第36話 目立たないための方策
女性教官に連れられての中等部へ、途中、生徒には一人も出会わない。
そっか、もう授業はじまってるのか。
いきなり目立っちゃうのはいやだなぁ。
「遅れて行っても大丈夫でしょうか……」
教官は鋭い目つきで見下ろしてくる。
「今は、昨日の試験の結果が返されて、間違ったところを見返す時間です。ルナさんは、1問も間違ってないので、問題ないでしょう」
うん、致命的に大間違いをしちゃったんだけどね!だからこうなってるんだけど!
そのへんの処世術の授業もしていただきたい!
教室の前まで来た。
ふぅ〜緊張するぅ!前世で何回も初クラスは経験してるけど、慣れないね!
しかも年上ばかりの教室!
「教室に入る前に言っておくべきことがあります」
お!なになに?注意人物とか?
「新作ができたら、すぐ、私に見せなさい。他の誰よりも早く」
ん?新作?
「主人公が誰を選ぶのか……、ふふ、楽しみです……」
あ、読者さんだった。
「あー、はい…。できたら…」
教官の口が緩んだ。
「では、入りましょう」
教室のドアが開けられ、中が見える。
同時に中からもわたしの姿が見えたのだろう、一斉に視線が向かってくる。
興味、好意、疑念、無関心……
そんなところか。視線に込められたものは。
挨拶を促される。
目立ちたくないからね、無難にすませとこう。
こんなところで傷跡を残す必要もない。
「ルナといいます。グラナド家の従者として学院にきました。よろしくお願いします」
「ルナさんは入学早々の試験で最高の成績を収めて中等部に上がりました。皆さんも負けないように」
うぉぉぉぉお!!
その補足、いらんよセンセー!!
ああああ、向けられる視線に嫉妬とか、侮蔑とか、ネガティブなものが増えていくぅ〜!
「教官、ということは、彼女は私達よりも優秀である、という認識であっていますか?」
あっていません!あっていません!
取るにたらない、元女子高生の走馬灯ちゃんです!
そんな認識もたないでぇぇぇ!
「その通りです。見習うように。では、ルナさん空いている後ろの席へ」
見習わせないでぇ……
視線が痛いよ……
席後ろでよかった……
もう、このクラスでは地味に徹するよ!地味子だ!
ずっと虚無でくらす!
期待には応えないよ!
「では授業をはじめます。まずは、算術から。問題を口述するので、書き留めなさい」
出された問題は、かけ算、割り算。
簡単すぎる……暗算でなんとかなるくらい。
まあ、周りみても、だいたい10歳から13歳くらいか。前世だと小学生くらいだもんね、そんなもんか。
これはあれかな?
聞き取りの正確さも要求してるやつかな?
まあ、目立たないように、時間かけて解くとしようかな。




