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魔王様の復讐は失敗しました  作者: ぽち
二章 わたしが ゆうしゃと であうまで
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二章 エピローグ まおうさま ゆうしゃとであう

 それから私は馬車に乗せられると、連れて行かれた。

 三日三晩、常に揺られっぱなしだったのは中々辛いものがあった。

 幸いなのは、一日目の野営でリリアたちと再会できたこと。どうやら彼女たち三人――それに加えてリルも――は、騎士たちに保護されることとなるらしい。


 そう、三人である。

 ウィンディはいつの間にやら姿を消していた。


 どれだけ探しても、一切の手がかりも見つからなかったという。


 残念ながらその日、リゼルグとグドンには会えなかった。

 彼らは奴隷売買に手を貸した罪を問われ、きつく監視されているとか。

 私が口添えをしておいたため、程なく解放されるとは思うが。


 ゴルトー、ピトーは重罪人として酷い目に遭わされているようだ。

 私にしたことは兎も角、これまでも奴隷を売り捌いてきたというのだから、まあ当然だろう。


 なんて回想しつつ、私はため息をつくしかない。


 何故か?

 答えは簡単。


 どうにも面倒くさいことに巻き込まれたらしいからだ。





 私が今いるのは貴族の邸宅。

 グレゴリのものらしい。


 そこに着いた途端、メイドたちに取り囲まれ、強引に風呂へと入れられてしまった。

 風呂は嫌いではないが、これだけの多数に見られていては落ち着かない。

 いつもお母さんに洗ってもらっていたのは事実だが、彼女たちはお母さんではない。

 ……いつぞやのお姉ちゃんが言っていた羞恥心とやらがわかった気がする。


 それが終わると豪華な衣裳部屋へと連れて行かれ、あれよあれよという間にドレスを着せられてしまう。

 ピンクのふりふりがついたものである。


「可愛らしいですよ、お嬢様」


 なんてメイドの一人が言うが、全く嬉しくない!

 歩きづらいし、どうにも落ち着かない。

 こんな姿で敵が襲ってきたらどう避けろというんだ。


 なんて不満たらたらでいると、部屋にノックの音が響く。

 メイドが扉を開けば、グレゴリだった。

 彼の屋敷なのだから当たり前だろうが。


「準備はお済かな?」

「よくわからんが、多分な」


 私の返答に頷くと、グレゴリは


「こちらへ」


 とだけ言った。





「アリシア様。貴女には、これから『勇者』に会って頂きたい」


 全身が沈み込んでしまいそうなほど柔らかなソファーに身を委ねていると、対面しているグレゴリはそれだけ言って紅茶を啜った。


 『勇者』は目的の一つだ。

 願ったり叶ったりとはいえ――『勇者の父』だったか。

 この男の年齢から察するに、『勇者』は私のお父さんより年上なのではないだろうか。


「その前に聞かせてくれ。『聖女』とはなんだ? そもそも、何故私のことを知っている?」


 状況が不明瞭すぎる。

 私は少しでも情報を得たくて、疑問を投げかけた。


「……その不満は当然のことでしょう。しかし、私がお教えできるのは『聖女』についてだけ。もう一つの疑問を説明するには儂よりも相応しいお方がいらっしゃる」


 それだけ言い切って、もう一度紅茶を口に含む。

 まるで、反論は聞かないとでもいいたげである。


「――わかった。だから『聖女』とやらにだけでも話してくれ」


 彼の話はこうだ。


 ヒトの中には聖痕(スティグマ)を持つものが生まれてくる――というのは以前、リリアたちから聞いた通り。

 この聖痕(スティグマ)は『英雄』や『勇者』一人一人、形が異なっていて、今まで同じものが確認されたことはないらしい。


 もし、同じ形の聖痕(スティグマ)を持っていれば、その者が『英雄』、もしくは『勇者』の対となる存在だという。

 それが『聖女』だとか。


 『勇者』が力を発揮するには『聖女』の力が必要不可欠と熱弁されてしまったが――。


 ――私が戦った『勇者』にはそんな存在はいなかった。

 意味が分からない。


「もし、私が『聖女』だとして、何をしろというんだ?」


 グレゴリはそれきりだんまり。

 私の疑問に答えることはなかった。





 渋々案内された庭園には、予想に反して私と同じ年ぐらいの男の子が一人いた。


「僕の名前はルクス。――ルクス・ブローディアと言います」


 挨拶をすると、彼は私に一礼して見せる。

 きびきびとした動作に、よく躾けられているのだろうと私は思った。


 そよそよと風を受け揺れる金の髪。

 私を見据える緑の瞳は強い意志が宿っている。

 礼に欠けた話だが、落ち着いた子供であることに私は安心した。

 騒がしい子供の子守はごめんである。


 まあ、そんなことはどうでもいい。


 それより私の目を引いたのは、強大な魔力。

 量だけを比べても前世の私と同等――いや上回っているかもしれない。


 目が焼き切れてしまいそうなほど輝きを放つ高純度の光。

 それが彼には内包されていた。


 今でさえこれなのだ。

 年月を重ね成長していけば――今の段階でも光魔法の一閃で『霊竜』程度ならば瞬殺してしまいそうである。


「……私はアリシア・バートランド。よろしく」


 動揺を隠しつつ手を差し出せば、彼は満面の笑みで応えた。

 その際、私は彼の掌に着目する。

 身なりの良さに反して、手には無数のタコ。


 ――この男、少なくともお姉ちゃんと同等程度には訓練を積んでいるな。


 資質に胡坐をかく様な人間でもないらしい。


 品定めは済んだ。

 間違いなく、ルクスはかつての『勇者』――クリスに劣らぬ資質を秘めているのは間違いない。


 ……だからこそ、疑問を覚える。

 一体、彼のどこに私が必要だというんだ?


「アリシア様」

「同じ年なんだからアリシアでいい。『様』はいらない」


 父であるグレゴリとは違い、彼にはリリアやカインに近いものを感じて、私はそう要求する。


 詳しいことまではわからないが、グレゴリは私を通して誰かを見ている。だからこそ「様」を使い、慇懃にふるまうのだろう。

 しかしルクスは違う。対等でちょうどいい関係のはずだ。


「えっと、じゃあアリシアさん」


 ルクスの顔の顔は真剣だった。

 少なくとも冗談を言おうという雰囲気ではない。早速本題に入ろうというわけか。


 ――だからこそ、私は意表を突かれた。


「貴女がいれば、僕は魔法を使えるようになるんでしょうか?」


 ……はあ?

 これにて第二章は終了となります。


 それに伴い、更新方法を変更します。

 書きながら更新していくのではなく、一章書ききってから更新するパターンにします。

 今回、後から色々仕込もうとして四苦八苦した結果、上手く扱いきれずキャラクター削除という大失態を犯してしまったので…。

 軌道に乗れば更新中に書き溜められるため、さほど更新ペースは変わらないと予想はしているのですが、三章が書きあがるまではお時間をいただくことになると思います。

 それでもよろしければ、どうかお付き合いください。

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