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21冊目〜夜会〜

 夜の闇を感じさせないほどに煌々と灯りが灯った広間。

 中央では、ドレスや夜会服を纏った男女がワルツに合わせて誰かが決めたステップを踏み、くるりと回るを繰り返す。

 中央の見せ物に参加しない者は踊る人々を眺めつつ、用意されたグラスを片手に挨拶や談笑している。


 目に痛いほどの色と反射された光が会場に満ちていた。



「早く終わらねぇかな」


 休憩場所を兼ねた吹き抜けの二階、広間を上から眺められる所でフレドリックは一人そんなことを独りごちる。


 すでに必要最低限のダンス(見せ物)には参加した後で、ここに引っ込んでいても父や兄達からは何も言われないことは経験則的に知っている。

 寄って来るご令嬢を得意の笑顔で躱し、片手間に給仕からグラスを受け取ることも、もう慣れたもの。


「……こんな家を継ぐことのどこにそんな魅力を感じるんだろうな」


 好青年の顔を崩し、眼下に広がる見栄や媚びで彩られた賑わいと身分の高い来客に擦り寄る兄達を冷ややかな目で眺めていた。



「帰りてぇ……」



 光を受けたシャンパンの色を誰もいないことをいいことに、気怠げに揺らしながら自分の居場所に思いを馳せる。



 ###




「……というわけで、実家の夜会に参加することになりました」

「そうですか、分かりました。その数日間は書庫を閉めることにします」


 兄から実家からの手紙(帰還命令)が届いたその日のうちに、フレドリックはアイリスにそのことを話していた。


「ぶっちゃけ、帰りたく無いんですけどね、面倒くさいので」


 フレドリックは苦笑いを浮かべる。

 その様子にアイリスが何も言わず、不思議そうに少し首を傾げた。



「今ぐらいの暖かい季節になると、社交会が増えるんですよ。あっちに呼ばれ、こっちに招待して……みたいな。だいたいやる事はどこも同じなんで、退屈で……。お世辞やら、ダンスやらより、俺は剣振ってる方が好きですね」

「貴族の方も大変なのですね」


 憂鬱なあの時間を思い浮かべながら苦々しくそう言うと、アイリスも納得したような表情になる。


「昔は家に来る招待状のほとんどに参加してたんですけど、こっちに来てから色々と理由を付けて逃げてたんですけど、とうとう実家から帰ってこいと言われました」

「そうでしたか」



 そこで会話が途切れる。

 初めの頃は、不安に感じるその瞬間も、彼女が言葉を探しているのだと気づいた今は、なんとなく心地よさすらその間に感じるようになった。



「フレドリックどの」

「はい」


 スッと居住まいを正したアイリスに改めて名前を呼ばれる。





「道中、お気をつけて」

「はい!いってきます」





 その日、その彼女の一言は少しだけ憂鬱な気分を軽くさせた。

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