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明日へ  作者: yukko
53/57

助け

泣いてしまった日から1年が経ち、少しずつ……本当に少しずつ、下村一輝の存在が大きくなっていった。

一緒に居る時間は穏やかで心が落ち着く。

若くないからか……胸の高鳴りは感じていない。

会社で昼食後に同期の千尋から聞いた話は、私の心を激しく揺れ動かした。


「詩織……いつか耳にするかもしれないから……

 私から話すね。

 噂を耳にして詩織が心を乱すよりも、私から聞いた方が良いと判断したの。」

「何? 怖いな………。」

「あのね、真瀬君の奥さんなんだけどね。」

「!……奥様……。」

「うん。ずっと前にお子様のこと話したよね。」

「うん。」

「あれから、精神的に不安定だって話したっけ?」

「聞いたよ。その時に……。」

「……事故の直後は……悪くない他所の子のせいだ!って言ってたのよね。

 奥さんが……。」

「………………。」

「そういうこと、言わなくなったの。」

「そう……。それって、自分を責め出したとか……。」

「その通りなのよ。

 それでリストカットして、実家に帰って……。」

「………そこまで聞いたように思う。」

「入退院を繰り返されてたんだけどね。」

「うん。」

「良くならなくてね。最近も退院されてから、また………。」

「また…って……。」

「うん。リストカットしたらしい………。」

「それでね。そんなこと無いと思うけど……。

 真瀬君……万が一、詩織に近づいたとしても……

 ……その……後ろ指……指されるようなことにだけはならないで!」

「……千尋……。」

「心配なのよ。詩織が……。

 詩織、奥さんを選んだのは真瀬君だからね。

 どんな結果になろうと、その人生を選んだのよ。

 離婚しても、しなくても、ね。

 詩織は……巻き込まれないで欲しいの。

 今、万が一……真瀬君は寂しかったり、辛かったりだからね。

 支えたい!とか詩織……思って欲しくないのよ。 

 もう、別々の人生を選んだのだから……。

 お願いだから!」

「……千尋、ありがとう。

 ごめんね。心配かけて………。」

「ううん。お願い! お願いよ!」

「……千尋……分かってるから、ね。

 分かってるから……。」

「うん。」


千尋は涙ぐんでいた。

私の頭の中で忘れないといけない人・真瀬悠馬の顔が浮かんだ。

声が……消えてくれなかった。


⦅あの日も、辛かったの? 苦しかったの?

 過去の女に縋りたくなるくらいに……。⦆



このままではいけない!と思った。

スマホを見た。

まだ残っている真瀬悠馬の電話番号……消せなくて……そのままだった17年。

見つめてしまったLINE。

会いたくなってしまう弱い心。


⦅誰か……助けて!⦆


気が付くと、LINEで下村一輝にメッセージを送っていた。

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