親友は呆れと共に
3人称…にできてますかね?
「……まあ、正直言ってしまうと、あいつらのバカップルぶりは『あほらしい』、だな」
「…………あほらしい、ですか」
「ああ」
8大貴族のうち、『炎』を司るエルンドラ家次期当主にしてミャージェキー魔法学園都市高等部の生徒会長を務める、フィヴィラ=ローン=エルンドラはぽかんと口を開けながらもしっかりマイクを向けている新聞部へそう言い放ち、女性的でありながら凛々しい顔立ちをわずかに緩め、肩をすくめた。
「ルルナはまだ羞恥心を持っているからいいんだが……あの馬鹿はどこでもルルナに抱きつくわキスしようとするわルルナのことになると何時間も惚気るわルルナと話すだけで嫉妬するわ……。大体話すことなど仕事の話か休憩時間くらいなのだぞ?毎日毎日仕事に追われて疲れている私にも少しはあのルルナの穏やかな雰囲気で癒しをくれたっていいではないか…そう思わないか?」
「はっ?はい!!」
立石に水、といわんばかりのため息で一通りの愚痴をこぼしたフィヴィラは最後の書類にさらりとサインを書き終えてからようやく訊者(きしゃ。主に取材をする者を呼ぶ)に端正な顔を向け、その頬を赤く染めさせる微笑を浮かべた。
「ただ、付け加えると、彼ら自身が無能なわけではないよ。私たちは真実彼らを生涯の友と認め、彼らもまたそれに似合うだけの能力を有している。それは君たちも知っているだろう?」
「は、はい。特にローフェス男爵子息のファルベロ様は幼いころからその才の片鱗がすでに現れていたと…」
「そうだ。だが君たちはこうも思っているのではないか?……『なぜ、平民が彼の方の恋人なんだ?』と」
「そ、そのようなことは……!!」
慌てる訊者と、動揺を表に出さずカメラを向けて続ける撮者(としゃ。映像を撮る者を呼ぶ)へ世事は良いと鍛えられながらも白くうつくしい手をひらひらとそよがせる、麗しの生徒会長。
「案ずるな。別に怒ってはいないし、君たちに害をなすつもりはない」
「は、はぁ…」
「そうだな。確かに彼の身分は平民であり、先祖を遡っても貴族や、まして王族の血など入っていないことは確かだ」
「はい…」
神妙に頷く訊者にフィヴィラは、けれど、と薄い桜色の唇を優美に開いた。
「彼は…いや、ルルナーエン=スームは、誰よりも世界に愛されている。…それだからこそ、私たちは彼にも、まして私と拮抗するほど力を持つファルベロと、敵対することも排除しようと思うことも利用せんと企むこともしないしこれからもない。ただ、彼らがいつもどおり『あほらしい』バカップルであってほしいと願っているだけだ」
「え、ええと…『世界に愛されている』とはどういうことでしょう?」
「そのままの意味さ。難しく考えることは無い。ただひとつ私から言えることは……彼が彼である限り、私たち8大貴族は彼の友となり、ファルベロは彼の唯一無二の伴侶にして絶対の守護者であり続けるだろう。それだけだ」
「はぁ……」
「今日はわざわざ来てもらってありがとう。書類がなかなか終わらなくてね」
「いえ、時間を作っていただいたのはこちらでしたから。…本日は取材を受けれていただき、ありがとうございました」
「ああ、気をつけて」
「はい」
ペコりとそろって頭を下げる。同時に、す、と差し出された銀のトレーには白いシンプルだが上質な紙生地に上品な金文字が添えられた袋。その中には、かわいらしく包装されているテディ・ベアのクッキーが複数、小首をかしげてこちらを見上げていた。
顔をゆっくり上げると、大地を司るセーディ家の三男、ライズ=オーディス=セーディが見下ろしていた。
訊者の彼女より撮者の彼よりももがっしりとした体躯の大きな彼は、しかし威圧感の無い穏やかな雰囲気で今一度それをそっと差し出した。
「よろしければ、皆さんでどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
平訊者にはもったいないほどの待遇にこれは絶対に記事にしなければと決意して退室しようとすれば、その背後から、そうだ、と思いついたような声がするりと飛び込んできた。
ふりむけば、苦笑したライズと、どこか悪戯めいた微笑を浮かべるフィヴィラの姿。
「ああ、すまないね。言い残していたことがあったものだから」
「いいえ、何かございましたか?…なにか粗相を…」
「いや、そうではなくて、君たちの上司にすこし言付けてもらっていいかな?」
「はい、喜んで」
「そうか、では…」
心の底からうれしそうに笑う彼女の微笑みに、華が咲いた。
新聞部の彼らが退室して後、次の文化祭に向けて資料に目を向けていたフィヴィラはライズのため息に目線だけをちらりと向けた。
「なにも脅さなくても……」
そういいながらも彼の苦笑にはわずかな、確かな喜び。
真っ青になっていたよと、たしなめる優しい響きにフィヴィラは、まさしく獲物を喰らって上機嫌な豹のようにくつりと喉を鳴らした。
「あれは、先に手を出したあちらが悪いせいだ。……私は、私たちは常々言っていたはずだぞ?『彼らは私たちの生涯の友である』、とな」
薫り高い紅茶と先ほどの彼らにも差し出したクッキーをあくどい笑みで受け取るフィヴィラにライズもそれ以上何も言わず、ただ精悍な顔の苦笑を、すこしばかり深めただけだった。
インクと紙だけの世界に、甘い匂いがやわらかく立ちのぼり、白い湯気は自由気ままに伸びて、消えた。
後日発刊された生徒会長独占インタビュー新聞は史上最高の売り上げと恐怖と尊敬を叩き出し、その影でひっそりと消えた嫌われ者の貴族たちのことなど、誰も口に出さず考えず、やがて存在すらも忘れ去られていった。
『私たちの友人へ手を伸ばしたというのに火傷程度で済んだなら、僥倖だったな。これからはせいぜい、『守護者』に見つからんようにするといい。……嘗められるのは、嫌いなのでね』
部費が半減された新聞部部長はこれを訊いた瞬間、彼らに関して独自に調べた調査書をすべて破棄し、今後、彼らには非常時以外でかかわらないことを部員たちへ徹底的に指導した。
生徒会長さんは女帝イメージ(笑)。
ライズ君は世話焼きのお兄ちゃんか執事的な感じ。
部長さんはちょっと踏み込みすぎちゃった好奇心の塊(ぎりぎり踏みとどまってよかったね!!)
訊者の女の子と撮者の彼は完全に巻き込まれ(笑)
うむむ…しばらく周囲の話になるかな?
気まぐれ更新なのですが、のんびり更新できればいいなあ…(願望)
チキンでビビリな猫田の心を抉らない、ご意見ご感想お待ちしています。
読んでいただいてありがとうございました!!
2018年3月31日、久しぶりに修正しました。
更新遅れてすみません。




