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目指すは高嶺の華 泥にまみれても曼珠沙華  作者: 神寺 柚子陽
幼少期 化け物屋敷スローライフ
16/34

第十一話.兄弟の生活リズムと付喪神

予定繰り上げで、本編投稿開始。

宜しくお願いいたします。

 四十九院家の三男らしき、数えで4歳の子の体に転生(覚醒?)してから、約半月。

 ただいま僕は、蔵の中でぶっ倒れております。


「………たいりょく、ない。(ガクッ)」


 立派な錠前のついた、二階建てのこれまた立派なザ・お武家!って感じの蔵の中。倒れ伏して、石の床がひんやり気持ちいいのですが、目の前を(ねずみ)がちゅうちゅう通りすがって行くのがいただけません。あとで追い出してやる……!


 なんで今日は、こんなところに倒れているのかと申しますと、簡単に言えば、銀兄貴に惨敗したからです。

 

 僕の生活リズムは、朝四時に起きて、山で朝食を狩るついでに全力疾走で、先ず必ず一回ぶっ倒れ。(ちなみに現在は全力疾走開始10分でぶっ倒れて気絶する貧弱さ。最初は5メートル全力疾走する度にこけて、転んで、ぶっ倒れて気絶していた。)


 獲物を追回して、体力の無さに何回も気絶してぶっ倒れ。


 山から帰ってきて、朝食の支度をし、寝汚い銀兄貴を、寝床から出そうと毎朝、格闘して息切れを起こして、気絶はせずとも体力の無さにぶっ倒れ。


 食べたら少しの間は起きている兄貴の世話を焼いて、命令(?)を聞き、兄貴の語彙を増やす為、自分自身、年齢のせいで拙い喋り方だが、出来るだけ正しい発音とイントネーションで話し掛け、二度寝するまで兄貴の相手をしてから、昼間の家事に取り掛かって体力の無さにぶっ倒れ。


 昼飯を用意してから、その日二度目の兄貴との格闘を繰り広げて、地に伏し、時々惨敗してぶっ倒れ。


 銀兄貴は倒れている僕を尻目に飯を食って、また眠る。


 午後は兄貴を働かせようと思って、頑張るけども、八割の確率で僕が負けて兄貴はそのまま、晩飯まで寝床にIN.

 外に遊びに行こうと云っても、ずっと眠ったまんま、ご飯の時しか正常に起きてこない。


 仕方がないので、そのまんま僕は、屋敷内の把握を兼ねて掃除や探索、取って来た山菜の処理、獲物(現在は兎などの小物しか取れない)の解体、晩飯の支度などの家事をすることで過ごしている。


 夕方頃、ニオイに釣られて、この時だけは格闘なしに晩飯を食べる為、銀兄貴が自ら厨房にやってくる。器を渡して、厨房脇の部屋で何故か有ったちゃぶ台を囲み、箸の使い方を仕込みながら、手を合わせさせ、「いただきます」と言ってご飯を食べる。


 食器を一緒にあげさせた後。


今度は次の夕食のときまで眠ろうと、眠そうに目を擦る銀兄貴の手を引き、無理やり背中を押して、宥めすかして、説得して、井戸の水場まで連れて行く。この時の銀兄貴は、座らせた途端、うとうとしやがるので、その間に井戸水を桶から大きな(たらい)に移し替え、体を洗う準備をする。


 銀兄貴の頬をぺちぺち叩いて覚醒を促し、寝惚け眼で僕を抱き枕に夢の世界へ旅立とうとする彼に断りを入れて、コクリと頷いたら――ってか、毎回船を漕いでいるだけのようだが、構わず――服を全部脱がす。


 僕も自分の服を全部脱いで――……ってか、相変わらず、互いにボロ一枚なんだけどな。いい加減、新しい服が欲しい。屋敷内で見つけた服は、全部虫食いや穴が開いてて、着れたモンじゃなかったんだよ。――兄弟、二人とも素っ裸になる。


 銀兄貴を盥の中に手を引いて導き座らして、自分も別の盥の中に座り、水浴び開始。


 頭から井戸水をぶっかけてやると、驚いて目を覚ます。冷たい水にぶるりと震え、犯人が僕だとわかるとお返しとばかり、銀は水をかけ返してくる。それに軽い悲鳴をあげて、僕は水を掛けまくってくる銀兄貴を放置して、彼の寝汗を掻いた体を洗うのだ。


 つっても、怒って暴れるヤツの軽い攻撃を往なして、手を取り、足を取り、上から順に水をかけていくだけだけどな。髪だけはしっかり洗ってやってる。その時だけは、暴れず、気持ち良さそうにじっとしているから、手が掛からない。


 ああ、シャンプーとか、リンスとか欲しいです。どっかに転がってない哉? 戦国時代や江戸時代初期に活用した、天然の植物シャンプーと石鹸。……無理だろなぁ。体力ないから、探しに行くことすらままならない。歩くだけでも、おそらくきっと、やったことはないが、今居る武家屋敷近辺の村、一周しただけでもぶっ倒れて熱出すと思う。それくらい、現在の体は貧弱だ。


 話を戻そう。


 銀兄貴を洗ったら、今度は自分も洗って、屋敷内で見つけたボロ布を、御裁縫でチクチクとリサイクル(?)した手拭いで、互いの体を水気がなくなるまで拭う。風邪などひかないためにね。


 そして、服を着せ、自分の服も着て、自力で部屋に帰っていく銀兄貴を見送り、自分は明日の朝食の仕込みと、夜出来る針仕事や山菜処理、洗い物などの家事をして、陽が沈み、少ししたら寝るという規則正しい生活でその日を終える。


 時々、水浴びの後に僕を抱き枕にしようと画策して、自室の寝床に連れ帰ろうとする銀兄貴との格闘があり、夜の家仕事ができなかったりするけれど、平和な時を過ごしている。


 兄貴の睡眠時間は、一日二十四時間のこの日ノ本で、一日辺り平均、二十時間以上なんじゃないかとこの頃思う。活動時間が思い返すかぎり、四時間ほどしか起きていない気がしてならない。


 閑話休題。


 何故、今日、僕が家の中の蔵で倒れているのか。


 それはね、今が昼で、銀兄貴を動かすことにほぼ、いつも通り失敗して、一人で蔵掃除など始めたからさ。泣きたいデス、マジで。


 蔵に仕舞われている物は、家具や食器、曰くありげな怪しいツボ、お面、服、木彫りの置物に安めの茶器、舞いや歌舞伎に使う道具に楽器、昔の化粧品。他にも重そうなモノや子供が触って無事で済むのか、迂闊に障れば大怪我しそうな遊び道具や火器。そもそもどっからやって来たのかわからない付喪神化した道具たちなど、子供である現在の我が手にはあまりそうな、ヤヴァイ物たちが納められていた。


「《藍猫のお嬢が若になってるぅ! わーい、わーい、貧弱な子どもだっ。わーい、わーい、仕返しの時だぞ皆の者―!! えいえい、おー!》」

「「「「「《えい、えい、おー!!》」」」」」」


 蔵に潜んでいたらしい付喪神の妖怪、【瀬戸大将】とその配下の陶器の付喪神たちが、槍に見立てた小枝と爪楊枝を持って、倒れ伏している僕を敵に見立て、チクチク刺したり、叩いたり、合戦に見立てて騒ぎ立てる。


 ちなみに【瀬戸大将】とは、鳥山石燕による妖怪画集『百器徒然袋』にある日本の妖怪で、瀬戸物の付喪神(器物が変化した妖怪)の一種でありその画集には、瀬戸物の寄せ集めのような妖怪が、瀬戸物の甲冑を身に着けたような姿で描かれている。


 実際に何らかの伝承を伴う妖怪ではなく、『三国志』の登場人物である曹操と関羽の逸話をもとに、関羽をイメージした創作物として描かれたものといわれており、瀬戸物と唐津物の2種の陶磁器の激しい勢力争いを描いたものとの説もあるそうだ。つまり、弱い。


 瀬戸大将とその配下がたてる騒ぎ(怪異)は、夜中に小さな合戦を繰り広げたり、人気がないのに食器の音をガチャガチャと鳴らすだけだ。害はない。害はないが……イラッと来る。

 見知っている自分家の食器だと思うと尚更、腹が立つ。


 こいつら僕を一目見て、知り合いの魂だと見分けたはいいが、ぶっ倒れて弱っている子ども(僕)に攻撃してくるとは、どういう了見だ。……え゛?

記憶上、どこを探しても、貴様らを雑に扱った覚えはないぞ。むしろ、四〇〇年前に市で購入してからこっち、輪廻を通して丁重にお家の役に立ててきた記憶しかないのだが、いったいどういう了見だ。……あ゛?

 割れても破片をかき集めて、職人にお金払って、金注ぎしてやって、何代も何代も、大事に大事に使ってきてやった主人に対する第一声がそれか……?


 いくら温厚な僕といえども、ちょびっとばかしキレるぞおい。


「瀬戸大将、貴様ら覚えておけよ? “動ける”ようになったら、その積み重なった瀬戸物の食器の山、バラバラに分解して、扱き使ってやるからなっ。一枚、二枚、割ってやってもいいんだぞコラ」


 地の底から響く声で、静かに眼光鋭く言い放つ。

 瀬戸大将とその配下の付喪神たちの喉(?)から、ヒッ!という短い悲鳴が聞こえた。

 僕はやると云ったらやる。怒っている時は尚更だ。


「(割ったらお金が溜まるまでは放置で、溜ったら直せるだけ、直すけどね。)」


 瀬戸大将たちは、隊列をなして、そそくさと僕の目前に整然と並び立ち、土下座をした。


「「「「「《ご、ごめんなさいーーっ!! 割るのだけはっ、割るのだけはご勘弁をーー! ははぁーーっ》」」」」」


 体格、五〇センチほどの瀬戸大将を先頭にガチャガチャと小うるさく、食器が連鎖的に鳴って雑音を立てる。

 気のイイ奴らなんだが、上下関係はしっかりしておかねェと舐められる。妖怪相手にそれは時として、命取りになるのだ。

(こんな奴ら相手に遅れはとらねー自信はあるケドな。油断はしない方がいい。)

 

「頭を上げよ」


 ガチャガチャ陶器がこすれ合う音を立てて、瀬戸大将たちは居住まいを正す。


「無抵抗な人間を攻撃するなって、毎回、毎回、輪廻を巡って初対面の度に言ってるよなァ……?」


 見えない冷汗をだらだらと流す陶器たち。

 代表して、瀬戸大将が、消え入りそうな声で「《はい……》」と呟いた。


「今回も、お前らを重用するつもりだったが、このまま蔵に仕舞っておいた方がいいなら、そうするが……? お前ら、どっちがいい……? 仕舞われて日の目を見ずに当分忘れ去られるか、僕や兄貴に使われて、活き活きと過ごすか。さァて、どーっちだ? 十数える前に」

「「「「「「《使ってください!!》」」」」」」


 彼らは僕の言葉尻を遮って、大音声で本日、二度目の土下座をした。ガチャガチャと五月蠅く音が鳴る。


「早いなオイ……」


 その様子に、僕はちょっと引いて、引きつった苦笑を幼い顏に浮かべる。


「《我ら四十九院家(つるしいんけ)の瀬戸物家臣団一同、ご主君が文月(ふづき)遊楽(ゆうらく)様と呼ばれていた時より約四百年。周りが百年も()ずに捨てられる中、最初の持ち主である貴方様のご実家にそれはもう、大事に、大事に、大事にご使用いただいて参りました。齢百を経て、動く、喋る、怪異を起こす九十九神となってからも、大事にして頂いていたのは、藍猫のお嬢、いや、若様のおかげ。どうか、なにとぞ、なにとぞ、今生も使ってください。よろしければ、毎度恒例の主君の契りを結びたく……合候(あいそうろう)……》」

 

 武者然とした伸びやかな声が、瀬戸大将の徳利(とっくり)の形をした顏(?)から聞こえ、彼らは一斉に本日、三度目の土下座をする。

 僕はその様子に眉をへんにゃり悲しく曲げた。


「堅い。堅いよ。もっと楽にしてちょうだい」

「《あいすみませぬ》」


 がちゃがちゃ音を鳴らして、瀬戸大将たちは僕の目前に車座になり、胡坐(?)をかいた気がした。


「まず、主君の契りだっけ?」

「《はい。妖怪風の契りを結びたく……》」

「僕、お酒飲めないよ?」

「《な、なんと……!?》」


 瀬戸大将が驚きに目(?)を瞠る。なんか、筆と墨で描いたような気の抜ける顔が、彼(?)の顏に描かれているのだ。


 そして、妖怪風の契りとは、妖怪の主が己の百鬼夜行作成時に、盃にお酒を入れて、互いに盃を交換し、飲み干すというもの。ちなみに、百鬼の主がより強固な契約を結びたい時は、自らの血や一部を酒に入れて飲ませる。


 そうすると、部下が裏切った時に天罰が起こって裏切り者が破滅する……らしい。実際はそのようなこと、あまりないので、噂でしかないが、過去にその契約を主君と結んだ狸の一家が裏切り、狸汁にされたとか、ぬらりひょんの裏切り者の部下が、敵対組織に辻斬りされて、帰らぬ人になったとか、はたまた、どこかに閉じ込められて、ずっと封じられたまま出てこれない、だとか、いろいろな噂があったりする。


 ふと気づくと、周りがかなり五月蠅くなっていた。

 瀬戸物たちが、がしゃがしゃ音を立てつつ、戦々恐々と大きく騒ぎ立ててる。


「《それでは、某、徳利の出番がないではないかっ!》」

「《おちょこのオイラの出番もねーよーっ》」

「《お酒好きの藍猫の旦那が、の、の、の、呑めない、だ、と……!?》」

「《天変地異じゃ! 天変地異が起こるんじゃっ!!》」

「《我らが割れてしまうぞーーっ!!》」

「《大変じゃ、大変じゃ! それは大変じゃっ》」

「おいこら、静かにしろテメーら」


 怒気を込めて行ってやれば、はいっ!と声をそろえて瀬戸物たちは畏まる。


「外見、見ろ。俺、子供。数えで4歳。妖怪年齢で成人は13歳。人間年齢で元服(成人)もまだ。お酒、飲めない。OK?」


 真顔で丁寧に説明してやれば、あからさまにほっと胸を撫で下ろす瀬戸物家臣団。イラッとするから一枚くらい、どれか割ってやろうか?と魔が差す思いを脇に避け、体力が少し回復した体を起こして胡坐をかく。


 すると、おちょこの瀬戸物と茶碗の瀬戸物が、器から生えた手足を器用に用いて、ぴょんと身軽に跳んだ。僕の肩や足の上に乗り、伸ばしっぱなしの藍色の毛など軽く引っ張り、戯れる。別に気にするほどのことでもないので、好きにさせておいた。


「《それを聞いて、安心致しました。なれば我らが心意気だけでも今、お受け頂きたく候》」

 

 瀬戸大将が穏やかな(?)表情をして、僕に奏上する。


「何故?」

「《は? 何故と申されますと……?》」


 瀬戸大将の“へのへの”眉毛が訝しげにひそめられる。


「何故、僕に仕えたい……? 前世の死人たちと僕は別人だ。もしかしたらお前らを粗末に扱うかもしれない」


 片膝を立てた上に右肘をついて、ニヤリと笑う。

 瀬戸大将も相好を崩して、快活に笑った。


「《御冗談を。我らを貴方様が粗末に扱う……? もし、我らのうち、誰か一枚でも割られれば、もったいないと貧乏心が働き、今先程でも、欠片を集めては取り置いて、金が集まった時に金注ぎをしてくださる漆職人を探してくださろうと、思考してくださった貴方様が……? あるわけがない。故に我らはそんな貴方様に今生も仕えたいのです》」


 人間だったら、したり顔でにこにこ笑っているだろう瀬戸大将の言動に、秘かに舌を巻く。

 ――こやつ……。


「瀬戸大将、いつのまに読心術など身に着けた……? 俺の考えは御見通しか?」

「《おや、当たりでございましたか。拙者は読心術の心得などありませぬ無骨者にて。》」


 なるほど。今生以外のこれまでの僕の行動パターンを予想して言い当てられたか。こりゃ、一本取られた。


「敵わねェな、瀬戸大将には。主従の件、好きにしろ」

「《恐れ入ります》」

「《わーい、わーい! ちんまい藍猫の若がオイラたちを使ってくれるって!》」

「《わーい、わーい! ちんまい藍猫の旦那、よろしくおねがいしやすっ!》」

「《わーい、わーい! ちんまい藍猫の旦那、名前はなに?》」

「ちんまいは余計だ」


 思わず、眉間にピキリと青筋が入る。

 平常心を取り戻そうと首を横に振って、嬉しがる瀬戸物家臣団たちに言い渡す。


「名前な、まだない!!」

「「「「「《ええ~………ないのか。名無しの藍猫の旦那》」」」」」


 きりっと言ってやったら、あからさまに残念がる瀬戸物家臣団。纏め役の瀬戸大将でさえ、残念そうな微妙な顔をしている……気がする。


「そんなことより、お前らの配置を話そうぜ!」


 二回柏手を打って黙らす。勢いのイイ返事が返ってきた。


「おちょこと徳利は、僕と兄貴が大人に来るか、成人した客人が来るまで、家の神棚と仏壇担当! お神酒が手に入ったら、それいれて飾ります。今現在はないから井戸水で代用します。妖力で常に中の水がきれいで美味しい状態を保ってください!」


 元気のいい返事をしたおちょこと徳利たちを確認し、次はお皿たちを見る。


「お皿たち! 茶碗も、湯呑も、台所用品用の食器たちは、今日からあるべき所定の位置に納まってください。ろーていしょん、回転式で、気が向いたら順番に使っていきます。ほら、二組行って!」


 これまた、元気な大合唱のあと、手を振って家の方向に食器たちを走らせる。徳利は自分で井戸水組むし、食器は自分たちで協力して、棚に納まるだろう。付喪神のいいところは、ここなのです。自分で自分を使ってくれるとこ! それもあって、重宝するのです。特に子供時代は。大人になってもずっとずっと使い続けるつもりだけどねっ!


「さて」と言って、残った花器たち日常雑貨や瀬戸大将に目を走らせる。

 キラキラした期待の視線を他の瀬戸物家臣団同様、僕に向けてくる彼ら。ま、眩しい……。汚れた心を持つ身には、少々純情すぎて眩しいぞ。

 まあ、きっちり配置させてもらいますがな!


「花器は井戸水使って、庭の花をテキトーに自分に活けてくれていい。俺と兄貴の眼を、客人の目を愉しませろ。時々、俺自ら活けてやる。ほら、行った行った」


 ぺこり、と御淑やかに一礼して井戸の方向に走っていく瀬戸物の花器たち。うう~ん、シュール(異様)。


「《して、拙者は? 拙者はなにをすればよろしいでしょうか?》」

「ん? そうだな、瀬戸大将は、俺の掃除を手伝ってくれ。重い物が持てんのだ。いろいろ掘りだしたいのだが、葛篭(つづら)や荷物が詰まった大きな箱などがじゃまで、邪魔で、姿(ナリ)がちんまいから、背も足りん」


 腕を組んでそういってやったら、瀬戸大将はまたもや快活に笑い、それでしたら、となにかを面白がるように切り出す。


「《それでしたら、ご心配には及びません。皆の者! 出て参れ!!》」


 瀬戸大将が大音声を上げて、手を打ち鳴らす。

 わらわら出てきた付喪神たち。

 好奇心と『使ってもらえるのかな……? 使ってもらえるのかな? 使って貰えたらいなぁ……』という期待の視線がうざったい。

 イラッとして、頭を掻きむしり、蔵の中全体に向けて、大声で思いっきり叫ぶ。


「ああっもう! テメェらっ!! こそこそしてないでそこに直れ!! 使ってほしいなら、俺の家の掃除を手伝うか、もう掃除が終わった所の所定の位置につけ!! 気が向いたら使ってやる! ただし、外からの人間の客人には見つからないようにしろ!! 不審に思われたら俺が生きにくいからな! わかったか!?」


 嬉しそうに頷く道具たち。どれもこれも、売るところに売れば高価になるだろう者たちがほとんどだ。売らねェけどな。きっと、売ってもここに戻ってくるし。意味のねェことはしねェよ。


 ふと、蔵の外を走り回る琵琶を見つけた。奴め、頭の痛いことに外に出る門に向かってやがる。


「こら琵琶! どこに行く!? テメェは俺の部屋だ。横笛ども! 囲碁盤も! 将棋盤も! 楽器と遊戯道具たちはとりあえず俺の部屋か、掃除の終わった空いた部屋に行け!! こら、竹馬! テメェは外だ!! 玄関先にでも立てかかっとけ! 一週間以内にバランス確認の為、一度使ってやるから!」


 指示を出せば、付喪神化した奴らは、嬉々として屋敷内に自分の足で走って行ってくれる。探す手間と配置の手間が省けたと喜べばいいのか、これだけの数の付喪神たちを収納して、妖怪屋敷化したと嘆けばいいのか、微妙なところだ。


「ちっ、……ったく。予想外に付喪神の数が多いじゃねえか。自分で動いてくれるのは良いが、キリがねェよ。おい、こらっ! 葛篭箱(つづらはこ)(押入れのようなモノ)! テメェはまだ蔵にいろ! 中の掃除が不十分でテメェを置く場所はまだないんだよっ!」



付喪神GET。

生活がほんの少し楽になった3歳児の男の娘。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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