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『わかっております。黄金十二宮は一般的な価値も高い代物、国営の博物館に並ぶようなものですから。私は7種所持しておりますが失われたものもあるでしょうね。現物をこの目にできるだけでも嬉しいものですよ』

『価値のほどは知らんが思い出の品でな、まあ、前置きはお互い不要だろう』


俺は懐から箱を取り出し机に置く、箱を開け中身を見せる。


『間違いない、外箱、中身共に本物…触らせていただけないでしょうかエスさん』

『かまわないぜ。コレクター相手にそんなけち臭いことはいわねぇよ』


大柄な体からは考えられないくらい繊細に、儚い花を扱うように確認をするバース。

一通り各部の確認を終えると静かに箱に戻す。


『やはり素晴らしい、状態も最高です。ガメルこれを』

バースが渡したのはきっとコインだろう、よかったな。



『エスさん、無理を承知で譲ってはいただけないでしょうか』

『金をどれだけ積まれてもそれはできない相談だ』

『言い値で結構です』


『作った本人からの貰い物でね、金は大好きだがこれは別だ』

『エスさんは冗談が下手ですね、150年前の作品ですよ。本当に価値がわかっていないらしい…』



乙女座を挟んでバースと対峙する…悲しそうに笑い俺に背中を向ける。

『ガメル、よけろ』『え、旦那っ』

『動くんじゃねえ、こいつがどうなってもいいのかい。だ、ん、な』


肩を撃たれたガメルが床に転がる、その手のコインを離さない根性に少し呆れる。

柄の悪い奴等がぞろぞろと階段からあがって来る。


『旦那、すいません』

床から情けない声が聞こえる。


『穏やかじゃねえな。どういうつもりだバースさんよ』

『今なら言い値で買ってやろうって話だよ。仲間を殺されたくなければな』


『仲間、俺のか。どこにいるんだよそんな奴』

『そんな、旦那…』

ガメルは真っ青な顔して項垂れる。


『まあ、いい。アンタいい度胸してるな。その感じだと腕に自信もあるんだろう。でもこの人数相手にやろうってのか。話しをしようぜ、なぁ』

『話しね…そこのガメルに銃口向けてる奴、そう、お前だよお前。バースさんよあれ入り口に配置してるの簡単に人を入れないためかい』

『お前どういう意味だ』

入り口にいた奴は俺を睨みつけてくる。


『見た目どおり頭も悪いのか、肉壁かって聞いてるんだよこの豚野郎が』

『馬鹿にしやがって』

銃口を俺に向ける豚野郎、お前が馬鹿でよかったよ…


『旦那、何を…』

『早く行け、コイン放さないくらいなら根性出して先に行けるだろう』


おそらくこの建物の用心棒は全員ここにいるだろう、ガメルを階段へ押しやった。階段を降りていく音が小さくなる。


『おいおい、何ならお前もお帰り頂いていいんだぜ。乙女座のお礼に命は助けてやるよ』

『猿山の大将にくれてやる物はねぇからな』

『そんな安い挑発にのると思ったか』

『のるさ…』


マントを脱ぎ捨てる…


全員が俺に注目する…

『ハッタリか、マント脱いだだけじゃねぇか』

豚野郎が俺を床に叩きつける。

『めんどくせぇ殺してしまえ』

『バースさん、いいのかい俺を殺しても。乙女座いらないんだな』

俺は投げたマントのほうを向く。マントは乙女座を載せていた机に覆いかぶさっている、バースはマントを退かす。


『ない、乙女座がないぞ。どこに隠しやがった』

『マントの裏見てみろよ。俺を殺したら中身はいつ手に入るだろうな、がっ』


何度も何度も顔を蹴りつけられる…

『ふざけたまねしやがって、くそが、ソニミオから出しやがれ』


口いっぱいに鉄の味が広がる…


『汚い言葉使ってるほうが似合ってるぜ』

さらに体中を蹴られる…いつまでも続くかのような暴行が急に止む。



『何しやがる、裏切るきか』

『とにかく、動かないでほしいね。君に頼む用事は無くなった。用済みなんだよ』


全身が痛い、顔を上げるとバースの頭に銃を当てている女がこちらを見ている…



『エス君、何で無視するのさ』


男…みたいだな、俺を知っているのか…


『ボスから離れやがれ』

軽く響く銃声、重いものが床に落ちる音が響く。


『僕は機嫌が悪いんだ。邪魔をするな』

部屋を支配する殺気、息をするのもためらうほどのプレッシャー


『俺を知っているのか…』

『エス君それはネタじゃなくて言っているのかい。てっきり何か面白いことをするためにわざと僕を無視してるかと思ったのに』


間違いなく俺を知ってる、かなり親しげな様子、もう少し探りを入れてみるか…


『俺は最近の記憶が無いみたいなんだ、俺を知っているなら教えてくれないか』


耳の上の髪が数本散る…


『何勝手にしゃべってるのさ、僕たちとの記憶がないんだろう。それはエス君であって僕のエス君ではない…僕の質問に答えろ』


俺に選択肢は無い。質問に答えなければバース達にいたぶられるか、この男に殺されるかの2つに1つだろう。


『わかっていること、気になることを言ってみろ』


『チックスター、規格外鉱石、氾濫』

『後は』


『空き缶に銃を撃つ少女………』

『どうした、続けろ』

『…昨日の夢にお前が出てきていた…』

『詳しく話せるかい』


若干表情が柔らかくなった気がする。俺は夢の内容を話すことにした。


『空き缶に銃を撃つ少女がいて、黒いもこもこした物が近づいてきてそれをお前が撃って、もこもこに花が咲くんだ。お前は「いいよね、とても面白い」って俺に言う夢だった』


『エス君、黒いもこもこの正体はアフロだよ』

『あれはアフロだったのか』


いつの間にか俺のそばに来て俺の顔をぺたぺた触っている、随分蹴られたりしてたから軽くでも痛い…ていうかバース放してるけどいいのか。


『じゃあ行こうかエス君』



『ここまで小馬鹿にされたのは初めてだぜ』

壁に穴が空いている…

『バース、コレクションと命どっちがいらない…両方いらないなら僕が片付けてあげるけど。多少でも協力してくれたからね、邪魔しないなら僕も大人しくしてるとしよう』


『わかった、俺も命が無けりゃせっかくのコレクションにも触れないからな』


『その判断は正解だと思うよ、じゃあねまた気が向いたら手を貸してあげるよ』

『あんたは俺にはでかすぎる』

『だろうね。賢明な判断だよ。バイバイ』


とにかく助かった…

普通に裏口から出る、ガメルの奴無事かな…


『さあ、行こうか』

『どこに行くんだよ』

『夜は寝る、エス君のところに泊めてよ。話は明日にしよう』


命の恩人ともいえる、俺の記憶の手がかりでもある…まあ、そばにいてもらったほうがいいだろうな。


『じゃあ、行こうか』

『エス君、ワインが飲みたいけど持ってる』

『あるけど』

『じゃあいいや、行こうか』


何も無かったかのように2人夜の街を歩き始めた、懐かしい気がするのは気のせいかな。




一夜明けて、とはいっても昨日は眠れなかった。あれから旦那はどうなったんだろう、正直バースを舐めてたもう少し穏便に進めると思ってた…


肩が痛い、それ以上に胸の奥のもやもやが不快だ、自分が引き起こしたことなのに…


コレクションは増えた、それは嬉しい、引き換えに大事なものを削った気がする。


『社長、Wをご希望のお客様ですが』

気が乗らない、そうも言ってられないか。


『新規か』

『お1人は最近お見えになった方です。お連れ様は初めてかと』


着替えもせず急いで地下の応接室へ走る、振動が肩に響く…

扉を開けてそこにいる人物を見る…




『だ、んな………』

『ガメル、大丈夫か肩』



『ええ、俺は痛いですが大丈夫っすけど…』

『そうか、そんならよかった。まだ思い出してないんだけどこいつはジーザだ。あの後助けてもらってな』

『茶菓子もいいけどお酒は無いのかい』

『朝から酒飲もうとするなよ』

『エス君、まだ記憶が戻ってないんだから馴れ馴れしいと殺すよ』

『そういうなよ、もうすぐ記憶も戻るだろうよ。これのおかげでな』




『旦那、何でアフロなんですかい』

『ジーザが言うには俺の記憶はアフロに深い関わりがあるらしいんだ。夢にも何回か出てきたからな信憑性高いぜ』


旦那…自分の頭上のアフロをもふもふしながらまじめな顔して語ってるっすけど、ジーザさんに騙されてると思いやすよ…だって、隣で必死に笑いをこらえてますもん。


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