2-6 SK-AutoTec VS 白翔馬
あばるとです。
最近思います。あばるとって名前を変えたいなって。
カタカナにしたら完全にイタリア車じゃないですか。
なんで、これからは「あると」で行こうと思います。
これもこれでひっかかりそうですが……。
「カウント行くぞ!」並んだ二台の前に立った赤田は、手を掲げて合図を始めた。ギャラリーは、遂に始まる名古屋最速総当たり戦の始まりを目の前に歓声を上げている。「5…!4…!3…!」赤田がカウントを始めると、並んだ二台はエンジンをふかし始める。
(キンチョーする……だけどやるしかない。名古屋最速に一歩近づくためにも、ここは勝つ!)桜井は心の中で願掛けをしていた。
「2…!1…!」片桐は、一瞬桜井の方に視線を向ける。(相手の車は空力特化型のミディアムウェイトクラス*……スタートでタイヤが空転してしまえば、ポールポジションはコッチのもの。そもそもこのクラスのパワー域でのFFのトラクションに、FRが勝つことはない……。あとは逃げ切るだけだ──!)その瞬間、赤田の手が振り下ろされる。
「──GO!」
2人は一斉に1速にギアチェンジしアクセルを踏むと、2台のマシンは一斉に走り出す。すると、アコードはFFのトラクションを全開に活かし、スタート直後で前に出る。やはり稼げるトラクションはアコードの方が高かった。
(FFのゼロ加速は舐めれたもんじゃない。スタートはコッチのほうが速い!)アコード先行の状況で2台は名古屋C1に入る。(確かに2000GTの加速はアイツのアコードに劣る。
が、中間加速なら負けない。この為に9000まで回るエンジンを組んでもらったんだ。無駄にはしない!強みを全力で活かす!)桜井の考えの通り、9000回転まで回る1Jの中間加速は、アコードの低加速を超える速さだった。
その加速をバックミラーで確認した片桐は、自分のメーターを確認する。アコードの速度は220km/h。2000GTはそれを超える速度で走ってきていたのだ。
「なっ……一瞬で220オーバー!?なんつー加速してんだあの2000GT!?」片桐も負けじとアクセルを踏み込み、桜井から逃げる。桜井の2000GTは片桐の予想を軽々と超え、怒涛の中間加速で距離を詰めていく。
バックミラーに収まりきらないほど迫る白いボディに、片桐の心臓は大きく跳ねた。
(クソッ……!やっぱり直6ターボの伸びは別格か!)
220km/hを超えたアコードの針はまだ上がり続けていたが、それでも2000GTとの差は縮まる一方だった。「このままじゃ直線で飲み込まれる……なら!」
片桐はアクセルを戻さず、そのまま次のコーナーへ飛び込む覚悟を決める。一方の桜井は冷静だった。(スタートで出られるのは想定済み。けど、最初のコーナーで必ず追いつける……。俺の2000GTは空力で路面に吸い付く。220だろうが230だろうが、躊躇なく突っ込める!)
迫るコーナー。轟音を響かせながら、2台は最初の高速コーナーへ突入していく。片桐はブレーキを遅らせ、FFのフロントを限界まで押し込んだ。タイヤが悲鳴を上げ、アコードのテールがわずかに流れる。
(まだだ……!絶対に引かねぇ!俺が先頭を譲ったら、この勝負は終わりだ!)その背後で、桜井は冷静にステアリングを切った。
2000GTのボディは空力のダウンフォースに支えられ、路面に吸いつくように旋回していく。
(予想どおりインを抑えた……外からかぶせて一気に前へ──!)ギャラリーの視線が釘付けになる中、アコードはインを死守し、2000GTはアウトから被せる。火花を散らすような距離で、2台のラインが交錯する。
アコードは必死に先頭を死守し、2000GTはその背後に食らいつく。
次の直線、桜井の2000GTは再び怒涛の加速で距離を詰める。(まだだ……!絶対に抜く!)速度計は240、250と針を振り切っていく。片桐も必死にアクセルを踏み込むが、バックミラーを覆い尽くす白い影に冷や汗をかいた。
(やべぇ、このままじゃ並ばれる!)次の高速右コーナー、桜井は迷わずアウトから突っ込む。2000GTは空力に支えられ、異常なほど安定した旋回を見せた。
だが片桐も一歩も引かない。インをこじ開けるようにして突っ込み、タイヤを悲鳴させながらも車体をねじ込む。「抜いた!」という歓声と同時に、「まだ前だ!」という声が交錯する。
わずか半車身──再びアコードが先頭を守りきる。(はぁっ……ギリギリだ……!)──だが、桜井の目は静かに燃えていた。(分かった……このままじゃ押し切れない。なら最後のセクションで決める!)
C1名物のS字区間。速度を落とすとFF有利、だが流れるラインを繋げればFRの旋回力が活きる。二台は時速230kmのまま突入する。片桐は必死にインを抑え、ステアリングを乱暴に切り込んででも前に出させまいとする。
(絶対抜かせねぇ……!)だがアコードの鼻先が跳ね、限界の挙動を晒す。そこを逃さず、2000GTがスッと外からかぶせる。(今だ──!)観客の視線が一点に集まる。
二台はほぼ並走、出口でアクセルを踏み抜いた瞬間──FFのトラクションとFRの加速が火花を散らした。わずかに前に出たのは2000GT。「抜いたぁっ!」歓声が弾ける。クランクでついに前に出た2000GTがトップに立ち、名古屋C1は2周目へと突入する。
「まだだ……!まだ終わっちゃいねぇ!」アコードのステアリングを握る片桐は、喉が裂けるほどの叫びと共にアクセルを踏み抜いた。
環状線高架下のギャラリースペース。赤田と五十嵐は、片桐の勝利を願って勝負を見守っていた。「ユーさん。こんなこと聞くのもなんだけど、今回の勝負、どっちが勝つと思う?」
「……正直なところ、桜井くんの方が1枚上手かな。この道を走りこんでるだけあって、自分の車の状況をよく分かってる。でも、片桐くんはまだ車に対する理解が乏しい。タイヤに関しては特にそう。」
五十嵐は息を呑んで、赤田の話を聞く。「強みであるトラクションで勝負してほしい所なんだけど、苦手なタイヤで挑むってなったら、片桐くんに勝ち目はない。75%くらいの確率でね。」「……確かに、タイヤマネジメントが成ってないと、"上"の人間に勝てるわけがない。片桐くんは、それに気づけるかって事でしょ?」
五十嵐は自分のFDのタイヤを見て、そう言った。「まぁ、大体はそうね。……あ、もし片桐くんが負けたら、次に出るのは壮也だからね?」
五十嵐は目を丸くして驚いた。「え、俺!?」「当たり前よ!もう後ろ盾がないんだからしょうがないでしょ!?んで、壮也が負けたら私が出る。これで私が負けたら、名古屋で一番速いのは"彼"ってことになる。だから、私に戦わせないように緊張感もっと来なさいよ?」
五十嵐は面倒くさそうに、FDのボンネットに座る。「お願いだから、片桐くん勝ってくれ!頼む走りたくないんだよ俺!」
「フフッ。じゃあ、走りたくなるようなおまじないでもかけてあげようか?」赤田はにやりと笑いながら五十嵐に言う。「……何それ?」赤田はギャラリーの人だかりに向かって叫ぶ。「君たち~!五十嵐くんが写真とろーって!」
「あっ!ユーさんよくも……!」その言葉を聞いた五十嵐のファン達は、一斉に五十嵐のもとに駆け寄る。「あっ!ちょっと待ってよ!ユーさ~ん!」
五十嵐がファンに押しつぶされそうになっているのを横目に、赤田はその場から抜け出していた。(ふぅ。……片桐くん。大好きな先輩にめーわく掛けないようにね──!)
一方名古屋環状。FF特有のフロントタイヤの引っ張り加速で、直線では何とか2000GTの背中に食らいついていく。ギャラリーも、先ほど抜かれた直後とは思えぬ接戦に、声を張り上げていた。
対する桜井は冷静だった。(差を広げたいが……この速度域では簡単に引き離せない。けど、クランクで決めたのは大きい。相手が焦って仕掛ければ、終わりだ!)
1JZを9,000回転まで回し切り、直線でアコードをじわじわ引き離す。だが片桐は諦めず、ギリギリのブレーキングで差を詰めてくる。「オレのアコードはまだ終わっちゃいねぇんだよ!」2周目のクランクが迫る。
観客の視線が一点に集まる中、片桐は意を決した。(もう一度インに突っ込む……!さっき抜かれた場所で、取り返す!)ステアリングを切り込み、フルブレーキングでアコードをインへ滑り込ませる。
──だが、速度は230km/h。FFのトラクションを過信したその突っ込みは、限界を超えていた。「ぐっ……くそっ、曲がれ──!」アコードのフロントが一瞬逃げ、次の瞬間リアが大きく振られた。
荷重移動に耐えきれず、アコードのボディ角度は180゜回ってしまった。(……!)桜井はアクセルを緩め、ステアリングを軽く外へ逃がす。
白いボディがスッとスピンしたアコードを避け、そのままクランクを駆け抜けていく。360度回転したアコードは、遂に道路わきに停車した。
*の部分について。
ミディアムウェイトクラスとは、
1t〜1.4tまでの重量の車の事を指す造語。
なのでこの用語は存在しません。
新しく広めてください。
以上、あるとでした。




