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転生忍びの冬 這いずり回る冒険者  作者: 弓納持水面


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決行

主人公弱いのは流行ってないのは知ってますが……。

 今朝はとても静かだ。昨夜の風が嘘だったかの様に止んでいた。ミリバールの針も高気圧側に振れ、今日は晴れると告げている。つまりは今日がオーガとの勝負の日になるという事。生死の谷間をすり抜けて、明日にたどり着けるか?


「アンゼ殿。本日決行します」


「…………わかりました」


 朝食の席で決意を伝えると、アンゼはしばしうつむいてから承諾した。その微妙なは、言いたい事と合理的な判断がせめぎ合う時間だったのだろう。


 アンゼは訓練により狙いをつけたなら、そこそこ離れた的に当てる事が出来るレベルには達している。練習で矢を一本駄目にした甲斐はあった。


 囮になる私は装備を改めて、確認する。愛用の忍び鎌×1、十字手裏剣×2、煙火玉×1(煙玉を改作)、火薬玉×1(榴弾仕様)。そしてアンゼにはクロスボウと矢が2本。どちらも防具は無し。人員、装備共にオーガと戦うには心許ない。


「我らに至高神の恩寵があらんことを」


 私が地下を出る直前にアンゼが至高神に祈りを捧げた。オーガを引き付けるまで、アンゼは装填済みのクロスボウを持って待機する。


 先程、天候が良い事とオーガが修道院を出た事は確認済み。機会チャンスは今回しかない。私も普段は祈らない至高神に珍しく祈った。


☆☆☆


 昼前。


 私は修道院の屋根の上から南に拡がる森を見ていた。近くの縄張りの確認を終えたオーガが修道院に戻って来るのが見える。


 オーガは手に棍棒[鉄パイプ]、そして簡単な腰巻きを着ける為に、巻いた縄には獲物の解体用に手斧を差していた。


「鬼の腰巻パンツは虎の皮」は前世の童話だが、どうやらゴブリンから奪った鹿の皮か何かを着けているらしい。


 隠形の術で姿も気配も消しているが、オーガにどのぐらい通用しているのか分からない。風は西から東に緩やかに流れているから、臭いについては五分五分だろう。


 猟師には鹿や熊から姿を隠しつつ、矢の届く距離まで近づく技がある。逆に狩猟者たるオーガにも餌である人間やゴブリンに近づく術があるはずだ。


 だが運は私に味方した。オーガは修道院の壊れた入口に堂々と入ってゆく。私は竜力を使うまでもなく、オーガの後背に無音で降り立った…………はずだった。





[咆哮]

[竜跳躍](使1残4+1)


 待ち伏せしていたオーガの両手持ちの[鉄パイプ]による横薙ぎの一撃を間一髪躱す。やはり気が付かれていた。予想範囲ではあったので、すかさず用意済みの火口に火薬玉を擦らせ放る。


 オーガは当たり前に[鉄パイプ]の切り返しをしてきたが、前回の音響玉の教訓からかオーガは火薬玉を打たなかった。しかし振り抜いた[鉄パイプ]を切り返ししてくるとは恐るべき膂力りょりょく


 と。重い破裂音がした。手製の火薬玉は前世の軍用手榴弾の廉価版。だが、火薬により至近距離で撒き散らされた金属片はオーガに突き刺さりダメージを与える。


 あわよくば金属片が急所に当たり、仕留められないか?と願っていたが、それは無理だった。無論、体内に入った金属片は、いずれオーガをむしばむかも知れない。だが今はオーガを激昂させ、動きは止まらない。


[咆哮]

[竜加速](使1残3+1)


 またたく間に間合いを詰められ、振り回される[鉄パイプ]の暴風の様な連撃に晒される。受ける事も、いなす事も叶わず躱すのみ。竜力での加速バフが無ければ死んでいるだろう。


 そんな綱渡りをしているのも、オーガの気を逸らす為。背後ではクロスボウを構えたアンゼが地下から姿を現し、狙いを定めている。私は更に気を逸らす為、十字手裏剣をオーガの顔面に向け投じた。


 十字手裏剣には打つと投げる技があり、打つは攻撃、投げるは牽制を意味する。オーガは十字手裏剣を避けず何と鉄パイプを持ったままの腕で受けた。結果、腕に刺さりはしたが、対してダメージを与えられていない。()()()事を見切られたのだ。


 しかし機は熟した。アンゼはクロスボウを発射。風切音がして首を矢が貫く…………。直前にオーガは振り向きもせず横に僅かにズレた。


 クロスボウの矢は後背からオーガの左肩に突き刺さり、大きなダメージを与えた。しかし致命傷ではない。


[咆哮]


 オーガは振り向きざまに[咆哮]した。その隙に私は後退し、煙火玉を火口に擦る。作戦は失敗した。装填に時間がかかるクロスボウに二の矢を放てる余裕はないからだ。一撃必殺がならなかった以上、私はアンゼが隠れるまで時間稼ぎをするしかない。


 が、オーガは甘い相手ではなかった。[咆哮]により萎縮したアンゼにオーガは手斧を投げつけたのだ。手斧は狙い違わずアンゼの胸に突き刺ささった。即死はしていないだろうが、治療しなければ致命傷になるだろう。


 私が後から投げつけた煙火玉が破裂した。炎と煙が撒き散らされる。背中を炎に焼かれたオーガは再びこちらに向き直った。


「お前の相手はこっちだ!」


 私は叫ぶ。アンゼが自己治癒出来るか分からないが、ノロノロと地下に逃げ込みつつあるのが見えたからだ。ただ斧を引き抜き治癒魔法がかけられても、衰弱死から逃れられるかは微妙に見える。


 オーガが答える様に[咆哮]した。煙火玉の火が礼拝堂に多少延焼しても、全焼はしないだろう。絶望的だが無意味に死んだ前世よりは()()()死に方が出来そうだ。私は術に必要になるであろう分だけ間合いを取った。



終了時点の装備

武器

忍鎌

十字手裏剣×1


私の黒歴史がまた1ページ。

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