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糞が、本物を目の前にして散々コケにされて、収穫は自分の命…
こんなにイラついたのはいつ以来だろうな。
どうやっても自力じゃ生き残る絵が見えなかった…運がよかったそれだけ。
一夜明けて、部下共がギャーギャーうるさかった…その程度、相手の力量も量れないそんな連中をいくらけしかけても無駄金使うだけだ、俺のやり方ではチャンスはねぇ…
俺はきっちりした服装でガメルの店へ向かう。
『武器商のバースが来たと社長に伝えてもらえるかな』
店員は青い顔をしながら奥へと走っていく、さほど待たされずに落ち着いた女が奥へ案内する、堂々とした態度に少し感心する。
『胆の据わったいい店員ですねあなたは』
『ありがとうございます。ささ、バース様、社長はこちらです』
ほう、都合がいい揃い踏みとは…
『このお客様に茶はいらない』
『かしこまりました』
女は静かに戸を閉め下がっていった。
『さっきの店員はなかなかいい』
『そりゃどうも。で、昨日の今日で何しにきやがった』
ジーザとエスは無言…なんでアフロを………昨日の事もある何か仕掛けがあるかもしれん…
『侘びをいれに来た。すまなかったガメル』
何でもいい、どうにかして手打ちにしたい。そこからが本題だ。
『すいませんでした。はいそうですかっていくと思ってるのか。どういう頭してやがる』
狙いは乙女座だろうが、いつものやり口じゃねえから慎重にいかねぇと…
『お前の言うとおりだ。コレクションの為とはいえやり過ぎた。結果は欲しい物は手に入らず運よく命を拾った。この様だ』
完敗を認める、実際そうだしな。ガメルの野郎は俺という男をよく知っている、そう簡単に信用しないだろう、狙いはエス1人だ…
『大体のことはお2人にも聞いた、それでも狙った獲物を簡単に諦めるバース様とは思えねぇ…いまさら本性隠す必要もねぇだろうが。なぁ、バース様よ』
まだ、奴の狙いの流れが絞れねぇ…気持ち悪い、我慢の時か。
『確かに、俺も肩が凝る。駆け引きは無しでいくか、俺はどうすればいい、何を差し出せば許してもらえる。俺に出せるものなら喜んで差し出す』
ガメルの奴焦れたな、話を進めてくれたのはありがたいぜ。長くなればなるほどボロが出る危険性が高まるからな…
『何でもだと…』
本気か…吹っ掛けて様子を…駄目だ。もし、それを差し出すといったらそこで話しが終わる。
『黄金十二宮…って言ったらどうするよ』
旦那、ナイスアシスト。俺から聞かなければ俺との取引ではなくなる。
『かまわねぇ。本音は渡したくない絶対にだ。でもそれで済むなら差し出そう。関係が戻ればまた取引できるかもしれねぇからな』
乗ってきやがった、思う壺だ。ガメル、今回の勝ちは貰った。
『ガメル、本気じゃないか。お前だってコレクションのコイン手放せって言われて踏み切れるか』
これか、これが狙いか…あの野郎、始めから旦那を巻き込む為に…やられた、何が駆け引き無しだチクショー。
『エス君、2人のやり取りに割って入るのはどうかと思うよ。エス君はエス君で交渉するんだろう。じゃあその2人の問題は2人のものじゃないのかい』
おお、ジーザさん。いや、ジーザ様。よく言ってくれました。始めの印象で感じ悪い奴とか思ってすいませんでした。ありがたやありがたや。
この野郎、せっかく変わってきた流れをぶち壊す気か。どんだけ俺の邪魔すれば気が済みやがる…
ジーザはそう言うけど、面倒くさいんだよな。適当に金貰ってはい、終了って感じにしたいんだけどな…駄目か…ジーザの奴偉そうに言っておいて自分だけ酒飲んでやがる…
場は動きを止め、ジーザが酒を煽る音だけが微かに聞こえる。
こいつに丸投げしよう、そうしよう。
『なあ、ジーザ』
『慣れ慣れしいよエス君』
そう言いながらも少し嬉しそうだ…
『ハンバーグの旨い店があるんだが、一緒に行かないか』
『僕と2人きりで行きたいって事かい』
『そうだ、ぜひ食べてみてほしい。お前に食べさせたいって思ったんだ』
『なるほどね、大体わかったよ…しょうがないね』
ガメルとバースの間に進むと静かに馬鹿でかい銃を両手に持ちそれぞれに銃口を向ける…
『みんな命があってよかったよね。せっかく拾った命、無くしたくないよね』
2人はいきなりのことで身構える暇も無くじっとしている、ある程度俺の意図はジーザに伝わっているけど、最短の方法でいくとは。俺はなんでこんな恐ろしい男と知り合っていたんだろうな…
『今回のことは慰謝料払ってよしとしようじゃないか。ガメル、コインは手に入ったんだろう、あんまり欲出すな。バースさんあんたもだほどほどにしとけよ。慰謝料多いと俺は喜ぶけどな』
『僕はあんまり気が長い方じゃないんだよ、どうする』
しょうがねぇ…
しかたねぇ…
『俺は肩の治療費だけでいい。旦那の言うとおりコインも手に入ったんで』
この状況でごねるのはリスクが高すぎる、もう少し搾り取ってやりたかったなぁ…
『了解した、治療費は責任もって払う。エスさんあんたにはこれを、今回の迷惑料込みだ』
『馬鹿、今渡すなんて。死にたいのかい』
『『ええっ』』
『ジーザ、少し待っていてくれ』
『あーあ、こうなったら暫く動かないね………殺すか…』
とりあえず、エス君が数え終わるのを待つとしようか。
『OK,この額なら俺から言うことはねぇ、ジーザ飯食いに行こうぜ』
『エス君のおごりかい』
『お、おうよ…俺のおごりでもいいぜ、自分で出してもいいけどな』
まったく…
『それじゃあ食べてから決めることにするよ。本当においしければ僕がおごるからさ』
『本当か、もうおごりは決定だな。早く行こうぜ』
相当自信があるみたいだね、きっと記憶について色々聞きたいからおごりでもいい言ったのだろう…僕の優位は確定事項、記憶が戻るまでは僕を邪険にはしないってことだよね…
うーん、複雑な気持ちになるね。以前だってそんなに雑に扱われることも無かったし、でも今は争う相手がいない状況、一人占めも悪くない…
『何、難しい顔してんだよ。着いたぜ早く来いよ。大盛り2つ、お願いしまーす』
店内に客の姿は無く、奥から肉を焼くいい音と香ばしい香り、自信があるの言葉は本当のようだね。
『メニューは無いのかい』
『この店はハンバーク定食と大盛りハンバーグ定食しかない、ドリンクメニューも無い。そういう店だ』
『店主の異常なこだわりを感じる、狂気に近いね』
『味は保障するぜ』
さほど待たずにボリュームのある定食を2つ、素晴らしい筋肉のボリュームをもった店主が運んでくる。
『店主、持参のワインを飲んでもかまわないかい』
『好きにするといい』
店主は静かに奥へ帰っていった。
僕はワインとグラスを2つ取り出しゆっくりと注ぐ。
『では、再開と新しい出会いに乾杯』
深い赤色、グラスは2つ…
「金取らないよな」ってなんかホッとする一言ももらえたし。
味は文句なし、ここの支払いは僕で確定だね。ここからが本題か…




