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ほほう。。。

山下は僕に目配りをしては、横に席座るよし乃を見ては驚いた。以前僕の席の前で一度二人は会っている。「前に会ったっスよね?」と山下は指を差してはよし乃に声をかけた。よし乃は「はい?」と頬に手を添えては「会いましたっけ?」と聞き返した。山下は差す指を下ろし「やっぱそっスよねー」と忘れられていることに目を細め「これからお願いしやっス」と軽く頭を下げた。よし乃は少し後ろに下がっては、「お願いしますぅ」とひきつる頬をあげて挨拶をした。


壁に掛かる時計の針が就業時間を差し、各者一斉に仕事にとりかかった。


「あ、さーせん。ここ教えてもらっていいっスか?」

「お?あーそれは、、、」


山下は席につき、新しく“始まる”仕事に質問しながら腕捲りにやり始めた。よし乃も“移動組”として、慣れない仕事にあたふたと思考を巡らせては覚束ない手つきで打ち込み始めた。


「これって大変ですよねぇ 私が“やってた”のって何だったのってかんじですよぉ」

「自分も同じっス ワケわかんないッスよ?」


山下はデータ処理の書類作成に頭をこじらせ、よし乃は“やり方”を理解するのに苦労している。


「大丈夫ですよー 慣れてきますから」


あずみは二人を見ては落ち着くように声をかけ励ました。近藤はパソコンに打ち込みながらソワソワと“心ここに無し”とカメラを気にしては仕事に取り組んでいる。


「、、、ふぅ」


周りの状況を見てはため息がでる。僕は一度連なる席に目を泳がせては口を一文字に、背中を反るように肩を開いた。「はぁ」と、漏らすように声をだし、首を回してはまた仕事に戻っていく。


「どうかしたんですかぁ?」


よし乃は僕の顔を見ては問いかけてきた。僕は微かに聞こえる声に反応するように顔をあげて返事をした。


「ん?なに?どうしたの?」

「“さっき”からため息ばかりついているみたいですけど、大丈夫ですかぁ?」

「えっ?そう?。。。そうだっけ?」


僕は誤魔化すように苦笑いをした。


「そっスよ なんかあったんスか?」


山下も同調するように声にした。あずみは聞こえない素振りをしては仕事に集中している。


「えっ?そんなに、、かな」


山下とよし乃の言葉に返す言葉が出てこなかった。そんな僕を隣で見ていた近藤が“いやらしい”顔つきで話す会話に “茶茶”をいれてきた。


「まぁまぁ、仕方ないんじゃないの? だってなぁー、、、ムフフフフ」


近藤はよし乃の顔を見ては肘で僕の体をつつき顔をにやつかせている。


「それって、どういう意味ッスか?なんなんスかそれ?」

「えー だってなぁー。。って“お前”知らないの?」


近藤は山下に“噂”なるモノを知らないのかと、半分驚いた表情をしては身を乗り出し、パソコン上に顔を覗かせ左手を口に右手で山下を手招きしては耳打ちするように体を傾けた。僕は「余計なことを、、、」と言いながら近藤の服を掴み椅子に戻そうと体を浮かした。


「コホン。。。えーと、、そろそろ“仕事”にとりかかってくださいねー」


そんな状況を見ては、あずみが優しく口元を緩め注意してきた。微かに瞑る目には力が込もっている。


「すいません」

「さっす」


近藤は山下に「後でな」と肩をすくめ口を横に耳元で伝えては、白い歯を見せた。山下は「あっス」と目を開き軽く顔を縦に揺らした。二人は、共にあずみを見ては謝った。僕は近藤に「ほらみろ。。」と被害者面をしては、隣に座るあずみに「ごめんなさい」と謝った。 あずみは小さく「まったく」と言葉をだし「あ!そうそう」と、何かを思い出すかのように書類を手にしては僕に見せてきた。


あずみは書類を前に僕の近くまで体を寄せては「ここなんですけど」と、書類に指を差した。僕は「えっなに?」とあずみを見ては指を差す書類に目をむけた。 目の前にかざす書類を持つあずみの指には一枚の“紙”がつままれている。 あずみは誰にも“知られない”ように「こことここ、それに、、、」と、まったく違うことを言いながら“紙”を指差している。僕は一瞬声に出して言いそうになる自分にブレーキをかけては話すあずみの顔を見て、もう一度“紙”に目を向けた。

よし乃は“何となく”疑うような視線を覗かせては、自分の仕事をやり始めた。


――話しあるから今日終わったら――


あずみは僕が“読む”のを確認すると僕の机の上で書類を縦にトントンと整理して自分の机に戻した。僕は「わかりました」と、業務上の返事をしてはキーボードに手をつけた。キーボードの上には、さっきの“紙”が乗っかっている。僕はその“紙”を誰にも見られないようにそっとポケットにしまっては、あたかも“仕事上の注意”を受けたように振る舞った。隣に座る近藤は鞄にしまうカメラを何度も見ては、にやついている。


いつもと同じ雰囲気の中に歪な空気が流れ込んでいる。“噂”が“噂”を呼ぶのか。真実が“噂”を作るのか。僕としては“今”置かれる状況に、手も足もでずに流れに身を寄せることしかできなかった。



「あー、終わったぁー。よっしゃ、先に帰るよー」


就業時間定刻、近藤は時間と共に席をたち、カメラの入った鞄を持っては足早に帰っていった。山下も「ふー」と、でていない額の汗を拭うように手で振り払っては「あしゃーしたー」と椅子に手をかけパソコンの電源を落とした。


「じゃ、自分も帰りまっス おつかれーしたー」


椅子を戻し“軽い”言葉を発しては山下も帰っていく。


他の席の人達も一人一人と仕事を終わらせ帰っていく。


「はー疲れましたぁ。慣れないことすると肩凝りますよねえ?」


よし乃は背もたれに寄りかかっては胸を見せるように“可愛く”体を伸ばした。


「お疲れさまでした。よしよしもやってくうちに“慣れて”くるよ」


あずみはよし乃に優しく声をかけた。よし乃は「そうなりますかねぇ?。。。よし 頑張るぞぉ」と、腕を上にあげて頬を膨らませた。


「あ、あずみさんは、まだ“帰らない”ですよねぇ?。。。。なら一緒帰りませんか?」


よし乃はあげる腕を下ろし机に手をついては前屈みに、あずみに“残る”前提の言葉を投げ掛けては、そのまま僕の方を向いて言ってきた。


あずみは「クスッ」と、手で口元を抑え鼻で笑った。


「え?うーん。。ちょっとまだ、、“やること”が残ってるから、ね、、先に帰っても大丈夫だよ うん」


僕はよし乃にやんわりと断りをいれては、パソコンに手をかけた。よし乃は体を起こし広角を下げては悲しい顔を見せてきた。


「。。。そうですかぁ。わかりました。先に帰ります。。。あ、あずみさんも“お疲れさま”でしたぁ」


よし乃はそう言葉にすると、体を前に倒してはあずみにも“挨拶”をして帰っていった。


賑やかに騒がしかった“新しい”席も帰る人達で静かになっていく。僕とあずみは残りの“仕事”を片付けるように席に座っている。


書類をラックに戻し新たに書類を作成し、その他に在庫量と照らし合わせてはカタログを手に受注書をまとめあげていく。


静かに、外の音だけが部屋をわたり、キーボードの打つ音が耳に入ってくる。


「なんかごめんね」


あずみは仕事をする手を止めてはキーボードに目をおとし話しかけてきた。僕は「何が?」と“残る”書類に手をつけては話を聞いた。


「何がって、、、昨日の、、」


あずみが話す言葉に一瞬体が反応した。


「えっ?昨日の、、、って、、

なんだっけ?」


僕はとぼけるように聞き返した。実際“気づいている”けど、“なかったこと”にと思う自分がいる。


「。。。そっか、、、ならいいんだけど」


あずみは“とぼける”僕を見ては鼻で息をし頬をあげては声にした。一つ呼吸をしては話を変えてきた。


「ところでさ、けんちゃんと話した?」

「えっ?」

「話してないなら、いいんだけど」


あずみは僕の目を見ながら聞いては、僕の言葉に「聞いてないか」と椅子を後ろにさげ、足を振るように上下に動かした。


「私ね、“正式”に別れることになったの。まだ“その日”にはなってないんけどね」


あずみは動かす足を止め、腕を上に指を絡めては天井を眺めている。僕は驚きのあまり何も“声”にすることができなかった。


「ようやく、、、だよ。やっと“答え”てくれてね。これも、“きっかけ”をもらったから、“気づかせて”もらえたから、“わかった”ことなんだけどね」


あずみは優しい笑みを作りながら“柔らかい”瞳で僕を見つめてきた。


「本当にありがと」


あずみは僕に体を向けては、頭をさげてきた。僕は“何も”することができず呆気に取られていた。


「“まだ”だけど、伝えたかったんだ。。。話は“それ”だけなんだけどね、ごめんね“のこしちゃって”」


あずみは定時で帰らずに残ってくれたことに謝りをいれては「ありがと」と“本来”の僕の“知らない”あずみの顔をのぞかせては言葉にした。


「あ、、あのさ、、“今”の話って柏田も知ってるの?」


僕は自分でも思っていないことを口にした。


「僕に話してくれたってことは柏田にも話したってことだよね?」


自分でもわからない“感情”が口を動かしている。あずみは「えっ?うん」と返事しては、話す僕の顔を見つめている。


「柏田とは幼馴染みなんだよね?それだけなんだよね?」


思いもよらない“言葉”が口をでる。頭の中での思いとはまったく違う感情が先走る。あずみは黙って頷いている。


「あのさ、、この際聞いていいかな?柏田のこと、、どう思ってるの?」


僕は口走る言葉に、止めるように頭を働かせた。けれど、一度動いた“感情”を止めることができなかった。


あずみは僕の言葉に「えっ?」と表情を固まらせた。僕はあずみの返事を聞かずに捲し立てるように言葉を列ねた。


「あ、、あの。。。昨日僕が言ってしまったこと覚えてる?、、、その、、、“目の前に”ってこと」


あずみは僕の言葉に少しずつ赤みを帯びる顔に手を当てては“昨日”のことを思い出している。僕は自分で自分じゃないような感覚に矛盾を感じながら、口は容赦なく動き始めている。


「あのさ、“今”言うべきじゃないんだろうけどさ、、何て言うか、、その、、このままだと“ダメ”な気がしてきて。。。」


僕は座る椅子から立ち上がり、あずみに体を向けて動き出す感情に止めることもせず、あずみの目を見て“気持ち”を伝えた。


「あずみ。。僕はあなたのことが“好き”でした。会った時から、気になっていました。本当なら“こういう”場所で伝えるのは“ダメ”だとわかっています。ただ、“このまま”伝えられずに“過ぎていく”のも。。。。。」


僕はあずみに“きちんと”告白をした。僕のことを“知っている”人は、「ただ単に、ジェシーの悲しみを拭いたいだけじゃない?寂しいだけでしょ?」とか、「流れに任せただけじゃない?」とか言うかもしれない。確かに“そう”なのかもしれない。けど、“約束”もしている。「“今”の“本音”を、、、」けどそれは“今”言うことじゃないのも自分でもわかっている。“間違っている ”ことぐらい知っている。けど、頭よりも感情が口を動かしていた。


あずみは「えっ?」と表情を固まらせてはいたものの、驚く素振りも恥ずかしい素振りも見せずに、僕の“言葉”を聞いていた。


「うん、、、ありがとう。凄く伝わったよ。。凄く“嬉しい”」


あずみは赤くなる顔をそのままに、微笑む優しい笑みで僕を見つめている。顔をおさえる手は膝におかれている。


「返事はし、、、」


僕は“告白”に対する“返事”を断ろうとあずみに言いかけた。あずみは僕に手をかざし「その先は“言わないで”」と顔を隠すように言ってきた。


「その、、、“返事”は待ってて。“今”の私は“答えられない”。まだ、、、、だから、それまで、、、。お願い、、、」


あずみは“今”置かれる自分の状況に“言えない”と謝ってきた。僕は「うん。。。」と声にだした。 僕としては、“返事”は必要ではなかった。“隠す”自分の心を“伝える”ことが出来た。ただ“それだけ”で十分だった。


言うことが、伝えることが、どれ程辛くどれほど“簡単” なことなのか。ただ“声”に出して言うだけのこと。けど、“それ”が一番難しいことでもある。


誰もいなくなる部屋に外からの光で影ができてくる。その影の中に微かな違和感を感じた。


「あれ?気のせいか?。。。」


影の中に“動く”影の姿が見えた。

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