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異世界召喚されてみる

 辺り一帯に広がる深林。そこに()()()を持った男が一人。

 その男は無数の()()()に囲まれていた。


「はぁ・・はぁ・・くそッ!」


 ジリジリとゾンビ達はその男に詰め寄っている。

 男とゾンビ達の距離約2m。このままではやられる。


 俺もここまでか・・・いやまだだ!全ては生き残るため、どんな方法でも生き残って、元の世界へかえるんだ!


 男はそう決意し、タンスを片手で持つ。


「日用品雑貨舐めんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!!」


 そう叫びながらゾンビの軍勢にタンスを投げた。


 ……………

 …………………………


 教室に春の暖かい日射しが射し込み、春になりきれない冬の涼しい風が吹き込むある日、この時期に窓際の席になると気持ちよすぎて授業に全く集中できない。

 せめて寝るまいと最後の悪足掻きをするがそれも虚しく睡魔という悪魔に喰われてしまう。


 ふと目が覚めると、俺に声をかけてくる長身の茶髪の男がいた。


「おい雑士(そうし)、昼飯くいに行くぞ」


 どうやら寝ている間に昼休みになってしまったようだ。


「ふぁ〜、んっ、じゃあ行くか」


 そうやってこの俺「日屋 雑士(にちや そうし)」は蹴伸びをして昼食を取りに食堂へと向かう。


 先ほど話しかけてきたのは「蟹田宇治(かにだうじ ) 正宏(まさひろ)」幼稚園から今の高校まで14年間ずっと同じ学校の腐れ縁だ。


 俺はこの2ーCのクラスでは少しだけ浮いている存在だ。そんな俺なのに、腐れ縁を腐り切らないようにしてくれている正宏には本当に感謝している。が、少し罪悪感がある。

 正宏は人当たりがよく、愛想がいい。まぁ、つまり友達が出来やすい性格だ。幼馴染みじゃなきゃ関わろうともしなかっただろう。

 一度「俺なんかに構ってないで友達でも作ったらどうだ?」と言ったら、「お前がいないと楽しくないだろ?」とこっ恥ずかしいことを言われた。


 昼休みが終わり、5時間目の授業が始まる。この時間帯に社会を入れた奴マジ死ね。社会は苦手分野だ。何を言っているか分からないし、何をしたらいいかも分からない。つまり必然的に眠くなる。もう教室の4分の1が睡魔に屈服している。後45分、長すぎるぜ。


 そうやって睡魔と死闘を繰り広げていたその時。





 ・・・教室の床に魔法陣が出現した。



 教室にいた人間は慌てふためき教室から出ようとするが、どうやら開かないようだ。先生は驚きのあまり失神していた。そして魔法陣の光が増し、その光は俺達を包み込んだ。


 そうやって俺達は銃とゾンビと魔法の異世界へと召喚されたのであった。


 ……………

 …………………………


 目が覚めると俺達は薄暗く、周りにろうそく台が立てられている、「儀式の間」と表現するのがピッタリな部屋にいた。


「何処だここは!?」「なんだ!?何がおこった?!!」「おい!?」「誰かいないのか?!」「帰してくれ!!」

 と、それぞれ異口同意の言葉を叫ぶ。


「みんな一回静かにして!」


 ある一人の男の声によってピタリと困惑の声は静まった。


「今どんな状況か分からないけど、一旦落ち着いて。そこに扉があるから取り敢えずここからでよう!」


 すごいな。全員が冷静さを取り戻しその男「進道 一(しんどう はじめ)」の指示に従った。

 この男はクラスではリーダー的存在だ。おまけに眉目秀麗、品行方正、頭脳明晰、スポーツ万能と、非の打ち所がないスーパーヒーローなのだ。もちろん俺は話したことすらない。

 まぁ、そんな男が言う事だ。誰でも指示を聞くだろう。


 そして俺達は「儀式の間」から出た。するとそこには左右に分かれている、行き止まりが見えないくらい長い廊下に出た。


「と、取り敢えず右へ行ってみようか」


 さすがの進道もこの光景に驚きを隠せない様子だった。


(一見するとファンタジー物でよくある城だな。異世界召喚でもされたのか?)


 そんなことを考えていると俺達の目の前に、巨大な扉が立ちはだかった。


「開くぞ」


「お、おう」


 進道とその友人らしき人物がその巨大なとびらを開ける。するとそこには



 ・・・玉座の間があった。








「敬れぇぇぇぇぇーーーーーーいぃぃぃぃ!!!!」


 俺達が玉座の間に入ると、玉座に座っているおっさんの横にいる男(こっちは二十代位の男だ)が大声を上げる。

 すると玉座へと伸びているレッドカーペットの両端に並んでいる鎧を着た兵士達が一斉に敬礼をした。


「よくぞ参られた。この世界を救いし勇者達よ!!」


 そんな事を玉座に座っているおっさん(多分この国の王だろうな)は言った。


「ち、ちょっと待って下さい!少しだけ質問をさせていただけませんか?」


あの男が王様であると感づいたのか進道は即座に敬語に変える。

すごいな。情報処理能力の速さが尋常じゃない。


「うむ、よかろう」


「ありがとうございます」


進道は深々と頭を下げた。


「ではまず、私達がいた世界とは違うんですか?」


まぁ、妥当な質問だろう。「ここはどこですか?」と訊かないところを見ると学年1位も伊達じゃないな。もし異世界だったとしたら知らない土地の名前が出てくるだろう。そんな土地名を聞くのは時間の無駄だ。


「うむ、違うな。ここはそなた達がいた世界で言うところの異世界と言うところだろう」


おし!!やったぜ!異世界召喚だ!やはり魔法などあるのだろうか!燃えてきたぜ!なんてこの状況で思える精神を持っているラノベの主人公を見習いたいぜ。


だが俺は()()知ってしまう。理不尽という言葉を。俺はまだ知らなかった。このクラスが召喚された意味を。このクラスには重大な秘密が隠されていたことを。



日屋 雑士


所持品 なし

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