れいこ
「、、、そうだ。『さざなみ丸』のものだ。間違いない。オイルじゃない。それが、結果の返事が一向に帰って来ないんだよ!ああ。、、、ああ。シーシェパード?違うと思うなあ。」
港で、漁に出ていた捕鯨船の船体の一部が引き揚げられた。『さざなみ丸』と書かれた部位である。真っ黒い液体が塗りたくられているが、字はなんとか識別できた。船体の他の部位は見つかっていない。
海上保安庁の板垣は、『さざなみ丸』の一部に目を落としながら電話をしている。船体の部位の下にはブルーのシーツがひかれ、採取した黒い液体がいくつかのビニール袋に入れられている。ビニール袋の表面には、それぞれ施設の名前が書いてある。
「消息がつかないらしい。いや、、、この部位だけ剥がれて他の船体が全く無事ということはないだろう。おそらく、もう、、、。なんだろうな、ダイオウイカにでも襲われたか。、、、あ?、、、あ?不謹慎?マジだ、おれは!」
一番端のビニール袋には、『見晴らし公園科学研究所』と雑な字で書き殴られている。
柚宇は研究所の事務室にいた。
「『ミハラシ』の公演のセットリストは送ってましたよね!?え?じゃあ島田さんにもcc入れといたんで島田さんに聞けますか?」
少しイライラした様子で柚宇が電話をしている。もう一つの電話が鳴り始めた。柚宇は心の中で舌打ちをした。
ドタドタドタ、と地下から駆け上がって来る音が聞こえてきた。
電話中の柚宇の隣で、ひなたが電話に出た。
「『見晴らし公園科学研究所』です!今ちょっと別の電話に対応しておりまして!はい!伝えておきます、あ、電話番号頂戴できますか?」
電話が終わった柚宇は、ひなたに言った。
「あ、いいぞ。代わる。」
「海上保安庁の板垣さんです!」
「、、、?」
海面を見つめるサトザクラは新しい遊びを考え出そうとしていた。
水中から水上にお腹を出すと、その姿勢を保った。白いお腹が太陽に反射して眩しい。
白いお腹に海鳥が降りた。シャチのお腹だとわかっているだろうか。サトザクラは静止を続けた。
海鳥が飛び立った。サトザクラは思いっきり振りかぶりその海鳥を下から尾ビレで打った。一撃で絶命した海鳥は、近くの海面に落ちた。サトザクラはぼそりと言った。
「次はもっと遠くに飛ばしたいな。」
「サトザクラ!」
柚宇の呼ぶ声に反応して、サトザクラは顔だけ出した。
「今、忙しいんだ。」
「そうは見えねえな。ちょっと聞きたいことがある。」
そう言うと、柚宇は地図を見せた。日本列島とその近海の地図である。
「数日前、この辺で比率は動いたか?」
「さっき言ったはずだ、水素。それに何かあればお前に言う。」
「だよな。いや、そう思ったんだ。うーん。」
柚宇はそう言うと、黙った。サトザクラは目で、は?という顔をしている。
柚宇は腕を組み始めた。
「水素。今、斬新な遊びが生まれそうなんだ。ちょっとどいてくれるか?」
柚宇は無視して、何かを考えている。サトザクラはそれを見つめる。
「水素。」
「サトザクラ。イルカ達は元気か?」
「?どのイルカだ?」
「クソ悪趣味調教師どもだよ。ユウとか、ハツカとか。」
「ひなたと仲良かったな。おれは知らん。」
「ひなたと仲良かった?お前、、、遊ばせる相手少しは選べよ。ダメな親の典型だな。」
サトザクラはムッとした。
「どの程度、仲良かったんだ?」
サトザクラは身体全体を水上に出し、大気に浮いた。
「何を聞きたがってる、水素。はっきり言えよ。」
明らかに怒り始めているサトザクラを目の前に、特に恐れている様子も見せず、地図を見ながら言った。
「大変だ、サトザクラ。バンドウイルカのユウが、『地球返し』に来てる。ひなたを殺すつもりだ。」




