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ワンダフルコネクト ~アリスとドラゴンのグレイテストロード~  作者: 稲葉トキオ
第3章 アリス・ハートランドと緋色の翼

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第80話 突撃!地下世界!

 異空間(ワールド)化した学校の裏山にて――


 山道を進んでいたアリスと閃芽は、遭遇した大型のモグラワンダー【モリモール】を退けた直後――


 地下に落っこちて別行動していた友だちのりんごから、親友の緋羽莉がさらわれたという連絡を受けたのだった。


「またさらわれるとか……キノコの王国のお姫さまかよ!」


 閃芽は頭をかきむしりながら、いらだちを隠そうともせず吐き捨てた。


 言葉づかいが荒れているあたり、相当怒っているのがわかる。


 アリスも、なかばあきれたように苦笑いを浮かべていた。


 足もとのブルーとモモも、なんとも言えない顔で見上げている。


 ――パニックに陥っていたため、りんごの話は要領を得なかった。


 だが、どうやらトンネルのような地下の道を歩いている途中で、モグラ型ワンダーの大群と遭遇。


 そのとき、緋羽莉が彼らに捕まってしまったらしい。


 話を聞いた瞬間、アリスたちはそろって「あーあ……」という気分になった。


 そして今も、あきれ半分、心配半分といったところだ。


 とはいえ、いつまでものんびりしてはいられない。


 さっきの木の怪物【トオレント】のときとはちがい、今回は"お姫さま救出ゲーム"ではない。


 緋羽莉は生命力のかたまりのような女の子だ。


 もし本当にモグラたちの巣に連れ込まれたのだとしたら……今度こそ、エサにされかねない。


 この裏山では、これまで死人が出たという記録はない。


 しかし――だからといって、絶対に安全とは言いきれない。この世に絶対はないのだから。


 それに緋羽莉は、なにかと規格外な女の子でもある。前例なんて、何度もくつがえしてしまうくらいの。


 アリスは緋羽莉のウォッチに連絡も取ってみた。しかし、応答はなかった。


 少なくとも、のんきに通話に出られる状況ではない――それだけははっきりしている。


「……で? どうするの?」


 閃芽が半目でアリスを見て、意思確認する。


 緋羽莉を助けに行くこと自体は当然だ。


 問題は――方法。どうやって地下へ行くか。


 それに、りんごも途中で拾いに行かなければならない。


 とはいえ、さすがにそのまま穴に飛び込む勇気はない。


 緋羽莉じゃあるまいし、落下の衝撃で大ケガは確実だろう。


 だが――アリスには、妙案があった。


「ひとつだけ、方法があるよ。ブルー、モモ、ついてきて」


 そう言って、パートナーたちを連れ、アリスは走り出した。


 地面のあちこちにぽっかり空いた穴を避けながら向かった先は――さっき吹き飛ばした【モリモール】が倒れている場所。


 アリスは腰のポーチから小さなスプレーを取り出すと、倒れている大きなモグラの体へシュッと吹きかけた。


 すると――ボロボロだった体のキズが、みるみるうちにふさがっていく。


 爆発で黒く縮れていた緑のアフロヘアーも、まるで植物がよみがえるように、青々としたみずみずしさを取り戻していった。


『アリス、それは……?』『キュー?』


 ブルーとモモが、目を丸くしてたずねる。


「ワンダー用の回復薬よ。でもこれ、高いやつだから、あんまり使いたくなかったんだけどね」


 ブロッサムスクエアでの冒険のときも含め、この薬を使う機会はいくらでもあった。


 けれど――緋羽莉がブルーたちの回復を引き受けてくれていた。


 そのおかげで、この薬の使用を控えられていたのだ。


 そして今――その温存していた薬が、彼女を助けるために役立つ。


 いいことをすれば、めぐりめぐって自分に返ってくる。まさにそんな例だった。


『モリ~!』


 完治とまではいかないが、じゅうぶん動き回れるほどには回復したモリモールは、両腕をぶんと上げて元気モリモリのアピールをした。


 敵意はもう感じない。それどころか、傷を治してもらったことへの感謝なのか、どこか友好的な雰囲気すら漂っている。


 もちろん、傷を負わせたのはアリスたちだ。だが、それはあくまで戦いの結果。


 このモリモールは、そのことを恨みに思っているようすはなかった。


 むしろ――緑のアフロに半分おおわれた、まんまるなひとみからは、どこか尊敬のようなまなざしさえ感じられる。


(これは……思ったより好感触かも?)


 そう感じたアリスは、思いきって話を切り出した。


「ねえ、お願いがあるんだけど。わたしのパートナーになってくれない?」


『ええっ!?』『キュー!?』


 驚きの声をあげたのは、足もとのブルーとモモだった。


 この巨大なモグラを、いきなりパートナーに迎える――たしかに、まったく予想していなかった展開だ。


 この裏山のボスをパートナーにするんじゃなかったのか? それに、金銭的な理由でパートナーは厳選するって言っていたはずでは?


 そんな疑問がブルーの頭の中をぐるぐる回る。


 だが、アリスは構わず話を続けた。


「わたしのお友だちが、地下でピンチになってるの。助けに行きたいんだけど――そのために、立派なモグラのあなたの力を貸してほしいの」


 その言葉を聞いた瞬間――ブルーは、ハッとした。


 そうだ。地中を自由に掘り進むことができるモグラに協力してもらえば、地下にいる緋羽莉とりんごを助けに行ける。


 それにモリモールは体も大きく、その強さもすでに実証済みだ。地下への救出作戦にあたって、これほど頼もしい存在はいない。


 アリスの考えが、ブルーたちにもようやく腑に落ちた。


『モリー!』


 するとモリモールは、また両腕を高く上げ、こくこくと何度もうなずいた。


 ブルーとモモにもわかる。これは――OKのサインだ。


「ありがとう! ならさっそく、あなたには緑という意味の“グリン”という名前を与える! わたしたちを地下の世界へ導いて!」


『モリー!』


 モリモール――あらためグリンは、元気よく返事をすると、その大きな背中にアリスたちが乗るよううながした。


 アリスは迷わず、がしっとその背中にしがみつく。


 ブルーも、なんだかずいぶんあっさりしたパートナー契約だなあ、と思いながら、モモの手を引いていっしょに乗った。


「閃芽ちゃん!」


 そして、成り行きを見守っていた閃芽を呼ぶ。


「オーライ! 戻って、リース!」


 閃芽は【ヒマワリス】のリースをウォッチの中へ戻し、グリンのもとへ駆け寄った。


 そのまま背中によじ登り、アリスのとなりにしがみつく。


『モリーッ!』


 ふたりと二体を背負ったグリンは、気合いじゅうぶんにおたけびをあげる。


 次の瞬間――まるで水泳の飛び込みのように、


 ざぶん!


 と勢いよく地面へ潜り込み、地下への潜行を開始した!



 ☆ ☆ ☆



 ザクザクザク……


 グリンは、まるでクロールのような動きで地面を掘り進んでいく。


 両手の長くするどいツメが、土を水のようにかき分けていくようすは圧巻だった。


 しかも、ふしぎなことに――背中に乗っているアリスたちには、土の圧力も衝撃もまったく伝わってこない。


 これぞまさに、ふしぎなチカラ(ワンダーパワー)


 おかげで、危険な穴掘りというより、地下を進むワクワクだけを楽しめていた。


『キュー!』


『モリッ!』


 ときおり、モモが背中から指示を出す。


 それに合わせて、グリンは進路を少しずつ変えていった。


 まずは、ひとり取り残されているりんごの反応を探知し、そこへ向かっているのだ。


 地下の世界では、地上ほどモモの優れた感知能力は働かない。


 どうやらぼんやりとしか位置がつかめないようだ。


 それでも、手がかりとしてはじゅうぶんだった。


 やがて――


 ボコッ!


 という音とともに、グリンはトンネルのように広がった空間へと飛び出した。


 ズシーン!


 豪快な音を立てて、地面に着地する。


「うわあっ!?」


 その瞬間、聞き覚えのある悲鳴が響いた。


 見るとそこには――


 体育座りをくずし、驚愕の表情でこちらを見ているりんごの姿があった。


「りんごちゃん!」『だいじょうぶ!?』『キュー!』


 アリスたちが、ひょっこりグリンの背中から顔を出す。


「ひゃあ!」


 りんごは、さらにもうひとつ悲鳴をあげた。


 彼女からすれば――ひとりぼっちで心細くしていたところに、突然巨大なモグラが出現。


 しかもその背中から、なぜか友だちが顔を出したのだ。


 まさに超展開である。無理もない。


 アリスはスタッとグリンの背中から飛び降り、りんごのもとへ駆け寄った。


「安心して。あの子はわたしの新しいパートナーだから。だいじょうぶだった?」


「う、うん……」


 りんごは地面にへたりこんだまま、戸惑いぎみにうなずく。


 最初は驚きのほうが大きかった。


 けれど時間がたつにつれ――


 親友がモグラをパートナーに加えてまで、自分を助けに来てくれた。


 その事実が、じんわり胸にしみてきた。


 そして――こみあげる思いが、涙となってあふれ出す。


 りんごはいきおいよく、アリスに抱きついた。


「アリスちゃん……! 緋羽莉ちゃんが……緋羽莉ちゃんがっ……!」


 鼻をすすりながら泣きじゃくる親友の背中を、アリスはそっとなでた。


「……だいじょうぶ。きっと助けてみせるから。なにがあったのか、くわしく聞かせてくれる?」


 りんごは安心したように、こくこくとうなずく。


 通話のときはパニック状態で、うまく説明できなかった出来事。


 けれど今なら、落ち着いて話せる。


 そう思いながら、りんごはぽつりと口を開いたのだった。

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