ラノベ作家、死す
オリジナルは初投稿です。
星宮有栖。高校3年生。職業、ラノベ作家。これが私の全て。
中学1年の時から趣味で描き、夜空アリスというペンネームでネット小説サイトに投稿していた処女作『元魔神の少女、受肉して聖女に転職します!』、通称『せいてん』という作品が投稿後1年ほどで話題に。
そして半年後には運のいいことに書籍化された。
その後は4、5ヶ月に1巻ペースで続巻が発売。
私は最新話の投稿に書籍化作業、サインを描いてと寝る暇や学校に行く暇すらないほどに忙しい毎日を送っていた。
ただ、それを辛いとは思わなかった。
楽しさや嬉しさ、達成感などがそこにはあった。
高校2年の春頃にはネット小説版は完結し、アニメ化の企画もされた。あれは来年の夏放送だったかな?放送が楽しみだ。
そして現在、高校3年の2月。
私にとって最も大切な日がもう数日前に迫っていた。
大学入試ではない。
そもそも頭もそこまで良い訳ではない。
テスト日だけは逃すものかと登校をし、赤点スレスレの点で補講を回避。出席日数は留年ギリギリをキープし、それでもってなんとか5段階評価中全科目2をとれている現状だ。
そんな状況で大学とか行く気も起きないし、そもそも学力的に行けない。なんとか受かってもついていける気がしない。
入試じゃないというなら、何か。
それは『せいてん』の最終巻である10巻の発売とそれに合わせて行われることとなっているサイン会。
処女作で思い出のある作品の書籍での完結。嬉しくないわけが無い。この気持ちを、この作品をずっと追ってくれていた人と共有したい。しかし人見知りな私が知らない人と話せるのか。剰えサイン会なんてできるのか。
色々考えすぎてもう何日も前から緊張している。
………を続けた結果遂に当日が訪れてしまった。
普段は制服かジャージしか着ていなかった私もちょっとオシャレをし、化粧までして会場に向かった。
かなり緊張してそわそわしすぎていたせいか、お巡りさんに声をかけられたのは内緒。
まあ、サイン会自体は至って普通に終わった。
今までは発行部数やフォロワーなどの数字としてしかファンの多さを認識出来ていなかったのものの、会場にいた多くのファンを見てしっかりと実感することができ、少し感動で泣きそうになった。
大体の人は感想をくれたり、応援してます、と行ってくれたりした。そういう人にはちゃんと笑顔で対応を、…うん、できたと思う。
ちゃんとできたはず。
できたよね?
というか、コミュ障なんだから、少しぐらいぎこちなくなっちゃってても大目に見て欲しい。
そして夜、私の担当さんの神代さん(26歳、女性)と2人で近くのレストランに行き、軽い打ち上げをした。
私はパスタとソフトドリンク、デザートを頼んで、神代さんはワインとおつまみ数品を頼んでいた。しかし彼女、結構お酒は弱かったらしく、すぐに酔いが回ったのか急に泣き始めた。
私の初めて担当した作品がここまでくるとは。本当にありがとう、おめでとう、お疲れさま…
何度もそう言われ、恥ずかしいながらも嬉しくなった。
しかしそれを30分もやられると少しうざくなってきて。
とりあえず会計は私がして、神代さんはタクシーに突っ込んだ。
もちろんタクシー代も私が出した。絶対今度請求してやる。
はぁ…。疲れた。
けど、なんだかんだあった1日だったけど、悪くなかったな…。
そんなことを思いながら私は帰路についた。
暗い夜道をエゴサしながら歩いて帰る。
今日の反応がどうしても気になってしまう。
『夜空先生、綺麗な人だった』『夜空アリス先生、すごく可愛かった』『サインめっちゃ綺麗』…
そう?自分ではよくわからないけど。
『せいてんやっぱ最高。イラストもすごくいいですよね!』…
確かにイラストは最高だと思う。
イラストレーターさんに感謝しなければ。
『夜空アリス先生が超可愛い。結婚したい』…?
すみませんがお断りです。
『アリス先生、すごく可愛かったけど胸小さかった。もしかして男の娘?』…?
はぁ?悪かったですね。所詮Aカップですよ。女装した男の娘と対して変わりませんよ、ケッ……
人のコンプレックス弄って面白いですか?そうなんですか?へぇ…そうですか……ええ、いいですとも。名前覚えましたから。毎晩呪ってやる…。
そうして一通りのエゴサも終えたので、今後のことを考えてみる。
『せいてん』のアフターストーリーを書くか、それとも全く別の新作を書くか。
新作ならどんなストーリーがいいか…。
けど、しばらくは『せいてん』のアフターストーリー書きたいな……。どうしよっかな……
突如背後から何かにぶつかられたような衝撃。
不意だった為に踏ん張ることもできずに思いっきり倒れてしまう。
「ちょ…なん…」
明らかに軽く当たった感じではなかった。文句の1つでも言おうかとも思ったが、しかし立てないことに気がついた。
「あ。れ………」
そういえば全身に力が入らない。倒れたままぶつかってきた人の方を見る。
その人の服には真っ赤に染まっていた。
え……もしかして、私——刺された…?じきに痛みや恐怖が追いついてきた。
痛い…いたいいたいいたいいたいいたい………
苦しい…誰か……
叫ぼうにも声は出ず、立ち上がれない為逃げることもできない。
何故襲われたかも分からない。
誰かに恨みとか買ってないはずなのに。
ぶつかってきた人が屈み込み、やがて体から異物を思いっきり抜かれる感覚がする。
あまりの激痛に身をよじるが、やはり上手くは動けない。
そして2撃目がきた。
激痛と同時に今の1撃で完全に死んだことを悟った。
あぁ……『せいてん』のアフターストーリー、書きたかったな……
薄れゆく意識の中、私はそんなことを考えていた。
ゆっくりペースで投稿していこうと思ってます。
別のシリーズも何作か投稿するつもりです。




