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Exhaust  作者: あると
Chapter.3 カーボンランナー 編
54/58

3-End 再会/邂逅

あるとです。

今回でChapter.3は終わりです。

Chapter.1公開から1年弱。

1年弱でChapter.3までしか進んでない。

長えです。本当に長えです。

Exhaustはまだまだ続くので、お楽しみに。

主催者が、ブルーシートのベールを剥ぐ。すると中には、倒れないように複数個のベルトで固定されたエンジンが現れる。


「これが、あのARTSの元専属チューナーだった男が作り上げたといわれる、いわくつきのエンジン。正真正銘、2JS130-GTE改だ。」


目の前に広がるそれは桜井の父親、啓人が生前最期に作り上げたエンジン、超軽量仕様2JS130-GTE改。会場には、歓声や驚愕の声が後を絶たなかった。


「アタリだったな……おい、桜井?」「……なんで逝っちまったんだよ……親父……!」桜井の目には涙が浮かぶ。


このエンジンを2000GTに載せて走る事が夢だった啓人は、惜しくも事故で妻と共に他界。両親の葬式も行えなかった悠人にとって、この2JS130は2人の遺骨と同じような存在でもあった。


桜井にとっては、このエンジンとの再会は、死んだ父親と5年ぶりに再会出来たようなもの。嬉しくも悲しい状況に、桜井の感情はごちゃごちゃになっていた。


「……長かった。あんな別れ方じゃ、納得いくわけねーじゃんかよ……。」桜井の肩が、小さく震えている。


そしてエンジンを目の前に、桜井は泣き崩れてしまう。ついに自分のものにできた安堵の気持ちと、両親は本当に死んだという絶望。その2つが、彼をそうさせた。


南場は、桜井につられて目にじわじわと涙が浮かび始める。「……私にとっても、良い師匠だった。親父は……啓人くんは、皆の父親で居ようとした。私にも、家族のように接してくれた。


悠人くんも、私を姉のように慕ってくれて、大切にしてくれて、嬉しくて嬉しくて……。」


鼻をすすりながら、南場は本間と水谷にそう話す。南場は続けて話す。「でも、彼が本当に大切だったのは、大好きだった父親だった。だって、彼にとって1番の憧れだったから。」


南場の言葉に、本間も水谷も何も言えなかった。3人はただ、目の前で崩れ落ちる桜井の背中を見つめることしかできない。


東條は桜井のすぐそばで腕を組み、その様子を静かに見ていた。「……久しぶり、親父。」桜井は立ち上がり、エンジンに向かってそう告げる。


こうして、福岡都市高速でのレースは、幕を閉じた。






「……エンジンは名古屋にもう送ったから。帰ったら高市さんの所にあると思うよ。」「うん、ありがとう姉貴。」


日曜の昼、南場家。桜井は荷物をまとめて、2000GTのトランクに積みながら、南場と話していた。もう、桜井が福岡でやらなければならない事は済み、あとは名古屋に帰るだけ。


「……また、悠人くんに会えなくなるのか、寂しくなるねぇ。」淡々と荷物を積む桜井の背中を見て、昔の子供だった桜井を思い出した南場は、寂しい気持ちになる。


「……でも、なんかの拍子に会うことになるかもね。今回みたいにさ。」「だといいけどね。」南場は笑いながらそう言うが、その目はやはり寂しげだった。


「今度は、もう少しゆっくり話せるといいな。」桜井はトランクを閉める。鈍い音がガレージに響く。


「……そうだね。今回はレースばっかりだったし。」少しだけ間を置く。「次、福岡に戻ってきたら、ちゃんと飯でも食いに来るからさ。」


南場はその言葉に、ほんの少しだけ救われたように頷く。「……約束だぞ?」「もちろん。約束は守るよ、俺。」


「言ったな〜?」2人は笑いながら言葉を交わす。すると、玄関のチャイムが鳴る。「ん、お客さん?」南場は玄関へ向かう。


「よ、来たぜ。」玄関の前には、本間がいた。「げ、アンタ……いや、アンタら!」本間の後ろに、まだ福岡に滞在していたNEXTECS130の2人が立っていた。


「本間クンは茶化しだとして、2人ともどうしたの?」「俺は別に茶化しに来た訳じゃ──」本間を置いて水谷が2人の前に出て話す。


「桜井クンに言ってないことがあったからさ。それを言いに来たのヨ。」「わざわざ桜井を詰めて話すことでもないんだが、本人に話したほうが早いもんでな。」


南場は少しだけ表情を引き締める。「……言ってないこと?」奥でそのやり取りを聞いていた桜井が、玄関の奥から顔を出した。「俺に?」「お、桜井。」


水谷は軽く頷く。「そ。昨日の夜に2人で話してた事。気になってたっしょ?ほら、時名。」


桜井は南場のすぐ隣に立ち、話を振られた東條の話を聞く。「……話って、なんです?」「……お前にしか頼めない事があるんだ──!」






ある日の深夜。東京、首都高速都心環状線、通称"C1"。伍井俊介(いつい しゅんすけ)という男は、高市チューンドの黒いポルシェ964を駆り、C1内回りを走行していた。


(C1もいいもんだな。八重洲線とは一味違う、新鮮さがある。特に内回りは、この汐留S字を抜けてからが面白い。


そういや……柳田は汐留区間が得意だって言ってたな。また今度、アイツに教えてもらおうか。)


964は汐留S字を抜けると、いつも通っている八重洲線とは別方向の、汐留トンネルを抜けるC1ルートへ向かう。


(今日は……八重洲線(ホームコース)の気分じゃないよな、俺。)200km/hクルーズでも、RRのアンバランスな構造は、コーナーを抜ける度にリアが振り回される。


それも全て"勉強と経験"と言い、伍井は構わず走り続けた。




『速く走るためのポルシェという選択なら、4WDが基本だ。メーカーが911の完成形を4駆って決めてるくらいには、RRと比べても圧倒的に速い。


それにRRは、C1ではリアが振り回されちまって危なっかしい走りしかできない。だが、それで学べることも少なくはないよな。


お前の選択は正しいよ、俊介。』




伍井は、964のチューンを頼んだ時に高市が言っていた言葉を思い出す。(親父の組んだエンジン……そしてボディは、どれも完成度が高い。


1000基以上エンジンを組んできたってのは本当らしい。おかげで、安心して命を預けて走れる。その安心感も全て、チューナーによるセッティングによるものだ。


親父が無理やり、その選択を正しくしてくれてるだけだ。俺は、いつまでも親父っ子なのかもな……ん?)


そう独り言を呟いていると、964のバックミラーに、後ろから何かが物凄い勢いで迫ってくるのが一瞬映る。


(何だ、今の?)気になった伍井はアクセルを緩め、その"何か"を待ってみることにした。(見えた……な!?)


ミラーに映るのは、オレンジ色のフェアレディS130。神谷友樹のS30S130と同じ、S130432オレンジのS130S130。(S130?神谷さんのZはS30のはず……じゃあコイツは、一体誰だ?)


だがこのS130S130から放たれるプレッシャーは、神谷のS30S130と同じように、とても重たいものだった。(……誰だか知らねーが、ヤるしかなさそうだな。)


伍井はアクセルを踏み直す。964のフラット6の回転が一気に跳ね上がり、一気に加速していく。S130のドライバーは伍井の行動に気づき、その後を追っていく。


S130の加速は、伍井の964を大きく上回るほど圧倒的で、2台の差は一瞬で縮まった。汐留トンネルを抜けると、すぐ真後ろにS130がいる、そんな状況だった。


S130の加速力に伍井は、驚いている暇さえなかった。加速勝負では確実に負けると判断した伍井は、すぐにブロックの体勢に入る。


(速えッ、ブロック間に合うかコレ!?)分かっている、間に合うはずがない。S130は964のブロックを上手くかわし、前に出る。


S130が前に出たその一瞬の動作は、職人芸と言えるほどに完璧。伍井では手も足も出なかった。(抜かれた……まぁ、仕方ないかな。)


伍井はZを追うのを諦め、深川線へと向かおうとする。(このまま9号行って辰巳で止めるか。)S130のドライバーも同じく深川線へ行こうとしていた。


2人のドライバーはそれぞれ、相手の考えを察知する。と、S130のドライバーがアクセルを緩め、964と並走を始める。


その時、S130のドライバーの姿が見えた。(……やっぱし、神谷クンだったか。)S130のドライバーは、ARTS4代目リーダー、神谷友樹(かみやともき)だった。


(神谷クンなら、あの速さも納得だな……萎えた、これ以上テンション続かねーわ。箱崎PAで止めよう。)江戸橋JCTで、6号線に入る2台。


並走しながら少し走ると、S130がまたスローダウン。964の後をつける。そのまま箱崎ロータリーに降り、箱崎PAへと入っていく。


車を止めるとすぐ、伍井が車から降りる。その直後に、神谷もS130から降車する。「やっぱりアンタだったか、神谷クン。」


「みんな"神谷クン"て言うよな。オレのほうが年上なんだから"さん付け"してくれよ。」神谷はZのボンネットに腰を下ろし、呆れた表情でそう言う。


「こうやってフランクに話したほうが、アンタも気が楽かなって思ってさ。」伍井も、964のフェンダーに腰を置く。「そりゃそうだが……んで、いつものエボ3じゃないんだな、お前。」


神谷は立ち上がり、伍井の964を見て回りそう聞く。


「お前と言えば、"C1最速のエボ3"で有名なのに。」「RRとゆー特殊な構造からも、4WDの走らせ方が学べるかもなって。」


伍井は軽く肩をすくめる。神谷は「へぇ?」とだけ返し、964のリア周りをじっと見る。「で……学べてんの?」


「まぁ、ぼちぼちかな。この車で神谷クンの相手しろってのは無理だね……さっきみたいにボコボコにされるから。」


伍井は笑いながら、神谷のマシンを見る。「で、そっちはなんでS130なわけ。S30はどーしたんだよ?」


神谷は少し黙り、ため息をつく。「……事故ったんだ。50km/hも出てなかったんだが、当たりどころが悪くってな。ちょっと悔しいかな。あの車好きだったから。」


「あ、そう。」すると、伍井のスマホに着信がくる。「すんません、電話行ってきます。」「ん。」神谷は気に留めることなく、S130を見つめる。


(悔しい……が、またコイツで不敗神話を築けばいい。それだけの事。いずれまた、Primesともバトる事になんのかな……そんときは、八重洲でやってやるか。)


神谷はそう考え事をしていた。S30からS130に変わっても、彼の思想が変わるわけではない。いつまでも帝王でいる、それが彼の在り方だった。


少しして、伍井が電話を終えて戻ってきた。「……小暮くんだっけ?」「そう、速く来てくれって。セッティングくらい自分でやってほしいけど。」


伍井は964に乗り、急いでエンジンをかける。「また今度、そっちでお前とバトらせてもらおうか。"C1最速"のホームコースで。"C1最速"のエボ3と。」


神谷がそう煽ると、伍井は「いーよ、また今度。」と言い、箱崎PAをゆっくりと出る。そしてまた、6号線へと戻っていった。


(……無理、負けるに決まってら。)内心そう思っていた伍井だったが、またバトルする時に思い知る事になる。自分は八重洲線なら神谷よりも速く走れる……と。






Chapter.3、終わり。

首都高でのバトルのシーンに登場した、

伍井の964。これはChapter.2のラストにて

桜井の乗った車と同一個体です。

このキャラは後々、ストーリーに関わってくるかも。

今後の話をお楽しみに。

以上、あるとでした。

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