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右手に剣を左手に恋を  作者: 28号
■騎士の休日編■
74/139

Episode04-3 生足の破壊力

「タダだと思うなよ」

 鼻にティッシュを詰めているアルベール。それと向き合うレナスは、騎士団の制服のズボンをはきながら目を怒らせていた。

「す、好きで見た訳じゃないのに…」

「私の足なんて見たくなかったってか? えぇ?」

 低く抑えられた声音に殺意を感じ、慌てて首を横に振るアルベール。そのやり取りを見ていたヴィンセントは、進まない会話にため息をつく。

「アルベール、足の話はもういいから、そろそろ本題に入れ」

「僕だって好きでしてる訳じゃないよ!」

「私の足は好きじゃないってか? 太くてたくましくて目にも入れたくないってか?」

「そんなこと誰もいってないよ! むしろ今まで見た中で一番綺麗だったけど、足の美しさと性格の男らしさとの間に隔たりがありすぎて混乱したというか、脳が受け入れを拒否したというか、性的魅力は感じつつも未だ自分が見た物を信じられないというか……」

 言葉を重ねるたびに墓穴を掘っていくアルベール。そしてもちろん、レナスの顔は怒りに震え始める。

「もういい、喋るな…」

 とレナスの怒りを察知して、アルベールの口を塞いだのはヴィンセント。

 ほぼ同時にヒューズがレナスを背後から拘束すれば、彼女は彼のつま先を三度ほど、骨を粉砕する勢いで踏みつけた。

「……で、用件ってなによ」

 ヒューズの貴い犠牲により、ようやくレナスの怒りが治まったところで、話は始まった。

「実は、秘密裏に協力してもらいたい事があるんだ」

「なんか危ない話?」

 だったら嫌よとレナスは即答したが、アルベールは彼女の機嫌が悪くなる前に言葉を繋ぐ。

「国王が行方不明なんだよ」

 レナスの予想より遥か斜め上を行く言葉に、慌てて返した声は若干うわずった。

「誘拐とかじゃないわよね」

「それはないと思う。身代金の要求とかもないし、実を言うとこの手のことは良くある事だから」

「良くあるって、国王がいなくなること?」

「昔から、結構な行動派で…」

 ヴィンセントとの一件を話せば、レナスとヒューズはあきれ果てる

「行動派で片づけて良いのかしら…」

「前から、一人で街に出ることはちょくちょくあったんだ。ただ、今は状況があまり良くなくて」

 言いつつアルベールが広げたのは今朝の新聞。そこには、イタリア全土で貴族の誘拐が頻発しているという記事が大きく載せられていた。

「フロレンティアではまだ被害はないけど、万が一って事もあるし……。それに一応身なりの良い格好はしていると思うから、この手の輩に目を付けられちゃったら……」

「凄い身代金要求されそうね」

 呑気な言葉に、アルベールが頭を抱えた。

「お金で解決するなら良いよ! ってか誘拐されてもきっとヴィンとかヒューズさんが何とかしてくれると思うし! でも一国の主がフラフラで歩いてるとか世間にばれたら、色々とイメージダウンだよ!」

 うちはずっと、歴史と伝統のある高貴な一族として、『なりたい王族ランキング』の首位だったのに! と叫ぶアルベールから、他の3人はこっそり距離を置く。

「…そもそも、高貴な王族の長男はあいつだし」

 とヒューズが言えば、

「アルベールも高貴とはほど遠いじゃない」

 とレナスが続け、

「高貴な王族って言葉にツッコミが集中してますけど、他にも色々と問題があったような…」

 とヴィンセントがうなだれる。

「ともかく! 一刻も早く父上を見付けないと!」

 それだけは同意出来るので、渋々レナスとヒューズはアルベールの言葉に頷く。

 承諾してくれた二人に頭を深く下げたのはヴィンセント。

「よろしくお願いします」

「あーあ、せっかくの休日だったのに」

「すいません。アルベールの言葉はともかく、信頼が置ける騎士にしか頼めないのも事実なので」

「……そのかわり、貸しひとつだからね」

 レナスはヒューズの料理にちらりと目を向け、それから渋々重い腰を上げた。

 それに目ざとく気付いたヒューズが、レナスの頭を軽く叩いた。

「また作ってやるさ」

「あんただってロクに寝てないんでしょう?」

「たたき起こしたのは誰だよ」

「私は良いのよ、私は」

 勝手な言い草だが、一応心配しての台詞らしい。

「剣を取ってこい、すぐに出発するぞ」

 大丈夫という変わりに背中を押して、ヒューズもまた剣を携えた。

※06/21 誤字修正しました(ご指摘ありがとうございます)

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