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20冊目〜来客〜

 


 厄介ごとというものは、こちらが予想しないタイミングで来るものだから厄介で嫌なものなのだ。




「フレッド、お前に客だ」


 朝、始業前のほんの少しの時間。

 詰め所でヨハネスと他愛もない雑談をしていると、隣にある応接室から出てきたグレアムに呼ばれる。


「俺にですか?」

「誰だ?こんな朝っぱらにしかも応接室だし」


 行儀悪く机の上に座ったヨハネスと訝し気に視線を交わし、二人してグレアムの方を見返すが、


 グレアムも「行けば分かる」とそれ以上詳しくは言わない。


 まだ始業前で王宮の各部署もしっかりと稼働しているわけでないから、外部からだということもないだろうし、応接室に通されたということは「好青年」目当ての……とかでもなさそうだ。

 全く予想できる材料がないが、ここでいつまで予測していても仕方ない。



「失礼します」

「来たか」


 部屋いたのは、海老茶色のソファに足を組んで座るらフレドリックに似た色味の金髪碧眼の男。


「兄上、どうしてこちらに?」


 男の名はブライアン・バードン。

 バードン伯爵家長男であり、フレドリックの兄である男だった。


「用がなければこんな所にまで来るものか。これをお前に渡せと頼まれてな」


 兄に見せられた、彼が持つには可愛らし過ぎる封筒に、これでもかというほど巻かれたブロンド髪に存在感のある濃い化粧を施した、甲高い声で笑う人物の影がフレドリックの脳裏をよぎる。


「……母上ですか」

「ああ。今度、我が家で催すことになった舞踏会に合わせて帰って来るように、とのことだ。お前また長い間、実家に顔を出していないそうだな」


 うんざりした表情がうっかり顔に出そうになるのをフレドリックが堪えていると、対する兄は本人がいないのをいいことに一切の躊躇いなく表情を苦々しいものにしてそう苦言する。


「……忙しいもので」

「はん、どうだかな。まあ俺は()()が少ない方がいいから別にいいけどな」


 両の指の先を眼前で合わせ、その間から懐疑に満ちた鋭い視線を寄越す兄に、フレドリックは呆れたように肩をすくめた。


「俺は家督争いに興味はないし、三男ですよ。しかも文官家系のバードン伯爵家で唯一の騎士団所属。兄上たちと争えるものは何もないですよ」

「こっちに入ってこないならそれでいい。せいぜいいい所の婿養子先を探すことだ」


 「俺も忙しいんだ」と、一方的に話を断ち切って部屋を出ていった。


 残された封筒を見つめる。


 細い文字で書かれた自分の名。

 角に花があしらわれた少女趣味な封筒。

 封蝋には生まれてから嫌と言うほど目にしたバードン家の紋章。




  一つ大きなため息を吐き、これからやって来る憂鬱までを数える日々を思い、フレドリックは気を重くしたのだった。




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