姉さん?」
「広場で変な人に襲われて!リリアさんはすぐに来るって言ったのに!……」
「っ!リリア!?」
広場、変な人、襲われる、リリア。その言葉を聞いた瞬間、脳裏にうっすらとよぎったのは最悪な想像だった。
そのまま一度エルと顔を見合わせると広場に向かった。
広場に入った途端広場全体がはっきりと見えた。そこにはベンチの近くで狂ったように笑っているフードの男と地面に倒れて一人の男の子を抱えたリリアがいた。
「いいよねぇえええ!お嬢ちゃん!!」
エルと二人でその男の所にダッシュし、おもいっきり蹴りを入れた。
「「良いわけ無いだろ!!」」
リリアの後ろまでぶっ飛んでいった男を軽く見た後俺達はリリアに視線を向けた。
リリアは驚く訳でも、怖がってい訳でもなく、ただ俺達を見て優しく笑っていた。
「いえ、来てくれてありがとうございます。アルトさん、エルさん。」




