表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/17

第10話:コンクリートの家のひび割れた鏡

その日の夕方、エドの邸宅の門が静かに開いた。早苗は室内庭園で薔薇の手入れをしていたが、招かれざる何者かの気配を感じ取った。足音ではなく、重苦しく奇妙な空気の震えだった。


入り口には、堀越学園の制服を着た一人の女子生徒が立っていた。犬神しおりだ。


「この家は、高価な香水で隠された朽ちゆくものの匂いがする」

しおりは淡々と言い、灰色の瞳で早苗をまっすぐに見据えた。


早苗はハサミを置き、優雅ながらも冷徹な微笑を浮かべた。「迷子の学生さん? それとも、エドちゃんのサインが欲しい熱心なファンかしら?」


「くだらないものには興味がない」しおりは許可なく足を踏み入れ、早苗を通り過ぎて壁の家族写真の前で足を止めた。「忠告に来た。あなたは自分の目的のために息子を利用している。退屈な手法ね、早苗さん」


早苗は目を細めた。目の前の少女から漂う、尋常ならざる雰囲気を感じ取ったのだ。「子供のくせに随分な言い草ね。私の物語を邪魔する者がどうなるか、分かっているのかしら?」


「消えるのでしょう、あの人たちのように」しおりは静かに答えた。「でも、私はあなたの思い通りにはならない。私は犬神。その厚化粧の裏にある恐怖の匂いがわかる。あなたは、エドが制御不能になるのを恐れているのね?」


早苗の手が一瞬震えた。完璧な仮面に生じた小さな亀裂。「ここから立ち去りなさい。あなたに悲劇的な結末を用意する前に」


「行くわ」しおりは背を向けた。黒髪が風に揺れる。「でも、エドには伝言を残した。あなたの『作品』が、この現実に耐えられるか見ものね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ