第137話 密談は湯けむりとともに
「ぬぅ……あああぁぁぁぁ……」
お湯に浸かるのは気持ちいい。前世の記憶があるからだろうか、それとも異世界共通なのだろうか……。湯に浸かった途端に声がでる…。
アウレリア様との情報共有を終え、宿に入ると、ワクワクした瞳のシーナさんが、お風呂の順番をタルおばちゃまに問い詰めてた。
タルおばちゃまの采配で、
レイティシアちゃん、
タルおばちゃまとシーナさん、
そして、わたしとマリーちゃん、
の順番となった。
浴槽狭くて、二人しか入れないからね。
シーナさんはわたしと入りたい素振りを隠さずにいたけど、それは無理だよ?シーナさん。
護衛騎士は二人だけなのだから、同時に離れることはできないよ?
レイティシアちゃんもね?
あなた、一応王族ってこと忘れないで?
そんなわけで、不満そうな二人を順番に見送って、出迎えた後で、わたしたちの番。
一応、脱衣所で走馬灯フル回転させるのは自重したわたしを褒めてほしい。
いや、もう、多くは言わないが、マリーちゃんは素晴らしかった。眼福、眼福。
そんなわけで、湯船に二人して浸かってるわけだ。湯船に浮く二つの丘陵、まことにけしからん。よきにはからえ。
冒頭のオヤジボイスも許してほしい。
なんて言ってる場合ではない。
「マリー、実はですね、諜報から接触されたのですよ」
マリーちゃんが、真剣な眼差しでこちらに詰め寄る。
「なんですって?!どこ触られたの!何されたの?大丈夫なの?
事と次第によっては、責任とらせるわよ?」
あ、えーと、物理的な接触じゃなくてね?
「違います違います!ベルカイト情勢について、最新の情報を提供いただいたというか……」
あ、ああ…、密着するマリーちゃん、肌、気持ちいい……、じゃないよ!
「ベルカイト王、病がだいぶ重いようで、婚礼の儀、かなり不穏になりそうなんです。わたしだけだと、判断できなさそうだったので、マリーにも知っておいて欲しくて…」
表情に陰が落ちる。
口に拳を当てて考え込む表情。
今の瞬間は、わたしだけのスチルだ。働け、走馬灯。
美少女から美女への過渡期…最高だよ……。
違う違う、そうじゃない。
ちゃんと真剣な話よ?
「行ったらいきなり、後継争いに巻き込まれるかもしれないってことね、ルナ」
そう!煩悩よッ!去れッ!
「そうなんです、第一王子と、第三王子とで争うみたいなんですけど……」
多分、それだけじゃすまない。
第一王子が次代の王に足る資質を持っているのなら、既に王太子になってるはずなんだ。
でもまだ王太子が決められていないっていうのが、ずっと気になってた。
だから、暗殺陰謀論なんていうのも出てきてるんだろうと。
「わたしの想像ですけど、第二王子っていう線も残ってる気がします」
マリーちゃんには、隠し事はしない。全部聞いてもらおう。
第一王子の正室は国内の公爵家から娶っているというのは、公になっている。
少なくとも今知られている範囲だと、レイティシアちゃんが第二王子に輿入れすることで、第二王子の影響力が、ともすれば第一王子よりも大きくなるのではないかと。
もし、第一王子に王としての資質に何か問題があるとすれば……
そんな推測を伝えると、マリーちゃんは少し思案して頷く。
「第一王子が、次代の王となるなら、第二王子が宰相なり、重要な立場になることが前提っていうのは、色んな話を総合すると浮かび上がってくるのよね。ひょっとしたら、第一王子を廃嫡させようって動きが、無視できない程大きいのかも…」
おお!さすがマリーちゃん!一段深い分析をしてるっぽい!
「それにしても、ルナ。いつの間にそんな事情通になってたの?……だれか、誑かしちゃった?」
なんでそうなる!マリーちゃん!
「違いますっ!諜報から伝言頼まれただけですぅ〜」
「えぇ〜?怪しいなぁ。この細い腰と、膨らんできた胸で誘惑したんじゃないのぉ?」
まて!掴むな!揉むな!
痩せぎすの骨ばった身体なぞ、誰も誘惑できないって!
「ちょ…!きゃぅ!マリーのほうがっ!魅力的な身体してるじゃないですか!なんです?このけしからん胸は!!」
くそぅ!負けないぞ!
「いゃん!ルナ!……こっちだって!」
そんなやりとりをしていたら、風呂から上がった時に、長過ぎる入浴をタルおばちゃまに、こっ酷く叱られ、レイティシアちゃんからは、次はどちらかが一緒にお風呂に入ることを厳命された。
反省……。




