第69話 名前をつけなきゃね
猫ちゃん精霊様は、猫として扱うしかないということは、わかった。
あとは、村の家が燃えたり、グラナド家に不正がないことを祈ろう。
「リーンさん、ありがとうございました。精霊様については気をつけます」
平民女子ーズはもう薩摩藩士から戻せないから勘弁して。
頭を下げて、部屋を出ようとした時、リーンさんに呼び止められる。
「待って、ルナちゃん。もう一つ話があるの」
およ?まだ何かあったっけ?
侍女ルートの話かな?
「これ、この後どうするつもり?」
手元には一冊の本。
お!もう読んだのね、『王都学院恋物語』。
この後って、展開?それとも本の処遇?
「えーと、この後とは……」
リーンさんは、パラパラとページをめくり、一息つくと、本を閉じて机の上に置く。
「これ、かなり危険」
え!?なに?精霊様に目をつけられちゃうやつ?厄災が振りかかる?グラナド家、炎上しちゃう?!
「え、あ、う……。危険っていうのは、精霊様的に……ですか?」
リーンさんは、目をパチクリして、あっ、と声をあげ、両手を振る。
「あ、そうじゃなくてね。これ、大勢に読まれると、派閥ができちゃうなって。派閥間で、ルナちゃんの取り合いが始まる未来が見えるよ?」
ぐはっ!そっちか。
すでにグラナド家シヨウニン1〜3で経験済みだけども。学院でもアレが起きるのはキツイね。
「あぁ…、じゃあこっそり持って帰ります」
まあ、リーンさんに見せるっていう目的は果たしたしね。密かに図書館の写本コーナーに潜ませることも考えたけど、余計な事はすまい。
また挨拶をして、リーンさんの部屋をでる。
ふぅ、と一息ついたところで、妙な雰囲気。
足元、いるね。走馬灯回ってるし。ホントに神出鬼没。
「精霊様、この後、購買で精霊様が食べれそうな物、買いに行きますけど、うちにきます?」
猫ちゃん精霊様は、なーっ、と一鳴きして、身体をよじ登ってくる。
爪、食い込んでチクチクするよ?
今度は頭まで登らず、肩のところで寛ぎ始めた。
よく見ると確かに影がない。
ファンタジーだなぁ。
「購買で、精霊様が食べれそうなのあると良いですねぇ……。たしか甘い味はわからないんだったかなぁ。チュールがあればいいのに」
そうぼやいたところで、人前で『精霊様』と呼ぶのも不味い気がした。
「何か名前をつけましょうか。精霊様って呼ぶと騒動起きるかもしれないので。どんなのがいいですか?」
って聞いても答えてくれるわけじゃないけどね。
何かいい名前、ないかなぁ。
タマ…モロ…ドラ…バロン…テト…カルシファー…ダイジン…エヴァ…アイルー…
んー、ありきたりだなぁ。
王妃様に愛されてたらしいから、迂闊に変な名前もつけらんないしね。
購買で猫が食べられそうな、乾燥肉を何個か買いつつ考える。
名前つけるのって、考え始めると、逆に決まらないよねぇ……
何か格式高そうなやつ……由緒ある名前……神様の名前とか……?
んー………、あ…。
「アマテラスってどう?精霊様?」
猫ちゃん精霊様の尻尾が、わたしの頬を撫でた。




