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観客のいない世界  作者: 亀


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第278章 別の担当者

旧資料の保管部門から追加の回答が届いたのは、設備更新が完了してから四日後だった。


今回の中継装置について、直接の処理記録は見つからなかった。


ただし、当時の設備整理を担当していた部門の業務引き継ぎ資料に、関連する記述が一つ残っていたという。


女性運営責任者は、補佐役から報告を受け、資料を確認した。


記述は短かった。


設備の用途を確認できない場合は、現地での撤去を行わず、管理主体の確認を優先する。


その後の対応については、担当部門の判断に委ねる。


文書には、対象となった設備の一覧が添付されていたが、今回の装置については、管理主体を確認した結果が記されていなかった。


「この引き継ぎ資料は、いつ作成されたものですか」


彼女が尋ねると、補佐役は回答した。


「元の事業が終了した直後です。設備整理の担当者が交代する際に作成されたようです」


「担当者が交代したあと、誰がこの装置を引き継いだのかは分かりますか」


「現時点では確認できていません。引き継ぎ資料には、担当部門の判断に委ねるとありますが、個別の担当者名はありません」


女性運営責任者は、資料を机に置いた。


「では、当時の担当部門が現在も存在するか、確認してください。組織が変更されているなら、後継の部門が記録を持っている可能性があります」


補佐役は、組織履歴を調べることになった。


調査の結果、当時の担当部門は、数年前に別の部門へ統合されていた。


業務の一部は引き継がれていたが、古い設備の管理記録については、どこまで移管されたのか明確ではなかった。


補佐役は、後継部門に照会を行った。


数日後、回答が届いた。


後継部門には、当時の設備整理に関する一般的な手順書は残っていた。しかし、個々の設備について、誰がどのような判断を下したのかを示す記録は見つかっていなかった。


担当者は、追加で確認できる資料があれば連絡すると伝えてきた。


補佐役は、その回答を女性運営責任者に共有した。


「手順書は残っていますが、個別の判断記録は確認できませんでした」


「当時の手順では、用途を確認できない設備を、どのように扱うことになっていたのですか」


「撤去せず、管理主体を確認することになっていました。ただし、確認できなかった場合の最終的な処理については、手順書には詳しく書かれていません」


女性運営責任者は、資料を読み直した。


手順書は、現場で判断に迷った場合の対応を定めていた。


しかし、管理主体を特定できなかった場合、その状態をどの程度の期間維持するのか、誰が最終判断をするのかまでは定められていなかった。


「当時の手順には、そこまでの規定がなかったということですね」


「はい。少なくとも、現在確認できる資料には記載されていません」


彼女は、今回の調査結果を記録するよう指示した。


古い中継装置が残された理由について、現時点で確認できるのは、用途と管理主体が不明な設備を、すぐに撤去しないという手順があったことだった。


その手順が、今回の装置にどのように適用されたのか。


また、誰がその後の管理を引き受けたのか。


それらは、まだ分からなかった。


一方、補佐役は、今回の調査とは別に、過去の共同事業で使用された管理区画の表記についても、引き続き資料を整理していた。


新たな資料は見つかっていなかったが、以前に確認した研究報告の中に、分類の意味を説明する短い注記があった。


その注記によれば、一部の管理区画は、設備の設置場所ではなく、接続先を管理する権限の所在を示していた。


補佐役は、その記述を読み、現地の装置に残された表記と照らし合わせた。


しかし、今回の装置に付された管理番号が、その分類に従っているかどうかは分からなかった。


番号の形式が似ているだけでは、同じ規則で作られたとは限らない。


彼は、注記の出典を記録し、現地の装置については判断を保留した。


その日の夕方、女性運営責任者は、別の案件の打ち合わせを終えたあと、補佐役に声をかけた。


「今回の装置について、現地で追加の作業を行う必要はありますか」


「現在のところ、ありません。設備更新は完了していますし、装置の保管状態にも問題はないと報告されています」


「では、現地の作業は増やさず、過去の記録の確認を続けましょう。調査のために、必要のない作業を現地へ追加する理由はありません」


補佐役は了承した。


調査の対象は、現地の装置そのものから、過去の事業記録へ移りつつあった。


装置を調べれば、製造時期や構造について何か分かる可能性はある。


しかし、現時点では、装置を移動させたり、分解したりする必要性を示す情報がなかった。


まずは、残されている資料から、管理の経緯を確認することになった。


翌週、後継部門から、当時の担当者が使用していた業務記録の一部が見つかったという連絡が届いた。


資料は、正式な設備台帳ではなかった。


担当者が日々の作業内容を記録していた簡易な業務メモで、複数の設備について、確認事項や連絡先が記されていた。


今回の装置に関する記述があるかどうかは、まだ確認されていなかった。


補佐役は、資料の閲覧条件を確認し、必要な範囲だけを参照する申請を行った。


承認されたのは、該当する設備整理期間の業務メモを閲覧することだった。


資料を開くと、設備名の代わりに管理番号だけが記されている箇所がいくつもあった。


中には、担当者が交代したため、確認を継続するよう記された項目もあった。


補佐役は、番号を一つずつ確認した。


今回の装置と一致する番号は、まだ見つからなかった。


ただし、資料は複数のページに分かれており、すべての項目を確認するには時間がかかる。


彼は、確認した範囲と未確認の範囲を記録し、作業を続けることにした。


過去の資料には、管理を引き継ぐための手順が残されていた。


しかし、手順が存在したことと、すべての設備について引き継ぎが完了したことは同じではない。


現地に残された装置について、誰かが管理を引き受けたのか。


それとも、担当者の交代と事業の終了によって、確認作業が途中で止まったのか。


補佐役は、まだどちらとも判断できなかった。


彼は、次のページを開いた。


そこには、別の設備に関する短い記述が並んでいた。

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