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第9話 初めてのギルド登録と初依頼

 《これ、なんだろう?》


 朝食を食べながら、口の中の不思議な触感に違和感を覚える。お肉や野菜の歯ごたえの中に、粒々とした触感は初めてだった。


《形状から、穀物類を砕いたものと推測》


《いつもと変わってる》


《栄養面のバランスと考察》


 粒々とした感触を楽しみながら食べていると、ふと、背中に視線を感じて振り向いてみる。

 椅子に座って、自分の朝食を食べているはずのリリィと目が合う。リリィが僕を見ていたようだ。

 何だろう?と思いながら、首を傾げてみる。


「……美味しい?」

「にゃーん」


 粒々とした穀物のことを言っているのだろう、とりあえず返事をする。


「今日は私が作ったんだよ」


 どうやら、今朝の朝食はリリィが作ってくれたらしい。粒々を入れたのも、リリィかもしれない。

 朝食がいつもと違う理由に納得しながら、残りを口に入れて咀嚼する。


「ふふふ、一通りの食事を出してみたけれど、ツヴァイは雑食のようだわ。これからはリリィに任せても大丈夫そうね」


「うん、栄養も考えて用意する」


 元気良く返事をするリリィ。

 知らぬ間に、何が食べられるのかチェックされていたみたいだ。昨日までの食事はお母様が出していて、僕は雑食と判断されたらしい。まぁ、食べれるものは何でも食べるけどね。


《迂闊でした。……ツヴァイ、母親には警戒を》


《ん? どうかしたの?》


《猫は本来、肉食です。……雑食だということに疑問を持たれているかもしれません》


《前に道端で、果物食べてた猫が居たから、大丈夫だと思うけどなぁ》


《警戒はしておいた方がいいでしょう。ぼろを出さないよう注意してください》


 アルマさんの考え過ぎだと思うものの、相手はあの何を考えているか分からないお母様だ。優しいけれど、注意はしておこうと、気を引き締める。


 食事を終えて、ソファに寝転んだ。

 昨日は、使い魔の話をお母様と話していたので、何かしらあるだろうと思っていたものの予想に反して、リリィとお母様はいつも通りに降りて行ったので、少し拍子抜けする。

 

 さて、夕食まで自由時間だ。

 いつも通り、リリィの部屋の窓から、街へと繰り出していく。


《ロビに会えるといいんだけどなぁ》


《……周囲に反応は感じられません》


 聞きたい事もあったのだが、そのうち会えるだろうと、今日も今日とて、屋根の上を歩いて西の門へと向かう。


《昨日の反応はある?》


《昼間なので、それほど広範囲の索敵ではないですが、不可解な反応はありません》 


 昨日のように、『嫌なもの』が出ていないかと思ったものの、反応はなさそうだ。

 今のところ、僕には実害が無いので、恐怖よりも『嫌なもの』の正体が何なのか、といった好奇心の方が強い。

 途中、猫が数匹集まっているのが見えた。近づいて行くと見知った猫もいたので声をかけてみる。


「おつかれぇ」


「お、ツヴァイ、おつかれ」


「おつかれです」

「「おつかれぇ」」

「集まってどうしたの?」

「……昨日、この辺りに出たらしいよ。嫌なものが」


 昨日の話のようだ。

 輪の中に加わり、話に耳を傾ける。


「だから、俺は見たんだって、嫌なものは、絶対あの人間だな」

「人間?」

「昨日の夕方、こいつが、嫌なものを見たって言うんだよ」


 嫌なものの正体について、考えていただけに少し気になる情報だ。


「お、お前さんも聞いてくれよ。昼間、通りでかっぱらってきた魚を食べてたんだ。そしたら急に嫌な感じがしてな、通りを見ていたら、嫌な感じのする人間が、俺の方へと近づいてくるんだ。そいつが近づくにつれて、横にいたねこが気絶したんだよ」


 僕も、気絶した猫を見かけた事を思い出す。


「俺は腹が痛くなってうずくまってたんだが、そいつが前を通り過ぎる時が、一番腹が痛かったな。そいつが通り過ぎてから、しばらくすると、痛いのが収まったんだよ」


「だから、お前が変なもん食ったんだニャ」


「いやいや、近くに居た猫も気失ってたんだから、間違いない、あれは嫌なものだった」


「ここは街の中心だよ。嫌なものは、東門の近くに出るはずだから、違うって」


 出没した時間が昼間ということは、僕がギルドに向かう際、『嫌なもの』が近くに居たのかもしれない。


《嫌なものみたいだけど、昼間って事は、僕が図書館に移動してるときかな》


《おそらくそうかと。状況証拠もかんがみ、話の信憑性は高いと思われます。しかし、人種となると、判別は難しいかもしれませんね》


《……あ、僕みたいに、姿を人に変えているとかかな?》


《可能性はないとは言い切れませんが、おそらく低いでしょう。猫などの動物に影響があり、人には影響しない。被害が限定的です。……何のためにそのようなことをしているのか……目的が不明な以上、憶測の域を出ません》


 考えれば考えるほど、答えのない迷路に迷い込んでいるみたいだ。


「ツヴァイはどう思う?」

「……昨日、気絶した猫を見かけたけど、もしかしたら……そうなのかな?」

「だろ、やっぱり嫌なものは人間なんだよ」

「人間なんてたくさんいるから分かんないニャ」

「だから、あの人間なんだって、うぅ……腹が痛くて覚えてないんだよなぁ」

「わかったわかった。ツヴァイも引き留めて悪いね、相手はしとくから今のうちに行っちゃえ」

「うん、またね……」


 他の猫に相手を任せて、ギルドのほうへと歩いていく。


《人間かぁ、シーラさんに聞いてみたら、何か分かるかな?》


《聞いてみるのも、一つの手ですね》


 ギルド近くの物陰に入り込んで、人へと戻り、昨日買った服を身に着けてみる。ベルトに少し手間取ったものの、初めてにしてはスムーズに着られたはずだ。おかしなところはないかと、確認してみる。


《大丈夫そうかな?》


《問題ないようですね、少し大きいような気もしますが、許容範囲内でしょう》


 白いシャツにベスト、黒いズボンと、昨日と服装は大して変わらないものの、トランスではない、初めての実物を着て、新鮮な気持ちでギルド図書館へと入る。


「あ、少年いいところに!」


 ギルド図書館に入るなり、シーラさんに手招きされ、カウンターへと移動する。いつも本を読んでいるシーラさんが、珍しく本を読んでいない。なにかあったのかな?


「どうしたんですか?」


「少年、ギルドに登録してみない? 」


《登録?》


《ギルドの冒険者登録と推測、名称は冒険者となっていますが、実際の業務は傭兵や警備、採取など多義にわたります。……登録には年齢制限があり、九才からと記憶していますが……》



 アルマさんに教わった設定を思い出す。


「まだ……八才ですけど、登録できるんですか?」


「本当はダメだけど。ギルド職員の推薦があれば、例外として登録は出来るんだよ。私が推薦人!」


「え、でも、なんで推薦してくれるんですか?」


「うーん、こっちの都合なんだけど……少年は頭がいいから、近い将来、ギルドに貢献してくれたらなぁって」


 シーラさんが推薦してくれるらしい。


《この前の薬草を取ってくるのもギルドの仕事なのかな?》


《肯定。買い取りをしていたので、おそらくはそうかと》


《登録してもいいかな?》


《ツヴァイの判断にゆだねます》

 

 ギルド登録することにアルマさんは反対でもなさそうだ。登録したら何か制約があるのか気になる。

 

「登録したら、守らなきゃいけないルールとかありますか?」


「うーんと、正当防衛以外で、人に攻撃をしたり悪いことをしなければ、特にないはずだよ。正当防衛って言うのは、先に手を出された時に、自分を守るために相手を攻撃することね。制約が出てくるのはランクが上がってたらかな。登録するとギルドの依頼を受けれるから、お金も稼げるよぉ」


 少なくとも、今は何かしなさいといった制約は無いみたいだ。お金も稼げるようになるらしく、経験を積むのには良いかもしれない。


「わかりました。じゃあ、登録お願いします。」

「よしっ!……とと、じゃぁ、この書類に必要事項を書いてね。書けないところは、そのままでいいから……あ、代筆もできるから言ってね」


 そう言って、待ってましたと言わんばかりに、カウンターの下から一枚の書類と、羽ペンを出してきた。書類の上には冒険者になるための登録書と書いてある。


 自分で書いてみることに興味があったので、羽ペンを受け取り、ペン先をインクに浸す。文字を見よう見まねで、書いてみると思いのほかいい出来だった。


 自分の名前を書いてみる。


《これでいいかな?》


《書く際に、右腕に余計な力が掛かっていますが、初めてにしては上出来かと。その調子で続行を》


 名前、性別と出身地、出来ることを書く欄があり、性別は男で、出身地は……分からない。

 今はリリィの家に住んでいるので、この街名前、ラグズと書きこむ。


 出来ること……何を書けばいいのだろう。トランスは書かないほうがいいと考え、影に物を入れられることを思い出す。


《影のことも、隠しておいた方よいかと。同じことが出来る人物が居ない場合、目立つ可能性があります》


《そうなると、書くことは無いかな?》


《昨日の、薬草採取が適切かと》


 他に出来ることも思いつかないので、薬草採取と記入した。

 最後に、ギルドの規約に従う、という旨の制約が書かれた欄に目が止まる。どういう意味だろう。


《正当防衛を除いて、人に危害を加えないと言った一般常識のことでしょう。ギルドの制約はランクが上がってからと、先ほど説明を受けましたので、とりあえず名目上の物と考察。サインをして構わないかと》

 

 同意する欄にサインをして、書き終えたことを確認。書類をシーラさんに返す。


「お願いします」


「うん、書けてるね。じゃあ次は、この水晶玉に触ってね。ギルドタグを作るよぉ」

 

 示された先に、昨日は無かった水晶玉が、カウンターに置かれていることに気が付く。


 シーラさんがギルドの人みたいだなぁと感じながらも、水晶玉に手をかざす。

 手をかざした水晶玉がわずかに光り、もやもやとしたものが球体の中で渦巻きだした。これは何だろう。


「この、もやもやしたのが少年の記録だよ。えーと、これを……」


 そう言って、シーラさんが硬貨と同じぐらいの大きさだろうか、銀色のプレートを水晶玉に近づけると、中の渦がプレートに吸い込まれていく。


《水晶体でデータを吸い出し、タグに記録するようですね》


「ん……出来たかな? ……あ、まだだ」


 何やらメモのようなものを読んでいる。

 シーラさんも慣れていないみたいだ。 先ほど書いた登録書にもプレ-トを近づけて、何かを吸い取っている。


「これで完成!……少年のギルドタグだよ。見てごらん」


 もやもやを吸い取った銀色のプレートを渡される。表面には僕の名前や年齢、先ほど書類に記載したことが書かれていた。


《凸凹してるなぁ。……あ、八才って書いてある。本当に八才なんだ……》


《刻印されているようですが、未確認の魔法です。年齢も判別できるとは》


《あれ、リリィのほうが年上?》


《肯定。少女は九才かと》


 同い年かと思っていただけに、少し衝撃だ。リリィのほうがお姉さんかぁ……。


「右下にある、N一が少年のギルドランクだよ。アルファベットのNから始まるんだけど、Nランクでも五段階に分けられていて、全ランクを合わせると七十段階。細かく分けたほうがより正確な技量を把握できるから、クエストの成功率も上がるんだってさ」


 もらったタグの右下に、N一と書かれている。

 一番初めのランクみたいだ。


《アルファベット、この前、図書館で読んだやつだよね?》


《肯定。N五ランクの次はMランクと推測、最高位は、A五ランクとなるのではないかと》


「横の数字はクエストをこなしていくことで上がっていくから、少年の頑張り次第。数字が五になると、ランクを上げる昇格クエストが出来るようになるからね。少年にはまだ早いかもだけど、これがあれば、簡単な依頼クエストも受けられるし、ギルドで何かするときは、ギルドタグを出せば手続きできるからちゃんと出すように!」


 先程から、コソコソと、メモ用紙を読んでいるシーラさん。

 びっしりと細かい文字が書いてある紙が見えた。


《クエストをして、横の数字が五になったら次のMランクの試験が受けられるってことかな?》


《肯定》


 これでクエストが受けられるらしい。少しややこしいけど、お金を稼ぐために利用させてもらおう。


「あと、ギルドタグの再発行には百ルピー掛かるから、絶対に無くさないように…………結構掛かるね」


「百ルピー……ですね。……気をつけます」


 冷やし草売り上げは千五百ルピーだが、百ルピーはそこそこ高いみたいだ。

 案外、冷やし草の売値がいい値段だったのかもしれない。


「無くされると困るから、罰金の意味も込めての値段らしいよ。メモにはそう書いてある」


「メ……メモ」


 メモを隠す気はないみたいだ。


「ギルドに入った時に研修でやったんだけど、久々の登録業務だから心配でね。規約が書かれた本もあるから、少年は説明を受けるよりも、読んだほうがいいかも」


 本に書いてあるのなら、覚えも早いだろう。

 ギルドタグをもてあそんでいると、端っこの方に小さな穴が開いていることに気が付く。


《何の穴だろう》


《穴にひもなどを通して、紛失対策として、首から下げたりするものかと考察》


 影に入れておけば、失くす心配はなさそうだ。


「登録はこれで完了だよ。……さて、登録を終えた少年に良さそうな依頼クエストを持ってきたんだけど……やってみる?」


 そう言って、一枚の依頼書が机の上に置かれる。

 覗き込んでみると、N一ランク、仕事内容は西の門の、草原を越えたところにある森のキノコ採取と書いてあり、報酬は、持ってきた分だけ払う、と書いてある。

 依頼者は、『燃える鉄鍋亭』マスターとなっていた。


「西の門を出て草原を超えたところに、森があるのは知ってるかな? そこに生えているキノコの採取だね。ギルドの通りから、三番目の路地を曲がった所に酒場があって、そこのマスターが依頼主ってわけ」


「キノコを採って、マスターに届ければいいんですね」


「そそ、依頼クエストが終わったら、依頼主にギルドタグを見せれば、依頼完了の証がもらえるからね。報酬は依頼主じゃなくてギルドで支払うから、私のところまで持って来るように」


 説明を受ける中で、先程、少年にはまだ早いかもだけど、と言っていたのに、依頼を用意している辺り受けさせる気がありありだという事は指摘しないでおく。

まぁキノコの採取なら薬草を取ってくるのとそう変わらないだろうと、引き受けることにした。


「分かりました。やってみます」


「手続きしちゃうね。ギルドタグを貸してくれるかな?」


 シーラさんが、ギルドタグを依頼書に近づけると、依頼書からモヤモヤが出現し、ギルドタグへと吸い込まれていった。

 ギルドタグを見てみると、依頼クエスト受注中と書いてある。


「確かに受け付けたよ。記念すべき初依頼クエスト、頑張ってねぇ」


 そうと決まれば、早いほうがいいだろう。

 シーラさんの声を背に受けながら、ギルド図書館を後にする。



《三番目の路地を曲がった所の酒場だよね》


《肯定》


 初仕事だと気を引き締めながら、大通りを歩いていく。

 三番目の路地を曲がると、鉄鍋が火に掛けられている絵が描かれ、『燃える鉄鍋亭』と書かれた酒場の看板が見えた。

 酒場と言えば、夜に営業していると本に書いてあったのだが、まだ午前中にもかかわらず、ちらほらと、お客さんが入っているところを見ると、昼間も営業しているみたいだ。


《燃える鉄鍋亭。ここかな?》

《そのようですね。従業員がいます、捕まえてマスターに会えるか、確認を》


 店内へと足を踏み入れると、たくさんの丸テーブルと、きれいに並べられた椅子が目に入る。全てのテーブルが埋まれば、さぞかし賑やかだろう。


「いらっしゃいませぇ。かわいいお客様だね。ご飯かな?」


 お客と思われたのか、エプロンドレスを着た女性に話しかけられる。頭には白い、ひらひらが付いていて、かわいらしい。

 お客ではないので、要件を伝える。


「マスターに会いたいんですけど、マスターはいますでしょうか?」


「ん? マスターのお客さんかな?じゃあ、ついてきて」


 そう言われて、カウンターの中へと招かれる。奥へ進んでいくと、良い匂いが漂ってきた。厨房には、鉄鍋を火にかけて、何かを作っている人がいる。この人がマスターだろうか。

 

「マスターにお客さんですよぉ」


「ん?どうしたんだ……初対面だな?」


「え、初対面?……まさか、前の奥さんとの子ども!? 父親を訪ねて、はるばると……」


「馬鹿野郎。俺はずっと独身だよ。ほら、グランプルの素揚げ持ってけ」


 お姉さんは、何かぶつぶつと言いながら、何かの素揚げが乗ったお皿を持って、お店へと戻っていく。


「えーと、ギルドの依頼できました。ツヴァイです」


「ん、おめーさんが、キノコを取りに行くのか?」


 頭のてっぺんから爪先まで、視線が動くのが分かった。


 子どもが来たと思って、半信半疑なのだろうか?

 これを見せればいいだろうと、ギルドタグをポケットから取り出し、提示する。


「はい、ちゃんとギルドタグもあります」


 

 タグを手に取り少し驚いたような顔をするも、納得してくれたのか、タグが帰ってきた。


「その歳で大したもんだな。疑って悪かった。えーとキノコだったな。西の草原を越えたとこに森があってな、黄色いキノコを採ってきてもらいてえんだ。袋は……これを使ってくれ」


 そう言って、大きな袋を二つ渡される。僕がすっぽりと入りそうなくらい、大きな袋だ。


「依頼の内容は読んでるな?その袋の半分でもいいし、二つの袋が膨れ上がるほど、採ってきてもいい。まぁ、取れるだけ頼む」

「わかりました。袋、お借りします」


 袋を脇に抱え、『燃える鉄鍋亭』を後にして、西の門へと歩みを進める。


◇◇◇◇◇◇


 ギルド図書館から出て、『燃える鉄鍋亭』へと歩いていく少年を眺めながら、シーラはカウンターのイスに深く座り、大きくため息をつく。

 その顔には若干の後悔が垣間かいま見えた。


「はぁ、送り出しちゃったぁ。……推薦状のためとはいえ、悪いことしちゃったかなぁ?」


 規定年齢に満たない人物をギルド登録させるには、推薦状が必要だ。そして、推薦状を出したら、それで終わりではなく、その人物が推薦するに値する実力を持っていたか、追加報告する義務があるのだ。


 今回は登録をするにあたり管理課から、調査も兼ねてクエストで評価するよう指示が出ている。

将来有望とはいえ、ゴブリンが出るかもしれない西の森へ、まだ八才の子どもを行かせたことに、少し後悔をしていた。


「少年だもん。大丈夫だよね? ウドリ―の森で採取できたんだから、ゴブリンぐらいは……倒せるよね? ……冷やし草を取ってきた実力、見せてもらうよぉ……」


 自分で送り出したのだから、少年を信じよう。きっと、いつも通りに戻ってくるはずだ。


 誰に聞かせるでもなく、本が返事をしてくれるわけでもない。

 司書の独り言は、書架に吸い込まれた。


誤字・脱字等ありましたら、よろしくお願いします。

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