変態さんお断り!!
私の痴漢像って一体……
ミリーちゃんを広場の裏にある建物の壁と私の間にかくまいゆっくりと近ずいてくる犯人を睨む。今犯人が狙うなら確実にミリーちゃんだ、なら絶対に犯人に近ずけるわけにはいかない。
今の状況としては、その私の隣にいて一緒に妹を護っているサイ君。そして……
犯人の足下で気絶しているイア君。
「………役立たず」
「サイ君、それは言わないであげて。せめて心の中だけで言ってあげて。」
そう、三人にアイツの事を説明した瞬間、イア君は犯人に向かっておもいっきりダッシュ&パンチ……は、当然成功するはずもなく、犯人に「ていっ!」と一蹴されさっさと気絶してしまったのだ。……バカ
「お嬢ちゃん、遊びましょーよぉー?」
「うっさい!!」
「お姉さん……」
こっちはお前から逃げるのに必死なんですよ!いちいち近ずくたびに吐息と手の動きを激しくさせるなぁ!
なんて思っていると、犯人が近ずくペースが少し速くなって来た。今、一番いい判断としては逃げる事なんだろうけど……
私はチラッと気絶したイア君を見る。
起きる気配は全く無いイア君を置いていく訳にはいかないよなぁ……ちくしょう!イア君のバカーーーー!!なんであそこで突っ込むの!?逃げれないよぉ!
とにかく!今出来る事をするしかない。私は小声でサイ君にに話しかける。
「(サイ君、この近くに大人は?)」
「(この時間はほとんどいないよ。)」
「(やっぱり駄目か……)」
犯人はそうやって今まで逃れてきたんだしね。どうしよう、今アルトさん達は……やってみるしかないか。
「(この通りのどこかに騎士団の人がいるの。)」
「(騎士団?)」
「(アイツに対して大声で話して……上手く行けば気ずいてくれるかもしれない。)」
「(なっ!この通り、どれだけ広いと思ってんの!?)」
「(それでも、やってみるしかないかないよ。)」
「(……分かった)」
まぁ、人がいない場所で聞き込みなんてしないんだろうけど。でも、なんとなく、なんとなくだけどアルトさん達ならもしかしたら……
「こっち来んな変態!!つーかイア!お前はさっさと起きろ!」
「ミリーちゃん!しっかり私の後ろに隠れてて!!」
「は、はい!」
「お嬢ちゃん達……あー、ナルホド。」
犯人は何かに気ずいたような事を言う。そして、私達の威嚇を無視してこちらに近ずいてくる。足を止める気は無いらしい。
「っ!とにかく!ミリーちゃんには近ずけないから!」
「あぁ?お嬢ちゃん何言ってるの?」
「「「…………………えっ?」」」
犯人の足が今、初めて止まった。が、全く嬉しくは無い。あれ?何かおかしいか?私の今の言葉におかしい所なんて無かったはず。だって、犯人が狙ってるのは小さな少女で、現に今ミリーちゃんを狙っている訳で……それで……?
「おじさんが仲良くなりたいのはそっちの珍しい髪のお嬢ちゃん。」
「えっ?」
「えっ?」
「はぁああああああああああ!?」
私!?なんで!ミリーちゃんじゃないの!?だって、私15だよ!アイツが今まで狙ってたのは8歳から12歳の女の子で……あっ!……
『アルトさん、私の事何歳位だと思ってます?』
『…12くらい?』
……
『リリアちゃんとアルトを囮にする作戦!』
あぁあああああ!まさかコイツ私を12歳だと思ってない!?違いますよ!私15歳ですよ!
「ちがっ!私は……っ!」
今、ここで私は15だと言ったら今度こそ確実にミリーちゃんが狙われる。それじゃあ、状況は変わらない。
今、この勘違いはむしろラッキーなのかもしれない。
「お嬢ちゃんねぇ、おじさんとしてはすっごい当たり。今までたぁーくさんの女の子に会ってきたけど……」
そして、犯人は私の目の前まで来て、そして……
「こーんな黒い髪のお嬢ちゃんなんて初めてだよぉ、すっごい。」
犯人は私の髪を静かに撫でやがった。
ボソッ「人の髪に……」
「んー?」
「人の髪に触んじゃねぇえええーーー!!!」
「がはっ!」
私は犯人の腹におもいっきり蹴りを入れた。綺麗にみぞおちに入ったのがよく分かった。犯人はお腹を抱えて1、2歩後ろに引く。そのフラフラした足にまた強い蹴りを横から当てる。
「なっ!」
足払いをくらった犯人は地面に頭を打ち、おもいっきり転んだ。
「お姉さん!」
「なっ、今何やって……」
「別に、ただ蹴っただけだよ。」
元の世界でもこんな展開は何度かあった。逃げるに逃げられないそんな状況で自然とついた蹴り技。前の変人集団みたいに数が多すぎるのは無理だし、私はリーチが明らかに短いから相手が近くにいる時にしか使えないけど、それでも時間稼ぎぐらいにはなる。
「近ずかれてミリーちゃんが狙われると思ってたから無理だと思ったけど……私だったとか…」
「お姉さん凄い。」
「でも、少ししか効かないよ。イア君は私が連れてくから、二人は早く逃げて!」
「うん!」
ミリーちゃんとサイ君はすぐに犯人から離れ、近くの門から逃げ出した。私は犯人を通り越してベンチの近くで気絶しているイア君の所まで駆けつける。
「イア君!……っ!まだ駄目か。」
二人にはあぁ言ったけど、正直イア君を抱えて走って逃げ出せる自信は無かった。イア君と私の背は少ししか変わらない、それにイア君は今気絶している、意識が有る無しでは人の重さは大きく違ってしまう。
「とにかく、連れてかなきゃ!」
私はイア君を抱える為、イア君の体を支えながら持ち上げる。意識のないイア君は想像以上に重かった。
「でも……これならなんとか……」
「どこ行くの?お嬢ちゃん。」ガッ!
「あぁっ!」
犯人に足引っ張られ、一瞬で視界がぐらりと傾き激痛が頭に走る。
「っ!」
「よくも、ここまでやってくれたね……」
ヤバい……意識がハッキリしない、体が軋むように痛い。
「よくもさぁ、よくも、よくも、よくも、よくも、よくも、よくも!!ねぇ!お嬢ちゃん!」
「……あぁ……そっか…」
「本当は傷つける気無かったけどいいよねぇ!壊れなきゃ大丈夫だしね!!」
犯人の声なんか全く聞こえずに私は独り言を言う。
「そうだ……私……」
「終わったらさっきのお嬢ちゃんも連れてきてあげるよ!仲良しだもんね!」
「……信じてたんだ…ずっと…」
二人の事を……
「いいよねぇえええ!お嬢ちゃん!!」
「「良いわけ無いだろ!!」」ドカッ!
さっきまで狂ったように笑っていた犯人が私の後ろまでフッ飛ばされた。
「おい、あれが本当に今までの事件の犯人か、エル?」
「まぁ、確かにあれ見たらちょっと疑うかもねぇ~。でも、そうなんじゃない?アルト。」
「なら、ぶっ飛ばしでも問題無かったな。」
ボソッ「ぶっ飛ばした理由はそれだけじゃないくせに。」
二人は飛んでいった犯人の方を軽く見た後、私に手を差し伸べてくれた。その手をハッキリしない意識のなかなんとか掴んだ。
「大丈夫、リリア?」
「はい……大丈夫です。」
「ぼっろぼろだけど?」
「……ご、ごめんなさい。」
なんか色々やっちゃってごめんなさい。
「こっちこそ来るのが遅くなった。」
「いえ、来てくれてありがとうございます。アルトさん、エルさん。」
それを言うとアルトさんとエルさんはにっこりと笑ってくれた。




