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どうやら、「まだ」プロローグは終わらないらしい

僕はそのまま眠りにつき、目が覚めると座椅子から転がり落ちていた。下半身を仰向けに上体を捻るように座椅子を抱き抱えていた。僕は口から垂れるよだれをすするように手の甲で拭い、眠気眼に目覚まし時計に目をやった。


「まだ、、、そんな時間か、、、」


外はまだ暗く夜明け前の静けさに包まれている。僕は“まだ”眠れるかとまた同じような姿勢になってはウトウトと夢の中へと戻っていった。


浅い呼吸にゆらゆらと、頭の中で“現実”を整理するように妄想が始まる。今日見たこと、最近あったこと、はたまた前に感じたこと、一つ一つ違う形になっては夢の中で物語が作られていく。夢の見方は心を写す映写機のようなもの。無意識に感じる思いに、複雑な心境。幾度となく変化する環境に、心理がとなえてくる。楽しかったり悲しかったり、夢で感じる感情は、自分自身の本音の部分。けど、それは“そのまま”受けとるのかはわからない。整理される自分の本音。夢か真か現実か。夢うつつな物語は、だいたいが全て忘れてしまう。


寝ているのか起きているのかわからない浅い意識の中で、家の前に誰かがいるような音が聞こえてくる。一人で何かを呟いているのか、誰かと話をしているのか。うっすらと聞こえる話し声に、歩く音が合わさってくる。新聞配達の人かなと予想をしては、バイクの走り行く音が聞こえてきた。その聞こえる音に安心しては、頬を緩ませ体を寝返りさせてはゆっくりと体を伸ばし、あくびをしながら上体を起こした。垂れる瞼を擦りながら口をモゴモゴと動かしては、軽く息をはいた。


「。。。。。」


寝起きの頭にボーッとしては、また眠りに落ちそうになる。後ろに倒れそうになる体を手で支えては、目を瞑り顔を横に振っては眉毛を上げて瞬きを繰り返す。


一度強く目をつむり息を吸っては、吐きながら目を開いていく。ちゃぶ台の横に転がる鞄に手をやっては、鞄の中身を整理した。


仕事で使うファイルに付箋のついたノート。それに柏田からもらった“写真”の用紙。僕はその用紙を見ては、柏田のことを考えた。


柏田とはであっても、まだ何年も経ってはいない。中途で一緒に入社したというだけで、ここまで近くなるとは思ってもいなかった。配属された部署も違った。けど、いつの間にか話すようになった。そして、“あずみ”という女性によってまた近くなっていった。だけど、未だに柏田のことは、あまり知らない。


「意味わからないよな、、」


“撮られた”写真を見ては加工された写真を見比べては、ちゃぶ台の上に紙を置き座椅子の背もたれに倒れ込むように背中をつけた。天井を眺めてはため息をはく。天井を眺めながら“何も”答えのない意味のないことを考えては一つ肩で息をはいては、仕事の準備をはじめた。


顔を洗い服を着替え、鞄の中を整理しては仕事場へ家をでた。


行き交う道で女子高生が恋ばなに手を叩いては、自転車に乗ったサラリーマンが走り去っていく。


「恋ばなか。あずみに告白してしまったけど、、、よし乃にも、きちんと言わなきゃだよなぁ」


よし乃からは“好き”と、言われてから何も聞いては来ない。言うタイミングも聞くタイミングも何回もあったにもかかわらず、“その事”に関しては何も進んでもいない。ただ、“アピール”という点では“噂”通りにくることはある。けど、それを僕はよくわかってはいなかった。昔から“鈍感”なほど“モテた”経験がなかったからだ。


電車に乗り仕事場への最寄り駅で改札を通り、仕事場へと歩いていく。


仕事場につくと仕事部屋の方から騒がしい声が聞こえてくる。僕は声のする方へ顔を向けてはタイムカードに手をかけた。


「何で?何でこうなってるのぉ?」

「誰がやったの?」


早く来ていた人達が、輪を成して一画を取り囲んでいる。


「可哀想」

「誰の仕業」

「酷いや」


囲む人達は周りの人と指を差したり、口を押さえたりしながら、何かを見ては声を出している。僕はタイムカードを押しては騒ぐ輪の方に足を向けた。


「おはよ。何か合ったの?」


僕は近くの同じ部署仲間に声をかけた。


「うん?いやね、“あれ”だよ」


そう言っては僕の席の方に指を差しては肩を並べてきた。


「どうかしたんですか?」


聞いているそばから、あずみが後ろから僕の隣に来ては話しかけるように覗き、同僚の指で差す方向に顔を向けた。


「えっ何?どうしたの?」


あずみは声とともに足を動かし僕よりも先に集まる方へと歩いていった。僕はそのあとを追うように歩いていった。


「もう、いやですぅ」


人の集まる奥でよし乃の声がきこえてくる。


「よしよし?」

「だよね?」


僕は集まる人を押し退けては体を入れた。あずみはよし乃の方へと歩みを進めてはよし乃の机の上を見ては声をだした。


「え?何これ。。どうゆうこと?」

「あ、あずみさん。。。私が“何”したっていうんですかぁ?もう嫌ですぅ」


よし乃はあずみを見ては、肩を丸め泣きつくようにあずみに抱きついた。あずみはよし乃の頭を擦るように撫でては机の上を見つめている。


パソコンのモニターは倒され、無惨にも引きちぎられたよし乃の仕事用バックが散乱し、その上に“ビッチ”“しりがる”と書かれた“紙”が置いてあった。


「誰だよ。。。」


僕はその現状を目にしては呟くことしかできなかった。


「なんで?いったい誰が?」


今までの事を踏まえてもよし乃が“何か”されるような人間ではない。僕が知る限りでは“される”ような女性ではない。ましてや、何だかんだ“キャラたち”していて、人当たりも良い方だと思う。


「うん。。とりあえずこのままだと、、、」


僕は鞄を置いて、そのままにされる机を見てはよし乃の席の方へ周り、倒れるモニターを起こしては散らかる机の上を片付始めた。集まる人達は「誰が?」「どうしたの?」「可哀想」と他人事のように話をしては、その場を見つめている。


「皆さん。大丈夫です。そろそろ時間ですから、席に着いて仕事の準備をしてください」


あずみはよし乃を抱くように支えては、集まる人達に声をかけては席につくように促した。


「よしよし?大丈夫?」

「、、、はい」


あずみはよし乃の顔を覗き込むように声をかけては体を離し、しゃがみ込むように目線を合わせた。


僕はよし乃の机を整理してはあずみに声をかけて、自分の席に戻っていった。


「なあ、いったい誰がやったんだよな?」


席に着くと近藤が椅子ごと近くまで来ては背中を見せて話しかけてきた。僕は「さあ。。。」と顔を振っては、よし乃を支えながら歩くあずみを目で追いかけた。


「なぁ、お前としてはやっぱ気になるだろ?」


近藤はデリカシーのない事を口ずさんできた。近藤としては悪気はなく、思った事を聞いてきただけなのだろうが、その“言い方”に僕は無償にも腹がたった。


「ふざけてるのか?人が“こんな”ことされて心配に、、気にならない“やつ”なんていないだろ?」


僕は近藤に言い返した。近藤の顔を見ずに言い返した。顔を見たらもっと言ってしまいそうな気がした。近藤は「そうゆう意味じゃねーんだけどさ」と呟いては自分の席に戻っていった。


僕は体をくの時に前屈みに顔を下げては、鼻で深く深呼吸をしては、「落ち着け」と自分に言い聞かせた。


僕は昔から“イジメ”や“差別”と言ったモノが嫌でしょうがなかった。それが誰であろうとも。人の弱味に漬け込んで上から叩くやり方。陰でこそこそと陰湿なやり方。どんな感情であれ、“気になる”なら、やり方がある。確かに、反抗したり反発したりと“正義”を振りかざすのも“得意”ではないけど、“それ”さえなくしてしまったら“誰が”守ることができるんだろうと、僕は“怖い”からこそ、声を出そうと心がけてきた。


「あ、ありがとうね」


あずみが席に戻ってきては僕に言ってきた。僕は“落ち着かせる”心にあずみに問いかけた。


「よし乃は、大丈夫?」

「うん。今は休憩所で少し休んでるけど、今日は早退したらって、、、ね」

「そっか。。。」


あずみは悲しそうな“目”を下げてはいつも通りに仕事を始めた。僕はいてもたってもいられない“気持ち”に唇を噛んではパソコンに体を向けては仕事にとりかかった。


「あの、あずみさん。ありがとうございました。それであの、、」


よし乃は休憩所から戻ってきてはかずっさんに話をし、あずみに“早退”することをつげにきた。あずみは仕事をする手を止めて、体ごとよし乃に向けてはよし乃の体をさわり「大丈夫?」と声をかけていた。僕はその二人を横目に仕事をする手を握り“心配”する気持ちを抑えていた。


「それでは、すみませんが早退させていただきます。すみません。。。」


よし乃は声のトーンを小さく、耳を赤く無理をしては笑顔に振る舞った。目には力もなく悲しみが際立っていた。


「うん。。。気を付けてね」


あずみはよし乃に言葉を返すと指で頬を掻くように顔に近づけては何かを考えるように目をとじている。


よし乃は頭を下げては背中を丸め頭を落としては静かに仕事場をあとにした。


僕はそんなよし乃を目にしては、“何も”できない自分に悔しさが込み上げてくる。


「あ、あのさ、、、」

「そうだ。“あれ”がなかったんだ、、どうしよ?」


僕はあずみに声をかけると同時にあずみが手を叩いて悩む“素振り”をしては僕の顔を覗いてきた。


「え?なに」


僕はあずみの顔を見ては首を傾げた。あずみは、「そうそう」と言っては“紙”に何かを書いて僕に伝えてきた。


「それ、もう“足りない”から、買ってきてもらえますか?」

「えっ?」


僕は差し出される紙を手にしては書かれてるモノに目をやった。


-送っていってー


あずみは笑顔に笑みを作っては、“すいません”とお願いしてきた。僕は一瞬“何が”どうなのかわからなく、頭が真っ白になった。


「そこに書いてあるのですが、“買ってきて”もらえますか?すいません」


あずみはもう一度“確認”するように紙を指差しては伝えてきた。僕は「あ、はい」と紙をポケットにしまっては、「ありがと」とあずみに声を出さずに答えては、かずっさんに断りを入れてよし乃のあとを追った。


仕事場をでて、よし乃歩いているであろう道を探すように走っていった。タクシーを使っているのかも知れないと思っては、“心配”する心に足を動かした。


「なんで、よし乃が?なんでだ?誰なんだ?」


何かをされるってことは、何かをしたってことになる。それが些細なことであっても相手にとっては重大なことにもなり得ることだってありえる。本人が“どんな心理であろうと相手にとっては“脅威”にうつるときだってある。よし乃が、“どちら側”であろうとも、やられたことには間違いはない。本人が“自分”で“演出”しない限りどっちかでしかない。


「あ、よし乃ー よし乃ー」


駅前の通りに繋がる交差点でよし乃を見つけた。僕は少しホッとしては、走る足を動かした。


「うん。ありがとう。。心配かけてごめんね。。」


交差点で待つよし乃を見つけては近くまで行くと、よし乃は誰かと電話をしているみたいだった。“あれだけ”のことがあったのだから、親や誰かに話をしていても不思議ではない。僕は電話が終わるまで声をかけるのをやめようと、肩で息をする呼吸を整えるように胸を手に深呼吸を繰り返した。


「うん。そうなの。もしかしたら、、、

かもしれない。まだわからないけど、、」


よし乃は僕が聞いているとは知らずに話を続けている。

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