プロローグ
新連載です。よろしくお願いします。
城の庭で、王女とその護衛騎士が仲睦まじく歩いていた。花畑には、色とりどりの花々が咲き誇り、軽やかに蝶が舞う。
やがて、一歩先を歩いていた騎士が立ち止まり、足元の花を摘み取った。
騎士は花を、姫に差し出す。小ぶりだが、芯はしっかりとした、可憐な黄色い花弁。それはまるで姫のようだ。
彼女は頬を朱に染めて、花を大事そうに抱えた。ゆったり顔の前に持ち上げ、春の匂いを嗅いでいる。
花粉がついたようで、雪のように白い鼻先がうっすら黄色に染まっていた。 彼女は気付かぬまま、うっとり春の香りを満喫している。そんな姿もとても愛らしい。
しばらくして、ひらひらと1匹の蝶が彼女の鼻に止まった。彼女は驚いて、ぺたりと尻もちをついてしまった。
騎士は慌てて、姫に手を差し出す。
彼女は頬を真っ赤にして、俯いた。騎士は笑いながら、彼女の顔を布で優しく拭き取る。姫は大人しくなったが、拗ねたようにそっぽを向く。そんな姫を見て、騎士は愛おしそうに口元を緩めた。
――小さな国の、美しいお姫様と騎士。窓枠から見える景色は、まさに絵画をそのまま切り出したようだった。
その窓の内側で、私は思わず溜息を零した。
どこからどう見ても、お似合いな二人。
彼らが結ばれるのは、必然だと思っていた。
それが一変したのは、初夏の頃。
隣の大国と、姫の縁談が決まった。




