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右手に剣を左手に恋を  作者: 28号
■隊長達の絆編■
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Episode03-4 勝利をその手に

 地響きのような揺れと轟音と共に、ボールへと群がる男達。

 最初にボールを手にしたのはアルベール達のいる白のチームだった。

 だがそれを見逃す相手ではない。ボールを手にした一人に向かって走り出したのは、5人もの巨人だ。

 慌てて阻みにきた男を次々となぎ倒すその勢いに、ボールを手にしていた男がひるむ。

「ボールをアルベールに回せ!」

 そんなとき、轟音を切り裂く指示を飛ばしたのはヴィートだった。

 その声に他ならぬアルベール自身が驚いていると、ヴィートがもう一度声を張り上げる。

「お前は昔からシュートだけは得意だっただろ! ヒューズ、正面の巨人達をなぎ倒せ、ヴィンセントはアルベールを守りながら前進しろ! さあ行け行け行け!」

 飛んできたボールをアルベールが受け取ると同時に、彼へとねらいを変えた巨人達にヒューズが躍りかかる。

 岩のような拳を軽やかな身のこなしで避けたヒューズは、アルベール達の進路を予想し、左サイドにいる巨人達の足を次々と払う。

 カルチョ・ストーリコではこのような蹴りや拳を使った攻撃は反則ではない。

 ボールを手で持っても良いし、そのボールで相手を殴り倒すのも良いという何でもありのルールなのである。

 故にサッカーと言うよりラグビーに近く、ヒューズもその要領で巨人を引き倒していく。

 転倒に巻き込まれ倒れた巨人は4人。残り一人はヴィンセントの蹴りでバランスを崩したが、ゴール間にはまだ巨人が5人。そして体力自慢の男が20人は待ち受けている。

 厚い肉の壁におののくアルベール。だがひるむ彼の背を、ヴィートの声が押した。

「お前の足だったらそこからでも十分ねらえる! あとは味方が道を空けるのを信じて待て!」

 ボールを地におき、アルベールは静かに息を整える。彼へと迫る男達は仲間が引き倒し、問題の巨人にはヒューズとヴィンセントが殴りかかっていた。

 二人の動きや考えは、共に戦ったアルベール自身が誰よりもよくわかっている。

 残り5人のうち、右側の巨人を倒すと読んだアルベールは、すぐさまゴールへの壁が開かれると信じてボールを蹴った。

 予想通り、右の巨人が倒れゴールが見えた。

 だがそこにはキーパーがいる。

 初歩的なミスに焦るアルベール。ボールはもうキーパーの目の前だった。

 しかし、ボールはキーパーから折れるように逸れた。

 なり響くゴールホイッスルに何があったのかと目をこらせば、引き倒した巨人の上にヴィンセントが立っている。彼がヘディングでボールの角度を変えたのだ。

 沸き起こる歓声。同時に仲間から激しい抱擁をうけ、アルベールはようやく自分が役目をやり遂げたことを実感した。

「惚けるのは早いぞ、カルチョ・ストーリコが荒れるのはこれからだ!」

 ヴィートの声に、アルベールは慌てて気を引き締めた。

 最初の恐怖は既に無く、負ける気はもうしない。

 共に戦う仲間達の熱気を感じながら、アルベールは勝利を目指しかけだした。

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