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第十三章〜剣以外の武器〜

 「ーんっ、眩しい……うわぁ~!」                                                      ガランドさんによって、盾以外の武器が完成を迎えた頃ー店の扉を開くと、城下町は真っ赤な夕焼けに照らされ、昼間とは違った顔を覗かせていた。                                                                 いつも部活帰りに見上げた夕焼けと同じ赤色の夕陽も、城下町を映し出した途端ー都会の摩天楼とは異なる幻想的な風景を浮かび上がらせるー                                                                 私は店内へ戻ると入手した武器類を持って帰えろうと大剣へ手を伸ばした。すると、その余りの重量感に持ち上げることすら敵わなかった。                                                       (大剣…重すぎでしょ!?こんなの、どうやったら振り回せるわけ?)                                     それを見かねて、ガランドさんは一つの台車に『魔法石の剣(ルーン=グラディウス)』とその他の武器を乗せると、鍛冶屋の前まで運んでくれた。                                                         その台車はローランドがいた場合、きっと不必要な物だったに違いないー                                (荷物の持ち運びも、案内に含まれてるはずなのに……)                                         ガランドさんに帰りの挨拶を告げた後、台車に乗せた武器を運びながら、黄昏た城下町を歩いていると、すれ違う人からの視線を感じた。                                                                      (ああー嫌だなぁ〜。私だって、運びたくて運んでる訳じゃないのに…でも、当たり前だよね……)                       ーすれ違う人からすれば、私が運ぶ武器は「得体のしれない物」であり。その上、それらを運んでいる私自身もランニング姿(奇妙な格好)をしている事になってしまう……                                             (これで見向きもされないなら、目を逸らされてるとしか思えない)                             例えるなら、ピエロが玉乗りしながら交差点を横切っている状況で、誰も気に留めないくらい違和感があるー                      そんな状況でさえ、|人物(わたし)が、勇者として召喚されているという事実に比べれば、普通の事に感じられた。                 (勇者に選ばれる人…絶対、間違えてるよ……)                                               ーそうして歩き続ける内、王様及び『ルーン騎士団』のいる城門前に到着した。                                 『ルーン騎士団』は王様と剣術の訓練の真っ最中で、そこにはローランドの姿も垣間見える。                              王様へ台車の武器を見せー『ルーン騎士団』による剣以外の使用に対する許可を求めた。                      王様は顔を伏せると、満を持して申請を受理した。                                          その途端、私の脳裏に一つの考えが浮かんだ……                                                           (ちょっと待てよ…武器を試すという大義名分があれば、明日の走り込み(マラソンモドキ)も免除されるんじゃない!?)                                                               「国王陛下!マラソ…ではなく。走り込みを行うと余力が残らないので、慣れていない武器を使う場合……武器になれるまで時間が掛かると思いますー」                                                          私は一縷の希望にすがるよう、一生懸命に訴えかけた。                                           「ーなので、翌日の走り込みは一旦、中止にした方が良いかもしれません…!」                                    「……嫌。中止せずとも、走り込みを後回しにすれば良いではないか?」                                        (……確かにー)                                                            王様の告げたー至極真っ当な正論により、私の希望は呆気なく散った。                                   「以前にも言った通り、今の騎士団に必要なものは…一にも二にも”持久力”!技術は追々、身につければよい!」                    (この理論だけは、今でも訳わかんない……)                                                      ーその翌日……                                                                  私は『ルーン騎士団』と共に城門前へ集まり、剣以外の武器を試そうとしていた。                                         (最初に試す武器は大剣にしようかな…私だと持ち上がらないし、使えそうな人を見つけないとー)                       大剣を試した結果ー騎士団員の殆どは、持ち上げこそすれ、振り回すほどの腕力は持ち合わせなかった。                      (流石にゲームキャラが使う武器なだけあって、そもそも現実の人間には扱えない代物なのかも……)                       私自身も一度は試そうと、大剣に手を付けてはみたが予想通りーどれ程力を込めようと大剣はびくともしなかった。                           「まあー普通の剣すらまともに使った事がないようじゃ、無理だよな!」                                     後方から轟いたーローランドの無神経な発言によって、私の投げ出しのやる気は完全に失われた。                                                                                        私が大剣の前から離れると同時に、ローランドは大                剣へと近づき右手を伸ばすと、身の丈ほどの大剣を一息の内に持ち上げてみせた。                                                                             (嘘でしょ!?あんな鉄の塊を片手だけで……)                                                    驚愕の余り言葉を失っていると、ローランドは大剣を両手に握りいとも容易く振り回した。                          (……げっ、幻覚?)                                                                    「ーこれも剣だからな…。親父はあんなこと言ってけど……今の親父の剣でも充分通用するってことを、俺がこの手で証明してやるさ!」                                                                  「……少し意外……」                                                                 私はローランドの発言を聞いて、無意識的に言葉を発していた。                                                         「何がだよ…?」                                                                 「え、えーっと…ローランドはガランドさんの事、嫌いなのかと思ってたから……」                               ローランドは大剣から離した左手で後頭部をさすりながら振り向いた。                                     「俺は別に親父の事、好きでも嫌いでもねぇ…ただ俺は、親父の真似で終わりたくないだけだ!」                       「ーそれと、そのローランドって呼び方…辞めてくれないか?親父に呼ばれてるみたいで気分が悪い……」                    「俺のことはロランでいいー」                                                           「そう…。でも、私にとってはローランドの方がしっくりくるから呼び方は変えない!」                             ローランドは訝しげに眉をひそめた。                                                   ー苗字の文化が存在しない『ルーン王国』では、名前だけが私にとって、自分が自分であることを証明してくれる唯一の財産だった……                                                                     カレンという名前の響きだけが、私に優しい母の顔を思い出させてくれる。                                      名前は大事ーそう思うからこそ、私は誰の名前であっても省略せずに呼びたいと思った。                                「ーは?何でだよッ!?」                                                              「別にいいじゃん…ガランドさんの事。嫌いじゃないんでしょ?」                                           「ハッ!変な奴だなお前……」                                                           (ー次は槍を試そう。今ある武器の中で、一番気になってたし……)                                       槍は剣よりもリーチが長く、敵を中距離から攻撃できる。力を一点に集中させることで生まれる貫通力は、『ロックリザード』にも通用する可能性が高い。                                                       私は早速、槍を手にとって試した。槍は想像よりも持ちにくく、剣よりも重さがある為……                                  経験上、槍を手にした状態では『ロックリザード』による攻撃が回避できない。                         なので、槍を使用する場合ー必然的に攻撃を防ぐための盾が必要になるが、槍と盾を持った場合の総重量は大剣と大差なくー                                                                            その上、盾を持つと槍を両手で持てなくなり、槍の持つ貫通力が発揮されない。                              (期待してたけど、これも私には使えなさそう…残念だな〜)                                                私はそっと槍を地面に置いた。すると、次にシュレインが槍を手にとったー                                    弓矢の実用性に疑いを持った人物だったこともあり。私は予め、槍の持つ長所と短所を説明することにした。                     「ーなるほど、長所の観点は概ね正しいと言えますが、短所に関しては間違っていますね……」                          「何故ですか…?」                                                                    「その短所は槍と盾を同時に一人の人物が扱った場合にのみ生じるもので、槍自体の短所とは言えませんよ……」                                  「それに、その短所をなくすのも実に簡単な事です!」                                          「えっ!?どうやるんですか?」                                                          シュレイン曰くー槍と盾をそれぞれ別々の人間が持ち。槍を持つ人が攻撃を担当し、盾を持つ人が守りを担当することで、槍の短所はなくなるらしい。                                                           「つまり、槍を使う人と盾を使う人が二人で協力し合うという事であってます?」                                         「その通りです!よく理解できましたね!!」                                                         シュレインはそう告げると、何食わない顔で正解とばかりに拍手した。                                                            (ー何、この人……)                                                                       「……ですが、この方法にも一つ問題があります。盾一つでは二人分の面積をカバーすることは困難なので、盾を持つ人は二つの盾を持ち。尚且つ、敵の攻撃を一人で耐え続ける必要がありますー」                                         シュレインは掛けている眼鏡の間を指で押さえながら話を続けた。                                                  「つまり、屈強な足腰と鋼のような精神を持つ人物にしか務まらないという事です……」                                                         「そんな人、居ないんじゃー」                                                               「一人だけ、心当たりがあります!」                                                             シュレイン曰くー『ルーン騎士団』現団長のクレイグさんは、王様が団長をしていた頃から騎士団を支えている騎士団屈指の実力者で、その頑強さと力強さから【切り株の騎士(スタムプナイト)】の名を冠しているとの事。                                      「ーそれにしても、槍という武器を考え出した人物は天才だ!今後、世界の常識が根本から覆るほどの発明だと言えます……」                                                                          「根本から覆るって!?そんなに凄いんですか…?」                                                   シュレインは眉をひそめると鋭い目つきでこちらを睨んだ。                                             「ー槍がどれほど優れた武器なのか、発明された世界から喚ばれたのに理解していないのですか?」                       (……そんな事言われても、槍は槍じゃん?)                                                     私はシュレインの主張を理解できず首を傾げた。                                                 「……例えばの話ですが、槍を持った兵士と剣を持った兵士が同人数いたとして、その両者が戦闘になった場合。必ず槍を持った兵士が勝利しますー」                                                                   「何故なら、槍の攻撃は剣よりも先に攻撃が届き…槍を持った兵士がそれぞれ一人の敵兵を攻撃したなら、槍を持った兵士と同じ人数の敵兵を倒すことができる為……」                                                  「理論上、槍を持った兵士は一人の犠牲者も出すことなく、同人数の剣を持った兵士を倒すことができる計算になります。それほど間合いの差は大きいのです!」                                                    「そうなんですか……凄いですね」                                                               (……銃とかミサイルなら、更に遠くから攻撃できちゃうけど……)                                             ーシュレインは話が終わった後、槍を大事そうに振るっていた。                                                    (最後は弓矢…だけど、やっぱ止めとこう……)                                                          「唯一の飛び道具だけど、戦いながら【魔法】の詠唱ができない。不器用な私には向いてないだろうし、あの『ロックリザード』に通用するとも思えないー」                                                           実際に大剣や槍を試している間、騎士団員の誰一人として弓矢に近づいてさえいなかった。                         その直後、最年少騎士のクロムエルが弓矢に近づきーその手に取った。                                                   (このタイミングで来たってことは、他の武器も試してきたのかな?)                                         「ーちょっと待って!弓矢を使ったとしても、多分モンスターには効かないから、意味ないと思うよ?」                      クロムエルはこちらを見るなり、儚げに呟いた。                                                        「確かに…そうかもしれない。けど、モンスターの目に当てられれば、他の人の援護くらいは出来るかもしれないから……」                                                                               「他の武器も試したけど、どれも僕には使えなかった。大きな剣は持ち上がらないし、刃の付いた棒は僕の身長より長いから上手くバランスが取れない」                                                               (ーなんて現実的な自己分析……)                                                           クロムエルは言葉を絞り出すようにして続けた。                                                   「…でも、弓矢なら簡単に持てるし、矢の方をセットして引くだけで使えるって説明で聞いたから…だから、そのっ!僕にも使えるじゃないかと思ったんだ!!」                                                    (それに、めっちゃ健気!?どうしよう……)                                                    「あー、えっと…頑張ってね!」                                                              ークロムエルは元気に返事をすると、他の全騎士団員が武器を試し終えるまで弓矢の練習を続けた。                                                                                                                                                                                    

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