格の違い
「リュウ様!エリス様は⁈」
ゴルゾフさんがこちらに駆けつけて来た。
「大丈夫そうですよ。首以外、見たところ外傷はありません。」
そう言って抱えていた王女様をゴルゾフさんに任せた。
その時、俺はゴルゾフさんと王女様を軽く突き飛ばした。そしてこちらに向かって、ものすごいスピードで飛んできた剣を体の横に逃がし左手で掴んだ。その剣は、さっき俺が男に刺したゴルゾフさんの剣だった。
すると遠くから男がこちらに向かってすごい速さで飛んできているのが見えた。すぐに訓練場につき、俺の前方に降り立った。
「少々油断していましたよ。あなたは勇者ですか?」
「だったらなんだ。」
「いえいえ、少し面倒だと思っただけですよ。」
男には斬ったはずの腕があり、胸の刺し傷もすでに塞がっていた。
(傷が全てなくなっている.......スキルの効果か?)
するとゴルゾフさんが後ろから声をかけてきた。
「リュウ様、その男は魔族です。私はその男を一度見たことがあります。おそらく常時発動スキルの【自己再生】を持っております。」
自己再生か.........それはやばいな。俺はそう思いながら男を見ていた。すると男は詠唱無しで魔法を発動してきた。
「『魔の黒槍』」
男の頭上から10本ほどの黒い槍が俺に向かって降ってきた。その瞬間、王女様が俺に向かって叫んだ。
「危ない!」
「大丈夫ですよ。安心して見ていてください。」
俺は王女様に向かってそう言い、降ってくる黒槍にスキルを使用した。黒槍は俺に届く前に全て消滅した。
「ゴルゾフさん、王女様を連れて他の勇者の元に行ってください。訓練場からは出ない方がいいでしょう。俺の目に入る所が一番安全ですよ。」
訓練場から出ていって欲しくない理由はそれだけではないが、俺の近くが一番安全なのは確かだからな。
するとゴルゾフさんは王女様を連れ、勇者たちが集まっている方に向かった。
「へぇ、【無効化】ですね。珍しいものをお持ちで。しかし消費体力がとんでもないと聞いていましたが............私を蹴り飛ばした時の動きといい、あなた相手には少々面倒ではすまないようですね。」
「御託はいい、かかってこい。」
「仕方ないですね、あなたから片付けるとしましょう。『魔の黒槍』」
男は先程と同じ魔法を放ってきた。しかし数は見たところ百を超えていた。それらがいっせいに俺に向かって飛んできた。
「芸のないやつだな。まぁ俺も人のことは言えないか。」
俺はそう言いながら全ての魔法を無力化させた。ここまでやっても体力に全然余裕を感じる。
「【消費体力半減】?いや別のスキル?.........なんなんですかあなたは?」
「敵に情報をもらすバカがいるか。もうこっちからいくぞ。」
俺は言うと同時に全力の速度で男の懐に入り首を斬った。だが首がなくなったはずの体が俺を殴ってきた。俺はそれを後ろに下がって避けた。そして俺は目の前の光景に驚いた。
「マジかよ......」
斬って落とした首が砂のようになり、体に戻っていった。そして首が生成されていった。俺はその間に無力化を使用していたが効果がなかった。
(これで分かったが、常時発動スキルには効果がないのか。)
「......あなたが動いたのがわかりませんでした。自分に何をしたのかも。あなたは危険すぎます、よってここで排除させていただきます。もう遊びは終わりですよ。」
男はそう言うと、刀身のない真っ黒な剣の柄だけをいきなり何もない空間から取り出した。男が柄を握ると片手剣の様な両刃の長く黒い刀身が生えてきた。そして何も持っていない左手の方を俺に向けてきた。すると男は魔法を発動してきた。
「『魔の黒雷』、『魔の黒槍』」
途端に男の頭上に黒い雲の様なものと無数の黒槍が現れ、紫色の雷と黒槍が俺を襲ってきた。それと同時に男は俺に斬りかかってきた。
俺は、魔法を無力化させ男の剣をゴルゾフさんの剣ではじこうとした。しかしゴルゾフさんの剣の刀身がそのまま斬られていった。とっさに俺は自分の素手で斬撃を受け流した。
そして俺は降りそそぐ魔法を避けたり無力化しながら、男の剣撃をうまく回避していた。
数が把握できないほどの魔法が入り乱れ、龍以外には目に追えないほどの剣撃がおこなわれていた。
「その調子でいつまでもつのでしょうか?」
おそらくこの男は、俺にスキルを使用させ体力切れを狙うつもりだろう。
俺は半分になったゴルゾフさんの剣を持ち直し、魔法と剣撃をかいくぐりながら男を切り刻んだ。だが相手はすぐに再生をおこない、元に戻っていた。
しかし俺は攻撃をやめなかった。手を斬り落とし、足を斬り落とし、時には首をと休むことなく斬り続けた。
戦闘開始から30分ほどの経過した。両方はいまだに凄まじい攻防を続けていた。2人の周りの地面はえぐれ、所々に焦げ跡が残っていた。すでに原形をとどめていなかった。
「なんど斬り続けようが意味がないのですよ。この再生能力は生まれ持った力なのです。そろそろ諦めてはどうですか?」
「.........もういい、分かった、終わらせる。」
「やっと諦める気になったのですか。でも私にここまでさせたのです。どうあがいてもあなたは殺しますよ。」
俺はゴルゾフさんの剣を捨て、力を抜きその場に止まった。襲いかかってくる魔法は無力化し続けていた。そして止まっている俺に向かって、男が顔をにやけさせながら首を斬り落とそうと近づいてきた。
その瞬間、俺は近づいてきた男に反応不可能な速度で貫手を使用し、五ヶ所を貫いた。その瞬間、魔法が止まり男が膝をついた。
「は?な、なんで、なんでお前がこのことを.........」
「難しいことじゃねえし確信もなかった。お前を最初に斬ったとき、その斬り口から血が出てた。でも次に斬った時は血が出てなかった。そしてお前の体を斬り続けて、血が出てくるとこを探してその場所を斬るたびに、お前の動きが鈍くなっているのに気づいた。そこで思ったんだ、その血が出る場所が弱点なんじゃないかってな。あとはこのザマだ。」
男が地面にうつ伏せに倒れた。あらためて訓練場を見渡してみると無数のクレーターができていた。
俺は男に近づいていった。男の顔を覗き込もうとした時、後ろから神崎の叫ぶ声が聞こえた。
「小山くん!その男から離れて!」
その声が聞こえた瞬間、俺は男のにやけた顔が目に入った。すると前にも感じたことがあるような違和感を感じた。
そして気づいた時には、俺は男と共に森の中にいた。




