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どうやら、「まだ」プロローグは終わらないらしい

「“これ”は、俺とあずみだ。それは“事実”だ。」


柏田はあずみの顔を目で確認しては、僕に話してきた。あずみは「私は“何も”口出ししません」と言いたげに、背もたれに寄りかかりながら目を閉じて、両手で飲み物を口にしている。


「、、でだ。俺は“この”写真を見て“違和感”があった。まさに“ここだ”。」


写真に写る二人を指して「わかるか?」と言ってきた。僕は「柏田とあずみなんだろ?」と、見たままの言葉をついては、写真を見ている。


「そうじゃねぇ。“この日”俺たちが行った場所は、この“ビル”じゃねぇーんだ。お前も“ここ”の場所は、知ってるだろ?」


柏田は「わかるよな」と目で問いかけてはもう一枚写真を取り出した。


「んで、この写真だ。同じ“構図”になるように探して撮ってきた」


柏田の出す写真は、紛うことなき同じ“構図”の写真だ。一見しただけでは、あまり“違い”がわからない。ただそこに“二人”がいるかいないかの違いだけだった。


「それで、“何”が言いたいんだ?」


その写真を見ながら、僕は柏田に向けて問いかけた。柏田は「まあ、待て」と二つの写真を片手づつ掴んで、僕ら二人に見せるように掴み吊るした。あずみは、あまり見たくないような顔をしては、小さくため息をついている。


「この写真、、、“どこ”で撮ったかわかるか?」


柏田は写真をヒラヒラと揺らしながら目だけを動かし、僕を見ては問いかけた。あずみは顔を左右に振っては黙っている。


「。。。あっ」


僕は“そこ”に見覚えがあった。“あの日”僕が二人を見た場所。二人を見つけて追おうとした場所なことに思い出した。


「知ってるだろ?“そこ”だ」


柏田は僕の不意に出た声と、“何か”を思い出したような顔を見ては確証を得たように話を続けた。


「お前も、もうわかってるとは思うけど、これは“メガネ”様のとこだ」


そう言葉をはくと、柏田は手に掴む写真をテーブルに戻し、目を閉じて口を横に結んではゆっくりと呼吸整えた。あずみは僕と柏田の二人の顔を見ては、何も言わずにその状況を見つめている。


「それでよ、俺たちは“ここ”にはいた。だが、“ここ”には入ってねぇーんだ。むしろ“ここ”には“これ”は、ねぇーんだ」


柏田は、ファックスの写真に写る“ビル”を指しては、自分で撮った写真の同じ場所を指した。


「うん。そこには“無い”よな」


僕は指し示す柏田の言う場所を見ては言葉をはいた。確かに、そこにはビルはあるが“そのて”のビルは無い。


「加工したってことだよな?」


僕は柏田の顔を見ては言葉をだし、柏田は「そうだ」と、一度頷いては声にだした。


「それでだ。“誰”が撮ったのか。“何のため”に送ったのか。なんだが、、」

「。。。それもわかってるのか?」

「いや、まだそこまではわかってはいねぇーけど、、、」

「、、そっか」

「けどな、、それと、、、」

「。。。。ねー。けんちゃん?」


小難しい話をする僕ら二人にあずみが割って声を入れてきた。


「あ?なんだ?」


柏田は話を止めて、あずみに対して“いつも”と同じ口調であずみに返した。


「あのさ、私帰っても平気かな?」

「あ?どうした?まぁ、帰るなら帰るでいいんだけどよ、」

「私がいてもさ。。それに、“言いづらい”こともあるじゃない?だがらね。。。」


あずみは“何か”を知っているような言葉をはいては帰るような仕草をはじめた。柏田は「まあな」と、あずみと同じように“何か”を言いたげに含み顔をしては僕の方に顔を向けた。僕はそんな“二人”のやり取りを見ては「なら、“また”次にでも」と、今日は“お開き”にしようと、テーブルに手をついて二人の顔を見渡した。


「、、あー、そうだな。そうするか」


柏田は眉間にシワを寄せて、少し考える素振りをしては言葉を返し、「なら、金払ってくるわ」と席をたってカウンター横のレジに足を運んだ。


「なんかごめんね」


僕は謝るようにあずみに言葉をかけた。


「んーん。私は平気。私の方こそごめんね。ただ、けんちゃんから少し“聞いてる”から、なんかね。。。」

「、、そっか。。。それに“二人”ともある意味“被害者”だもんね」

「。。。」

「おいおい、それはねーだろ?“被害者”ってのはよ?俺はまだしも“あずみ”は違うだろ?」


会計を済ませた柏田が財布をしまいながら会話に入ってきた。


「ごめんごめん。言い方が悪かったよ」

「ったくよ。、、で、あずみどうする?乗ってくか?」


柏田は車の鍵を見せてはあずみに問いかけた。あずみは「いいよー」と断るように顔を横に振っては、僕の方を見てきた。


「いいんじゃない?送ってもらっちゃいなよ。」

「うーん。。。でも」


僕はあずみに優しく“甘え”ちゃえばと、柏田を見ては軽く笑みを作りあずみに言った。あずみは迷う顔をしては、鞄を手に膝の上に置いている。


「どうすんだ?乗ってくなら行くぞ」


柏田は鍵を手に掴みながら、テーブルに置いてある写真の“紙”をしまおうと手をかけた。僕はその仕草を見ては右手で“紙”を押さえては柏田に声をかけた


「あっ、柏田。この“写真”もらっていいか?」

「ん?あーいいけど、どうした?」

「んー、別に“これ”と言っては別にないんどけど、なんとなくさ」

「あ?なんだそれ、、まぁ、いいけどよ、ほらよ」

「はは、ありがとう」


柏田は取る手を離し、「持ってけよ」と手で差し出すように空を切った。僕はその二枚の“紙を”手に取り、四つ折にたたむように折ってはポケットにしまった。


「んで、どーすんだ?」

「そうだよ。あずみ?この際送ってもらいなよ。また“話す”なら、いつでもできるし」

「う、うん。。。。わかった。送ってもらう」

「うん。それがいいよ。もし、“何か”あったら、連絡してくれればさ」

「うん。ありがと。。」

「そんじゃよ、また連絡するわ、お前も何かあったら、言えよな?“隠す”んじゃねーぞ?」

「あはは、それは言うなよ」

「今日は、ごめんね。ありがと」

「うん。あずみもね」


柏田は「またな」と言っては店の外へと出ていった。あずみは柏田の後を追うように席をたって歩き出した。


「あ、そうだ。今日はありがと。また“ご飯”でも行こ?」


あずみは帰る足を止めて、僕の耳元でささやいては優しい笑みをしながら胸元でバイバイするように手を小さく振っている。僕は「うん。また今度ね」と、返事をしてはあずみに手を振り返した。


店の外で柏田は通路を見ては鍵を弄ぶように右手でクルクルと回している。


あずみと二人での会話に柏田が入ってきて、思いもよらない展開に自分自身変な“感覚”になっていた。柏田とあずみの関係に何となく“羨ましさ”のような感情に自分自身戸惑いすら感じていた。朝聞いた“出会いがしらに、思わぬ落とし穴?想いは君に”その言葉を思い出しては思わず苦笑いがでた。


「。。“想いは君に”ってなんだよ。。。まぁ色々とあるよなぁ」


僕は“今”起こる疑問をよそに、動き出す“時間”に悩みはつきないなと、何も“わからない”状況にため息をついた。「ま、明日からまた“始まる”か」と、明日からのことを考えては店をあとにした。


夕時の駅は、帰る人並みで溢れている。


僕はその日そのまま家に戻り一通のメールをしては、床についた。


「遅れてすいません。貸しレンタル店の件でのご連絡ありがとうございます。お礼を兼ねてのお誘いありがとうございます。“時間”が合いましたらその時にでも。では、失礼します」


社交辞令のような文面を入れては、“失礼の無い”ように言葉を繋げた。


“思い出と言う初恋”にするのにはまだ時間がかかる。けど思い出にする“だけ”にはしたくはない。今の自分を支えていける“想い出”にしたかった。ただ、“今”出会う人達と居れば、そう“時間”はかからなそうな気がした。

その日見た夢は、知り合う“全て”の人が笑って踊っていた。自分の中の“感情”がどうなっているのかはわからないけども。。。




小鳥のさえずりが朝日と共に起こしてくる。セットしたはずの目覚まし時計は音もなく秒針が止まっている。


「ん?。。。何時なんだ?」


眠気眼に閉じようとする目を開いては、右手でテレビのリモコンをさわりテレビをつけた。


「、、、ございます。今は朝の五時。これから出かける方も、お帰りになる方も、おはようござ、、、」


アナウンサー達が一列に並びお辞儀をしている。


「五時?。。。まだはやいな」


テレビをそのままに、起こす体を布団の中に戻し入れた。


「んー、、、はぁーあっと」


額の上に右腕を乗せ、あくびと共に背中をそらすように体を伸ばした。


「。。。。」


体を横に向けては枕を置き直し、光を放つテレビに目を向けてはボーッと眺めている。


「そうですね。人としてダメなんでしょうけど、そうなってしまうのも人ですからねぇ。。」


テレビの中で、“良く”も“悪く”もコメンテーターが“自分のモノサシ”を合わせて話している。


「。。。人それぞれの“カチ”が違うからねぇ」


朝から小難しい話題に目覚めぬ頭で切り返しては、テレビに一人言を呟いた。

横に向ける体を仰向けに一つ寝返りをうち、深く目を閉じては頭に“あの写真”が浮かんでくる。


「柏田とあずみ。あずみと柏田。。。なんで“あそこ”にいたんだろ。本当は二人って、、、、のかなぁ。。。」


柏田とあずみは幼馴染みで、一定の時間を共にしていた。一時離れていたとしても、互いに“知っている”仲だ。何かの本で、「“幼少期”の異性が後々の好みになる」って書いてあったのを思い出した。


「いや、、でもな。。。」


あながち“ウソ”とも言い切れないのは確かだ。僕自身、好きになる“タイプ”は、ほとんど同じで、それが“彼氏彼女”の関係にならないとしても、“好きかも”と思う好みは、皆同じだった。


「。。。あずみは、結婚していた。けど、自分の“好き”とは関係ないし、ましてや感情を“無くして”いたんだ。。。なら、“今”のあずみだとしたら。。。“好き”になるのって、、」


考えたくない方へ、方へと僕の頭は向かっていく。自分でも思ってもいない方へと頭は働いていく。


「いや違う。絶対に違う。好きとか嫌いとかあるかもしれないけど、“付き合って”なんかいない」


目を閉じ仰向けになりながら、枕に押し付けるように頭を横に振っては、自分に言い聞かせるように心に叫んだ。


「違う。違う違う違う違う。」


あずみに対して“好き”という感情が僕の心を動かしているような感覚に、僕自身良くわからないでいる。“それ”は今まで“ジェシー”にしか向けていなかった“想い”に、自分自身“フタ”をしている感じだった。


「二人は絶対に“違う”」


僕は言葉と共に勢い良く体を起こし、家の外に響いているんじゃないかと思えるぐらいの声を出した。


「。。。。はっ」


僕は自分の声の大きさに我を戻し、誰もいない空間で誰かに見られているような気さえ感じて、恥ずかしくも顔を赤らめた。


「、、、なに言ってんだよ。。。」


僕は体から布団をはがし、膝をたてては手を畳に支え起こすように体を持ち上げた。僕は「はー」と声に出してため息をつき、ちゃぶ台の前にある座椅子に腰をおろした。


「腰のツボはここです。痛いですか?」


目の前のテレビでは男性アナウンサーが横たわり、女性アナウンサーが整体師の先生に聞きながら“体”を突いている。


「これ、女性にやられると色々な意味で“やられ”ますよ」


男性アナウンサーは、よかれと思った言葉に女性アナウンサーは“ひいて”いる。整体師の先生は苦笑いを浮かべては、「ここも効きますよ」と横たわる体をさわっては、男性アナウンサーは苦悶の表情をして、顔を真っ赤に堪えていた。


「。。。あずみだってそうだけど、、柏田だって、どう“思って”るのかわからないし、、、いくらなんでも“それ”はない、、、よ。。。」


気が動転しているのが自分でもわかるぐらい“動悸”が早くなっている。なにも二人に聞いた訳でもないのに、自己勝手に思いを駆け巡らせている。


「なんだよこれ。。。これじゃ二人に、柏田に“嫉妬”してるみたいじゃないか」


恋を失い恋を見つけた、フタをした心に思いが溢れ出してくる。初めて恋したジェシーの気持ちに、拍車をかけて同じ思いが動き出してくる。


「人を“好き”になるってこんなんだったっけか?」


忘れかけてた恋する気持ちに、ジェシーと“別れ”て、今一度終う“思い”が、また“生まれ”始める。


僕は行き詰まる心を内に、“ハッキリ”と答えのないまま仕事の支度をし始めた。

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