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第13話:迷宮の心臓部への潜入

7月の冷たい雨が新宿に降り注ぎ、4番ホームに残された血を洗い流していく。僕たち四人は犬神家の黒いワンボックスカーの中に身を潜めていた。車内の空気は、先ほど目撃した死よりも遥かに息苦しかった。


僕は汚れたピンクの帽子を拾い上げ、震える手で汚れを拭おうとした。これがないと、裸でいるような気分になる。


「正面突破は無理よ」しおりはタブレットで僕の家のデジタル図面を見つめながら淡々と言った。「早苗は『なろう』のサーバーと直結したバイオメトリック・センサーを設置している。もしあなたの心拍リズムが『作者ステータス』と同期しなければ、家全体が爆発する仕組みになっているわ」


「私ならハッキングできる」ルシアが吐き捨てるように言った。怪我をした腕を黒い包帯で固め、彼女はしおりを憎しみの目で見つめている。「エドの家に入るのに、あんたの飼い犬なんて必要ない。私は何ヶ月もそうやってきたんだから!」


しおりがゆっくりと振り向くと、その灰色の瞳にルシアは一瞬で沈黙した。「あなたは人間のシステムをハッキングする。私は運命をハッキングする。ルシア、そこには大きな違いがあるのよ」


「もういいじゃない」琴葉朱莉が囁いた。彼女はまるで完璧な指揮者を見つけたかのような崇拝の眼差しでしおりを見つめている。「しおり様の言う通りよ。私たちのこれまでのテクニックなんて、ただの子供騙し。生き残りたいなら、彼女が奏でるメロディに従うべきだわ」


ルシアは拳を握りしめた。「狂ったの、朱莉? 彼女はあんたのフルートを壊したのよ!」


「彼女は私に、より高い目的を与えてくれたの」朱莉は静かに答えた。


僕はただ黙っていた。「ピンク・メナス」と呼ばれた僕は、今やこの恐ろしい女たちの間ではただの脇役に過ぎない。


午前2時。僕たちはコンクリートの邸宅の前に到着した。しおりが先頭に立って進む。門に近づくと、あの巨大な犬神の影が再び現れた。だが今回は家の電線へと潜り込み、警報を一つも鳴らすことなく、すべてのセキュリティシステムを無力化した。


「入りなさい」しおりが命じた。


冷え切ったリビングへと足を踏み入れる。白檀サンダルウッドの香りが、今はより不気味に感じられた。僕たちは本棚の裏にある早苗の隠し部屋へと向かった。しかし、僕が仕掛けの本に触れようとした瞬間、部屋の照明が突如として明るく点灯した。


二階のバルコニーに、血のように赤いシルクのドレスを纏った早苗が立っていた。その手には、『なろう』のライブ原稿画面が表示されたスマホが握られている。


「エドちゃん……駅で書いたあの章は、ひどく期待外れだったわ」母の声が響く。穏やかだが、致命的な響きを秘めていた。「新しいキャラクターに主役の座を奪わせるなんて。それは物語の構成上、致命的なミスよ」


彼女は視線をしおりへと移した。「そして、小さな犬神さん……私の原稿を嗅ぎ回れると思ったかしら? あなたたちが駅を出た瞬間から、こうしてやって来ることはすべて書き込んであるのよ」


早苗がスマホのボタンを一つ押した。すると突然、暗い廊下からカクカクとした不自然な動きで数人の人影が現れた。それは僕の狂信的なファンたち――渋谷の地雷系女子たちだった。彼女たちの目は完全に白濁し、スピーカーから流れる超低周波音によって操られている。


「彼女たちは最終話を待ちきれない『熱心な読者』よ」早苗は口角を大きく吊り上げた。「エド、ペンを手に取りなさい。さもなければ、こいつらにあなたの脇役エキストラたちを切り刻ませるわよ」


ルシアはナイフを抜き、朱莉はフルートの破片を構えた。しおりは僕たちの前に立ち、黒いオーラを爆発させる。


「早苗さん」しおりが言い、影の牙が姿を現し始めた。「今夜、『完結』の二文字を綴るのが誰か、はっきりさせましょう」


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