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襲来


 次の日、俺たちは朝食の時に今後どうするかを確認しあった。結果、戦いに参加したくない人もとりあえず魔法とスキルの訓練は受けるという形になった。

 その後は皆、訓練場に行って魔力総量を調べるらしい。そして俺は、1人だけ別の広い部屋に連れていかれた。そこはいつも近接戦などの練習で使われる部屋で様々な武器が置いてあった。



「お待ちしておりました、リュウ様。私はゴルゾフと申します。王の側近騎士に任命されております。」



 するとそこには、鎧を着て腰に剣をさげている30代ぐらいのおっさんがいた。まさに騎士という格好だった。

 


「ゴルゾフさんですね。よろしくお願いします。」


「リュウ様。そんなにかしこまらないでください。王の側近騎士とはいえ、私は平民の出でございます。」



 名字を言わなかったのは平民だからだったのか。この世界では平民は名字を持たないんだな。別に平民とか関係ないが、本人がそう言ってるんだしすこし軽めに話すか。



「ゴルゾフさんって平民なんですね。でも王の側近騎士に任命されるなんて、相当実力があるんですね。」


「............リュウ様、単刀直入に申します。おそらく私の見立てではリュウ様は、他の勇者様とは違いますね?」



 へぇ、この人見ただけで分かるのか。いい目をしてるな。



「どのくらい違うと思います?」


「こう言ってはなんですが、格が違うかと。」


「ふ〜ん、それで俺とやるんですか?」



 そう言いながら俺は壁に掛けてあった剣を手に取った。訓練用の剣か、いいのを使ってるな。



「話が早くて助かります。是非、私と立ち会っていただきたい。こちらはスキルと魔法を一切使用しません。リュウ様は使っていただいて結構です。」


「いいですよ。でも、俺も使いませんよ。というか、まず魔法は使えません。そして持っているスキル【無力化】Lv.1だけです。そちらが使わないと意味ないんですよ。」


「そうなのですか、情報不足で申し訳ございません。」


「だからと言って...............手加減は無用ですよ。」



 そう言って俺はゴルゾフさんに向かって左手の片手で剣を構え殺気をとばした。



「っ!.........まさかこれほどとは。甘く見ていました。」



 ゴルゾフさんは剣を抜き俺に向けて構えた。



「いつでも始めていいですよ。」


「承知しました。」



 俺たちはしばらくお互いを見ていたが、先にゴルゾフさんが動いた。

 ゴルゾフさんあっという間に間合いを詰めてきた。そして俺の首に向かって、剣を斬りつけてきた。俺はその動作を一部始終見逃すことはなかった。

 俺はそれを弾いた。ゴルゾフさんはまたすぐに斬り返してきた。俺とゴルゾフさんで凄まじい剣撃が繰り返されていた。


 キンッ!キンッ!


 数分間の剣撃がおこなわれた後、ゴルゾフさんがいったん距離を取った。



「いやはや思っていた以上です。まさか片手剣の使い手でしたとは。」


「ゴルゾフさんもそうとう鍛えられたことがわかりますよ。でも次で終わらせますよ。」


「望むところです。」



 ゴルゾフさんは俺に向かってすごい速さで迫ってきた。そして俺は迫ってくるゴルゾフさんに向かって剣を投げた。ゴルゾフさんは驚いていたが、飛んできた剣を弾いて俺に斬りかかってきた。

 だが剣は俺に当たることなく止まっていた。ゴルゾフさんが止めたのではなかった。俺が左手の中指と人差し指で剣を掴んで止めていた。そして動きの止まっていたゴルゾフさんのボディを瞬時に殴った。



「グハッ!ゴホッ、ゴホッ」



 ゴルゾフさんは剣を落とし、そのまま地面に伏せた。俺はその剣を拾い、ゴルゾフさんの首につきつけた。



「ぐぅ、さ、さすがですね。これほどの差があるとは。私もまだまだですね。」


「久しぶりに、いい戦いができましたよ。ありがとうございました。」


 

 ゴルゾフさんには悪いけどスキルと魔法を使ってもらえばよかったなと、俺はそう思っていた。







 俺はすこし休憩した後、ゴルゾフさんに俺の魔力の使い道を聞いてみた。



「ゴルゾフさん、なんか俺って魔力総量がとてつもなく多いみたいなんですよ。魔術師の方がこんな人間見たことないって言ってました。なんか有効活用できないですか?」


「へぇ魔術師がですか。そうですねよくある感じですと、【魔力授受】Lv2 のスキルを持っている方にリュウ様が魔力操作で魔力を与えるという方法がありますよ。」


「なるほど、そのような方法があったんですね。」


「えぇ、勇者召喚魔法もその方法でエリス様に魔力を供給していたらしいですよ。」


「勇者召喚には魔力を多く使うのですか?」


「私も詳しくは知りませんが...............実は勇者召喚の日、エリス様が突然部屋からいなくなられたのです。私たちはそれを知りエリス様を探しました。すると侍女の1人が、召喚の魔法陣が描かれている部屋の方にエリス様が向かうのを見かけたのです。私たちは、もしやと思いエリス様の後を追いました。しかし部屋に着いた時には、勇者召喚が始まっていました。止めようとしたのですが、魔術師たちが強力な魔道具を使用し結界を何重にも張っており入ることができませんでした。それから12時間後に、勇者様達が召喚されました。」


「えっ12時間?王女様は12時間もずっとあの場所にいたんですか?」


「えぇ召喚をおこなった後、エリス様は謁見の前までずっと寝込んでおられました。」


「.........王女様は強い人ですね。」


「私なんかとても敵いませんよ。」



 俺は魔法を使えないが、きっと12時間寝ずに魔法を使い続けることは相当キツイのだろう。そんなキツイ思いをしてまでこの国を思い、勇者召喚をしたのか。

 

 それとすっかり忘れていたが、学校のホームルームの時の違和感の正体がわかったような気がした。あの時は午後4時だった。そして召喚されたのが翌日の午前4時だった。ちょうど12時間だ。ホームルームの時からきっと召喚が始まっていたのだろう。そう思うとなんかスッキリした。



「とりあえず、俺は魔力操作ができるようになりたいですね。」


「それでしたら、私もできますのでお教えしますよ。」



 ドォォォォン!



 そう言って教えてもらおうとした時、訓練場の方から大きな音が聞こえた。俺とゴルゾフさんは頷きあって、急いで訓練場の方に向かった。

 俺は道がわからなかったのでゴルゾフさんについていった。訓練場の場所は先ほどの部屋から遠く着くのに5分ほどかかった。




 俺たちが訓練場に着いた時に見たのは、隅の方で固まっているクラスメイト達と地面に横たわっている騎士達、そして長い金髪の紅い目をした長身の男がエリス王女の首を締め上げているところだった。

 

 その瞬間、俺の体は勝手に動いていた。ゴルゾフさんの剣を抜き、瞬時に男の懐に入った。

 そして王女様の首を掴んでいた方の腕を肩から斬り落とし、そのまま男の心臓の位置に剣を刺して、全力で蹴り飛ばした。

 男は訓練場の壁を全て突き破り外にとびだしていった。

 俺は倒れてくる王女様を支えて、首から男の腕をとって投げ捨てた。



「うっ、ごほっ、げほっ、はぁはぁ」


「よく頑張ったな。偉いぞ。」



 俺はそう言って、彼女の頭を撫でた。



「ぁぁ、勇者様、ありがとうございます。」



 彼女は目に涙をためてそう言った。彼女は自分の命にかえても勇者達、俺のクラスメイトたちと先生を守ろうとしていた。

 俺はそんな優しく強い彼女をひどい目に合わせた奴を許すつもりはなかった。






 俺は、まだ生きているであろう男がとんでいったほうに目を向けた。




 



 

 


 







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