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花吹雪
絵の具のにおいが
まだ鼻にのこっていて
あのつんとした
不快で
いとおしいにおいが
きゅうに恋しくなるときもある
きみのアトリエを売る日
こころで渦をまいていたものが
もっと具体的なかたちをてにいれた
きみのアトリエを売れば
きみのすきだった本を捨てれば
きみの描いた絵をかざれば
春
萌えた芽の
きみみたいなはかなさは
きっとゆめうつつ
――春よ!
さあ、春よ!
旋風となり鮮やかな花よ!
いまこの温度たる春よ!
愛を告げる花よ!
恋をゆめむ春よ!
いまうつくしく咲って!
そしてうつくしく散り乱れて、春よ!