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異世界に召喚されて私が国王!? そんなのムリです!【コミックス2巻5/2発売予定】  作者: キシバマユ
一幕 異世界召喚

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14 28歳の学生デビュー

 今まで、登校時にストーカー男が現れたことはない。問題は下校時である。美波とルークはマーガレットの帰宅時間に合わせて学校まで迎えに行った。

 授業が終わって学校から出てきたマーガレットとともに、いつもの下校ルートで屋敷へ戻る。

 美波とルークでお嬢様を挟んで連れ立って歩く、主従ではなく完全に護衛のスタイルだった。



 「2人とも、今日も来ましたわ。そこの道の角にいる焦茶の髪にベージュの服の男ですわ。ここから毎日家までついてきますの」


 美波たちは警戒しながら歩く。


 「歩き方、目線、顔つき……。完全に素人だな。強盗・誘拐目的の犯罪者ではないな」


 ルークが分析する。


 「早く諦めてよね」


 美波が全員の気持ちを代表して呟いた。



 それから1週間、2人は護衛を続けた。男の付きまとい行為はやむことなく、そして次の週の月曜日の帰り道。


 「ミナミ、男が接近してくる。お嬢様を守れ」


 ルークが気づき、前に出た。美波もすぐさまお嬢様を庇うように半歩出る。


 「当家のお嬢様に何か御用でしょうか?」


 ルークは執事にふりをして対応する。


 「マーガレットちゃん。最近ずっとこの人たちと一緒にいるよね。今まで僕たち2人でずっと一緒に家まで帰ってたじゃない? なんで? 僕とはもう一緒に帰らないの? ねぇ、なんで?」


 言いながら男はルークを押し退けてマーガレットに近づこうとする。


 「違うわ! あなたが勝手に毎日ついて来てただけじゃない! やめてちょうだい!」


 マーガレットがとっさに反論する。


 「なんでそんな酷いことを言うんだ!? 僕たちは好きあっていたじゃないか!!」


 男は激昂し、ズボンのポケットから小型ナイフを取り出して、腕を前に突き出して威嚇する。しかしルークがすぐさま右腕を掴み捻り上げ、ナイフを地面へと落とさせた。


 「くそっ!!」


 男は暴れてルークの拘束を振り解き駆け出した。ルークはすぐさま跡を追う。


 「ミナミ! お嬢様を屋敷に送り届けろ!」


 美波はすぐにマーガレットの肩を抱きながら歩き出す。


 (ルーク、お願い捕まえて!)


 しかし美波の願いむなしく、雑然とした住宅街が追走を阻みルークは男を取り逃がした。



 男がナイフを向けてきたことで事件化し、憲兵が捜索することになったが、犯人が捕まるまでマーガレットは安心して出歩けない状況となった。

 男の人相はしっかり見たものの、目立って特徴のない男だったため捜索が難航し、1週間以上経っても捕まる気配がなかった。


 マーガレットの様子を見に、美波は彼女の部屋を訪ねた。


 「わたくし、いつになったら外へ出られるのかしら……。あの男が捕まらないうちは怖くてとてもじゃないけれど外出できないわ。けれど学院の授業に遅れるのも困るの……」


 マーガレットは瞳に涙を溜めて震えている。美波は彼女のために何かできないかと思考を巡らせた。



 あることを思いついた美波は、リビングに男爵とマーガレット、ルークを集めた。


 「えー、本日はお日柄もよく__」

 「本題を早く言え」

 「私がマーガレット様の囮になって通学しようと思います!」

 「全然顔が違うじゃねぇか」

 「まぁまぁ、ちょっと見ててよ」


 美波は紙袋から金髪のウィッグを取り出してかぶる。次にきれいな青色の小瓶を出して中身を飲み、最後の仕上げで顔に魔法をかけた。


 「どう? いけそうじゃない?」


 金髪ウイッグの魔法薬で目の色が碧眼になった美波が出来を訊ねる。


 「認識阻害の魔法を顔にかけたか。また非常識な魔力の使い方を……。まぁ髪型と服を似せれば騙せるかもしれねぇが」


 ルークがギリギリ合格を出す。


 「これでいきましょう」


 早く犯人を捕まえたい男爵は簡単にゴーサインを出した。


 「授業も受けて、放課後にわたくしに教えてくださいませ!」


 そしてマーガレットが笑顔で無茶振りした。


 「えぇ!?」


 マーガレットの代わりに登下校の時間にだけこの格好で外に出ようと思っていたが、マーガレットの期待を裏切れなかった美波は目を泳がせながら頷いた。





 「キツい。キツすぎる。28歳の制服姿!!!」


 マーガレットに借りた制服を着て鏡の前で悶えた。


 「よく似合ってますわよ。ミナミはもともと20歳くらいにしか見えませんもの」


 マーガレットが隣でにっこり笑っている。

 借りている部屋を出て玄関ホールでルークと合流する。


 「ルーク見ないで! ほんともうムリ!」

 「あー、まぁ似合うんじゃねーの?」


 ルークがニヤニヤしながら言う。美波の恥ずかしがる様子を面白がっている。そのうちに男爵もやってきて『大丈夫。かわいいですよ』と更に美波を追いつめた。




 「ルークって学校行ってた?」


 美波は学院へと向かう道中に何気なく聞いてみた。


 「王国民は全員学校に行くだろ」


 執事の服装に似合わない、すげない返事である。


 「じゃなくてその先の王立学院とか。行ってたでしょ?」

 「……あぁ、まあな」

 「どんな授業取ってた?」

 「あー、古代アラミサル語、王国史、政治学、実用数学、魔法学と実践魔法、剣術とか体術とかいろいろだ」


 ルークは懐かしむ様子もなく淡々と答える。


 「実用的っぽい選択だなー。古代アラミサル語以外は。古代アラミサル語はなんのため? 興味?」


 美波は実用的なラインナップの中でそれだけが浮いているように感じた。


 「王宮の古い公式文書は古代語で書いてあんだよ。だからだ」


 だからなぜに古い文書を読む必要が? 謎がさらに謎を呼んだかたちになったが、これ以上答えてはくれなさそうだった。


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