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明日へ  作者: yukko
20/57

セカンドラブ

美里には会ってから話そうと思っていた。

美里と会う約束の日は、兄と会った翌日。

会社を出て約束の場所へ電車を乗り継いで行った。

駅の改札口で美里の輝く笑顔を見て、美里は幸せなのだと実感した。


⦅これなら話せる。……ありがとう。年下君。⦆


「美里、待った?」

「いま来たとこ。」

「プッ…やだわ。」

「何よぉ。」

「だって……まるで……恋人同士じゃん。」

「あ………そだね……アハハ……。」

「年下君との待ち合わせみたく?」

「やだぁ~~っ。」


頬を染めた美里が美しかった。

美人な美里がより一層美しかった。


「綺麗になったね。」

「えっ?」

「元から綺麗だった美里が年下君と付き合ってから綺麗になったよ。」

「えぇ~~~っ……恥ずいから、そんなこと言わないでよ。」

「幸せなんだね。」

「うん。」

「良かった。」

「ありがと。 あのね………実は……。

 決まったんだ。」

「えっ?…結婚?」

「それは……先だよ。」

「じゃあ、何が? 何が決まったの?」

「両家の顔合わせ…。」

「顔合わせ! それが先だった。

 決まったのね。良かったね。おめでとう!」

「ありがとう!」

「いやぁ~~、仕事が早いね。年下君。」

「もう、名前を教えたのに、いつまでも年下君って!」

「いいじゃん。年下なんだからさ。

 それに二人だけの時に言ってるだけだし……。」

「もぉ~っ。いいわ。許したげる。」

「許可を頂きました。」

「もぉっ!」

⦅今なら……いいかな?⦆

「あのね……会いたいって言った理由なんだけどね。」

「うん。」

「……翔太君ね……結婚する……んだって……。」

「…翔太君……結婚……そうなんだ。

 …上手くいったのね。彼女と………。

 元カノなんでしょ?」

「…うん。そうだよ。」

⦅美里……大丈夫……だよね。⦆

「……そっか……翔太君、長年の想いが通じたんだ……。

 良かった……。」

「……………良かった……良かったよ。」

「何よぉ~。なんで泣いてるの! もぉ、やだ……。」

「あの日の美里の涙……忘れられなくて……美里が幸せで良かった。」

「詩織……ありがと……。

 私ね、翔太君が本当に意味での初恋だったと思うの。

 素敵な恋だったと思うの。

 大切にしたい初恋なのよ。」

「うん。そだね。」

「彼は、それを分かってくれてるの。

 それを含めて私が好きだって言ってくれたの。」

「キャぁ―――っ。なんちゅうイケメン!」

「だから、今の恋が二度目の恋。」

「セカンドラブなんだ。」

「うん。高校の時、大学の時に付き合ったけど、こんな気持ちにならなかった。

 翔太君の時のような気持ちに……今の彼に対する気持ちにならなかったのよ。」

「そうだね。違ってたね。見てても分かるくらい……。」

「翔太君に……もし会うことがあったら言って……

 おめでとうございます! お幸せに!って……。」

「うん。そういう機会があったら伝えるね。」

「ありがと。……あ! そだ! お祝いしたいな。」

「一緒にする?」

「うん。お願い!」

「そっか……翔太君、やっと想いが叶ったんだ。

 ………詩織、何かあったら教えてよ。」

「うん? 何か?」

「うん。誰かと付き合ったとか……。」

「あぁ……万が一そんな日が来たらね。」

「……万が一って……。」

「事実なぁり。」

「……まだ吹っ切れて無いの?」

「……ふふふ………お次が無いからね。

 私の恋はただ一つだから、それしかないから……。

 執着してしまうのかな……。」

「詩織……。」

「漫画やドラマだと簡単にお次が現れて……

 しかもイケメン!

 でも、現実はそんなに簡単にいかないよ。」

「………詩織。」

「恋は恋によってしか……だもんね。

 何も無いから仕方ないね。」

「同じ会社でしょ。会うことあるの?」

「今は無くなったかな。」

「前はあったよね。」

「うん。会社が開いたイベントでね。

 そこに家族で来てた。

 奥様とお子さん二人を連れて……。」

「……そんなこと…あったの?」

「うん。帰り……暗い夜道を独りで歩いて泣いたなぁ……。」

「詩織……知らなかった。」

「言ってないもん。言っても無駄だしね。

 あちらは幸せだよ。それで良かったんだ。」

「詩織…。」

「もう止めよ。こんな話!

 幸せな話の方がずっといいわよ。」

「……うん。そだね。」

「翔太君へのお祝い、お金にするね。」

「うん。」

「一人1万円でいいよね。呼ばれる立場じゃないし…。」

「うん。」

「私が包んで渡すね。」

「お願い。」


それからは美里から年下君の話をいっぱい聞いた。

美里の笑顔が輝いて美しく、時々頬を染める様子が愛らしかった。

年下君が惚れるのは当たり前だと思った。

翔太君へのお祝いは、拓海君経由で渡そうと思う。

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