↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひなた  作者: Hiro
なかむら
PR
1/28

ひなた

僕はきっとここから出たいと思いながら

傘が破れたのは雨の音


「兎瓦けいってどこにいるか知ってる?」

質問の意味がわからなかったのだ。

なので、聞き返した。

「うさぎ??」

「兎瓦けい。」

「、、、。」

警備員はもう一度聞き返した。

「人?の名前かな?えっと、ここにいる患者さんの名簿は持ってなくてですねえ。」

がん

突然響いた大きな音に、驚いて警備員は顔を上げた。

ガラス越しに質問をしてきた女性はすでにいなくなっており、何かを蹴るような、叩くような動作は確認できなかった。

後ろにいたもう一人が、狼狽する警備員に声をかけた。

「どうした?」

「いや、今なんか変な子が。」


ひなた


警視庁の一室で誰かが喋っている。

中年男性と20代の女性のようだ。

「増渕といいます。近藤の上司です。」

女の子は応えた。

「あ、どうも、兎瓦けいです。」

「ふふ。知ってます。何か、飲みますか?」

静かな部屋だった。ドラマで犯人が尋問を受けるような、味気ない無機質な部屋でなくてけいは安心した。座っている椅子も、まあまあ柔らかい。

増渕は机に置いてあるコーヒーメーカーからコーヒーをカップに注ぐと、喋り出した。

「寒くなってきましたね。あ、兎瓦さん、ミルクと砂糖は?」

「あ、、ください。」

「すいませんね、急にお呼びしてしまって。、、お仕事は何を?今日は大丈夫でしたか?」

「あ、大丈夫です。えっと、、」

無礼の塊のような近藤に比べると、随分ジェントルメンな上司じゃないかとびっくりした。色白でとても頭が良さそうだ。

けいが答えると、増渕は驚いた顔をした。

「え、『ミハラシ』??有名な、こりゃまた。」

増渕は微笑むと、奥の椅子に座った。壁に掛けてある絵を見た。大胆な抽象画だ。けいがその絵に焦点を合わせた瞬間、増渕が口を開いた。

「近藤と水沼がいろいろと無礼を。」

はい、と言いそうになったが、けいは代わりの言葉で返答した。

「あ、全然大丈夫です!」

「近藤は人として何かが欠落してましてねえ、仕事に向ける情熱はけっこうなことなんだが、、」

増渕はまた笑顔を向けた。

けいは、素敵なおじさんだと思った。

「さて!兎瓦さん、、、珍しい苗字ですよね。」

「あ、はい!ウサギと瓦を合わせたみたいです!」

見ればわかる。

「ははは!いや、珍しい組み合わせですよね。まあ、それはいいんだが」

増渕がやや真面目な表情になった。

「炭素、水素、時間についてお聞きしたいことが。」


緑が踊る。

外は余りにも晴れていて、連れられ歩く犬も笑っているように見える。歩道を不自然な猛スピードで歩く女の子がいる。

長いスカートは歩く度に地面をやや擦っているように見える。前触れもなく振り向いては、どこかに向かっているというよりかは、何かを探しているようだ。

立ち止まった。

漆黒の長い髪の毛は、舞い静止に追いついた。

何かを聴いているようだ。

「この辺にはいないな。」

独り言にすれ違う誰かが振り返った。

たまたま通りかかった真島さん(32)男性、はかわいい声だと思った。


「、、、なるほど。では、発生パターンのようなものは存在しないということですね。」

「と、思います。わたしは仕事で、3つのバランスが崩れている地域を探す仕事をしてまして、、、えっと、わたしの上司の方がうまく説明できると思うんですけど。」

増渕は制止した。

「いえいえ、しかし、おもしろいですね。劇団ミハラシはそんな化学調査のようなことも、やっていたなんて。誰も知らないでしょう。」

増渕はコーヒーを一口飲んだ。すると、子供のような口調で言った。

「じゃあこっちから退治しに行くのは無理なのかあ!どうしたもんかねえ!」

けいは自分のバッグに目を落とした。

「かわいいキーホルダーですね。シャチが好きなんですか?この前、ウチも娘を連れて行きましたよ、水族館。」

けいは微笑んだ。

「増渕部長!」

軽く開いていたドアにノックすると同時に、誰かが増渕の名を呼んだ。振り返る増渕とけい。

「おう!」

若い女性の警察官が入ってきた。

「あ、失礼しました!」

「どうした?」

「はい!増渕部長にお客様が、、、」

増渕は座ったまま、首を横にひねった。

「今日?うん?、、、誰だ?」

女性警察官はけいを見て、表情を変えず答えた。

「女性の方です。」

「名前は?」

けいは女性警察官の後ろに突然現れた女の子と目が合った。けいは、鳥肌が立つのを感じた。

「三枝(さえぐさ)ひなたです。よろしくお願いします。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。