ラノベ作家の異世界転生
昔々、まだ魔族が世界を支配しようとしていた様な時代。あるところに1つの国がありました。
国の名前はクリスタ王国。
その国は、いつも笑顔が溢れる素敵な国でした。
しかしある日、その国に魔族達が襲いかかったのです。
その国は一夜にして滅亡一歩手前まで追い詰められてしまいました。
多くの人の命が失われ、多くの悲しみが生まれました。
そんな中、1人の青年が立ち上がりました。
『魔族達を倒し、この国を平和に導くのだ』と。
そんな青年を見た王は彼に全てを託すことにし、国宝であるいくつかの武具を与えます。
彼は旅に出ました。
村を襲う魔獣を退け、精霊の女王と出会い加護を受け、ドラゴンを倒し、そして遂に魔族達の王である魔神を倒してしまいました。
そうして、国には平和が訪れ、笑顔が戻ってきたのです。
王は魔神を倒した青年に大層感謝をし、彼に勇者の称号を贈りました。
そうして青年は勇者となったのでした。
しかし、また魔族達が現れ、国を襲うようになってしまいました。なんと、魔族達の王は魔神だけではなかったのです。
青年は再び立ち上がりました。新たな仲間と共に。
勇者となった青年は、聖女、剣聖、導師の3人と共に魔族達と戦う旅に出かけました————
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「—————はい、お終い。今日はここまで。」
ベットで横になりながらお母様は絵本をそっと閉じた。
「えー、もうすこし…」
「そろそろ寝ないとダメよ。」
「でも…じゃあ、ゆうしゃさまは、そのあとどうなったの?」
「それは明日以降に…」
「きになる‼︎」
「うーん、そうね…。じゃあ少しだけ。勇者様は仲間と一緒に魔族の王達を倒しに行くのよ。」
「うんうん‼︎」
「沢山大変なことが起こるけど、みんなで力を合わせて乗り越えていくの。そして戦いが完全に終わったあと、勇者様と聖女様は結婚をしたのよ。」
「そうなの⁉︎」
「ええ。そして、その子供の子供の、ずっとまた子供が……アリスなのよ。」
「えぇ⁉︎」
「それに、直系らしいわよ」
「えぇぇ⁉︎」
「ふふ、私もお祖母様から聞かされた時は同じ反応をしたわ。さあ、これ以上は本当に遅くなっちゃうし、寝るわよ。」
「むぅ…はーい…おやすみなさい、おかあさま」
「ええ、おやすみなさい、アリス」
私はおやすみのキスをし、そっと眠りについた…
というのは嘘です。いや、目は瞑っていても、ゆっくりと眠りにつけるわけがない。
なんでかって?それは少し前に遡るんですが…
寝ようにもなかなか寝付けないから自分のベッドを抜き出し、お母様の部屋まで来たんですよ。
そこでお母様に絵本を読んでもらっていたんです。
そこまではいいんです。
ですが、そのお話にかなりの既視感があるんです。
笑顔溢れる国、クリスタ王国?
魔族に滅ぼされる?
立ち上がった勇者?
魔神?
仲間として加わった聖女?
そしてこのストーリー。
あぁ、妙に既視感があるわけですよ。
というか、ないとおかしいんです。
だってこれ……『せいてん』の話じゃないですか⁉
絵本用にかなりカットされていたりしてるけどさ…これ、『せいてん』だよ……
そして、私は前世の全ての記憶を思い出した。
絵本の読み聞かせで前世の記憶取り戻すとか…
うわぁ…これ、俗に言う異世界転生ってやつですよね…
こんなのラノベの中だけだと思ってた。
しかも転生先がよりにもよって自身が描いていた世界って…どういうことだよ…