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Exhaust  作者: あると
Chapter.2 ファーストステップ編
20/24

2-5 怪物と翔馬

あばるとです。

暇なのでPV数とかを確認してみたら、

もう580PVもされているとは。

ユニーク数も250人突破してますし。

とても嬉しい所存です。今後も、この作品が

沢山の方々に読まれるように頑張ります。

よろしくお願いします。

翌々朝、HIGH CITY。高市は1人で、赤田達に頼まれているパーツを作っていた。(……アイツ、中々キツイこと言うな。9000回転に耐えれるタコ足とインテークだってよ。俺は金も貰ってるし、仕事で作るしかないが、プライベートなら絶対断る案件だもんな。嫌ンなるぜ……キリもいいし、少し休憩するか。)高市は席から立ち上がり、店内に向かう。

高市は缶コーヒーを片手に、作業場を振り返る。削りかけのアルミブロックと、図面に書き込まれた寸法の数々。「……ったく、あの女社長め。こんな面倒くさい作業丸投げしやがって。黒字なら機械買って、そこで作りゃいいのによ……。」そんな愚痴を呟いていたとき、自分の愛車であり、代車でもある日産パルサーが搬入されてきた。「……悠人か。」

ガレージの外でパルサーのドアが閉まる音が響いた。しばらくして、中に入ってきたのはやはり桜井悠人だった。「高市さん、2000GT出来ました?」「おう、バッチリだ。8500まで回せるようにしてくれって頼まれたときは驚いたが、可愛い甥っ子の頼みなんだ。ちゃんと仕上げといたぜ。」桜井は目を輝かせ、作業場の奥に置かれた2000GTへと駆け寄った。

ボンネットの中には、1JZの精密で精巧なエンジンボディが組み上げられていた。「見栄えはあまり変わらない気もしますけど……パワーの方はどうなったんです?」「そうだな……出せて450馬力は出ると思うぜ。コレでも大健闘なんだからな。あと……。」高市は立ち上がり、2000GTの方に歩いていく。

「このエンジンは上までキチンと回さないと、こいつのポテンシャルを存分に発揮できない。キチンと8500回転まで回せ。自分の車の弱みを武器にせず、強みを全力で生かす事だ。」「分かってます。前にも言った通り、"欠点を削ぎ落とし、強みを生かす"が理念ですもの。強がって、弱みで戦う必要はないですから。」高市はにやりと笑い、タバコをくわえ直した。

「……ならいい。忘れんなよ、悠人。車も人も、強みを磨き続けた奴が最後に勝つんだ。」桜井は静かに頷き、2000GTのシートに座る。「そろそろ油圧式サイドに変えようかな……。」桜井はポツリと呟いた。その呟きに高市は反応する。「いいんじゃないか?ステッキサイドはドリフトに向かねぇしな。レース用の探しとこうか?」

「……どこでそういうの見つけれるんですか?」高市は微笑みながら、2000GTのドアを閉めた。(高市さん、本当に何者なんだろう……。)桜井は2000GTのエンジンをかけ、静かに車を発進させた。(……フン。やっぱり正太郎に似てんだよな、悠人。あ、そういやバルブ作らなきゃいけねぇんだった。アイツラが来るからな……早く終わらせなきゃな。)高市はそう思いながら、また席に着いた。




数時間後。「……こんなんでいいかな。出来たぜ2人とも。」高市はまた戻ってきた赤田と片桐に、完成したチューニングパーツを見せに、2人を呼ぶ。「あ、出来ました?」高市は完成したパーツを手に取る。「もちろんだ。言われたとおり、カーボンエアファンネル4つとマグネシウムコンロッド4つ、H22Aの純正品を弄った改良バルブヘッドにチタンマフetc……頼まれたものは全て作ったぞ。」

「……確かに、コレで頼んだ物は全部ね。強度もバッチリ!……取り付けもしてもらえません?」高市はため息をついて言う。「ハァ……それくらいはしてくれよ。作り始めてから寝てねぇから疲れてんだ。ガレージは貸してやるからさ。俺は寝る!」高市は店内に歩いていき、店内に入る。

「チッ、そこまではしてくれなかったか……。じゃ、片桐くん。早速取り付けるよ。」「……社長。本当にコレで350馬力になるんですか?ターボ取り付けたほうが手っ取り早いだろうに……。」赤田はレンチを手に取りながら、少しだけ笑った。「そうね……確かにターボは手っ取り早くパワーを上げられるけど、欠点も多い。特にターボラグは、シングルタービンの宿命ね。」

「なら、ツインターボにすればいいんじゃないですか?それならターボラグも少しは解消できるし、何よりピーキーさも解消されるし……。」赤田は作業をしながら片桐に教え込む。「それはそうね。だけど、ツインターボにするだけのスペースが、このエンジンルームにあるわけじゃない。なら、VTECの良さであるNAのレスポンスを強めたほうが、欠点の少ないまま速くできる。」

赤田はボルトを締めながら続けた。「……片桐くん。車ってのはね、机上の計算だけじゃ速くならないのよ。ターボを積めばパワーは出る。数字の上ではそれで満足できるかもしれない。でも──」彼女はアコードのエンジンに手を置いた。「この子の良さを殺すような速さじゃ、意味がないの。大事なのは“欠点を削って、強みを最大限に伸ばす”こと。だからNAの良さを引き伸ばすって手段にでたってわけ。」

片桐は唇を噛みしめ、レンチを止める。「……つまり俺は、まだ数字しか見えてないってことですか。」「気づいたなら上出来。"数字を追おうとする人は確かに速くなる。だけど、その数字以上の速さを求めようとする人間はもっと速くなる"。この言葉は、絶対に覚えておいたほうがいい。ま、車が欠点だらけでも、それを覆うポテンシャルがドライバーにあるなら話は別だけどね。」

片桐は拳を握りしめ、視線をエンジンに落とした。「……俺は、まだ“数字の中”でしか走れてないってことか。」赤田は微笑みながらも、その目は鋭い。「そう。でもそのことに気づけるなら、伸びしろはある。走り屋にとって一番危ないのは、欠点に気づかずに勝った気になることだから。」片桐は小さく息を吐き、再びレンチを握り直した。「……なら、強みに賭けてみますよ。俺の走りも、この車も。」

数時間後、パーツの取り付け作業は完了した。その時の時間帯は、ちょうど夜だった。「……いい時間だし、ちょっとテスト走行でもする?」「そうしましょうか。新しくなったアコードが、どれだけ速くなったかワクワクしますよ俺。」片桐はドアを開け、ドライバーシートに座る。赤田も、アコードの助手席に座る。「なんだか久しぶりな感じね。」

「そうですね。そういや、足回りとかは新しくしないんですか?」「まあね。片桐くんが元々取り付けてた車高調が使えるからね。このサスが実戦セッティングの状態だったから、350馬力なんざ余裕で受け止めてくれるよ。」片桐はキーを捻り、エンジンを始動させる。進化したH22Aが目覚め、片桐は感動した。「これが、俺の車……!」

「……いい音。前よりも、明らかにレスポンスが上がってるわね。」赤田は耳を澄ませながら微笑む。「あ、片桐くんちょっとまってて!」そういうと、赤田は店内の方に向かって走っていった。「ゴローさん!」「……んだぁ?人の睡眠の邪魔しやがってよ。」高市は不満げに言う。「ゴメンナサイね。少し桜井くんに言っておきたいことがあって。」

「……悠人に?」赤田は目の色を変えて、高市に言った。「えぇ。こう伝えておいてください。"明後日の10時に、名古屋C1でレースをする。だからそれまでに支度でもしておいて欲しい"と。レースに関しては、多分ギャラリーもぼちぼち現れると思いますよ。なんせ、名古屋最速の名前が危うくなってきた頃なんでね。それじゃ!」赤田はそう言い、店を出てアコードに乗る。

高市は少しポカンとしながらも、ニヤリと笑う。「……10時ね……フン、面白くなってきたぜ。今の若ェ奴らの走り、ギャラリーに紛れて少し見てみてもいいかもしれねぇな……。」




当日、10月31日。夜の空気は湿り気を帯び、街灯に照らされたアスファルトは緊張を孕んでいた。レースの開催を聞きつけたギャラリーたちが次々と集まり、環状線の入り口の料金所前には、観客の車が幾つも並んでいる。VTECサウンドを響かせながら現れたのは、銀のアコード。片桐だ。アコードの隣にいた赤田は、余裕の笑みを浮かべていた。「何、随分かっこよくなったじゃないの片桐クン。」

「社長に言われると、何だか自信が湧いてきますよ。……本命が来たようですね。」遠くから響く直列6気筒のサウンド。環状線に、桜井の白い2000GTが現れる。すると観客の声は一気にざわつき始める。(何だかキンチョーするな……。ギャラリーが沢山いるから、余計にキンチョーする……あれがか。)2000GTはアコードの前で、ゆっくりと停車する。ドアを開き、桜井は車から降りた。

「あなたが白翔馬ですね。桜井悠人さん……ですよね?」「俺の名前知ってるんだ……なんだか有名になったなぁコイツ。」桜井は少し照れ、視線を2000GTに逸らす。「……やる事は簡単。ココを3周して、チェッカーフラッグ持ってる人の前を通過した時、前にいた方が勝ち。コレでいいですね?」桜井はまた、片桐に視線を移す。

「OK。俺はいつでもやれるよ。」「じゃあ、手っ取り早く始めましょうか。カウントは誰が?」片桐は周りを見渡す。そこで、赤田が手を挙げた。「じゃ、私がカウントしようかな。ウチの看板背負ってんだから、ちゃんと見送るくらいしなきゃね。さ、並んだ並んだ!」赤田の言葉を聞いた2人は、早速それぞれの車に乗り込む。

桜井は古い3点シートベルトを、片桐はレース用5点シートベルトをキッチリ締め、轟音ともいえるエンジンサウンドを鳴らしながら、スタートラインに並ぶ。ギャラリーの歓声が一気に増え始める。だが赤田が手を挙げると、その歓声は静かになる。「……2人とも準備万端か……こっちも楽しくなってきた!それじゃあ、カウント行くぞ!」

次の話でやっとレースパートになります。

レースシーンを描きたかったけど、

それまでのドラマも作りたかったので

長くなりました。

ちなみに桜井と片桐は同い年の設定です。

以上、あばるとでした。

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