好きです
気持ちが変わったことを自覚してからは一輝の顔を見ただけで恥ずかしかった。
直ぐに頬が赤く染まるのを感じることが増えた。
それは一輝が気付くようになるほどだった。
「詩織ちゃん……自意識過剰だと笑うだろうけど……
僕のこと……今はどう思ってる?」
「し…もむらさん……のこと?」
「うん。僕のこと……嫌いじゃなかったよね。」
「嫌いになる訳ない!」
「じゃあ、どんな気持ち?」
「ど……どんな………。」
「そう、今は?」
「見ないで!」
「見ないの?」
「私を見ないで!」
「分かった。」
「………………す……すき……です。」
「えっ? 何て言った?」
「好きです。」
顔を手で覆って私はリビングから出ようと走った。
直ぐに捕まった。
耳元で下村さんの声が聞こえた。
「ありがとう。
もう離さないから……僕の妻になってくれるよね。」
コクリと頷くと、下村さんは私を抱きしめた。
その日、私は下村さんと結ばれた。
下村さんは早かった。
直ぐに家族の対面の場を設けてくれて、下村さんのご家族にお会いできた。
兄にも会って貰えた。
そして、結婚式の話になった時、私は42歳という年齢を理由に「式を挙げない。」と話した。
兄は落胆した。
「お兄ちゃん……。」
「詩織の花嫁姿を見たかった……。」
「私、42よ。もう若くないの。」
「それでも! 俺は妹の花嫁姿を見たかったし、父や母にも見せたかった。」
「見せたかったって…亡くなってるから、見て貰えないじゃないの…。」
「……そうだな。」
「フォトウェディングをするのはどうですか?
詩織ちゃんも、どうかな?」
「私、歳なのに……。」
「僕も見たいから、詩織ちゃんの花嫁姿。
僕のために……いい?」
「そうよ。私も見たいわ。」
「天国から、きっとご両親もご覧になられるよ。
私からもお願いする。詩織さん……。
それに、うちの一輝が再婚だから遠慮されてるのかなと……。
それなら、申し訳ないからね。」
「……宜しいのですか?」
「こちらからお願いしたい。なぁ一輝。」
「はい。お父さん。
詩織ちゃん、フォトウェディングにしよう。いいね。」
「下村さんがいいのなら……。」
「じゃあ、フォトウェディングの予約を取ります。」
「一日でも早い方が良いな。」
「勿論、お父さんに言われなくても!」
「ありがとうございます。どうか詩織をよろしくお願いします。」
「お義兄さん、こちらこそよろしくお願いします。」
住居は変わらず、私は借りていた家から引っ越した。
残っている家具は持ってきた。
新しい暮らしが始まった。
下村詩織という名前になった。




