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141/312

♭141:根幹かーい(あるいは、大正義DEP売りDEPん軍)


 はてさて。


 この「予選二回戦」が始まってからは、大分時間が経ったかと体感していた私であったが、あにはからんや21分しか経過してねえよまじかよ……


 1分が1日くらいに感じられたのは、おそらく極限までの集中と、それを余儀なくさせられた「対局者」たちとの悶絶ダメドッグファイトに由来すんじゃねえの的、どこか他人事にすら思えるほどの濃密な地獄絵図を思い返そうとして、やめやめ、と軽く頭を振って前を向く。


 視界は流れていく。何の演出かは知らんけど、開始スタート当初は快晴の青空だったのが、徐々に鮮やかな夕焼けオレンジに染まっていってる。


 態勢は相変わらず、気を付け仰臥の私に、主任が上体反らしで重なるという、組体操で例えると何だろう……ええと、うん、「交尾」だあー!!


「……」


 いかんね。だいぶ疲弊しとるよね。遥か高みの上空を、あっちこっちに振り回されながら、「獲物」を狙ってバックを取りにいったり、はたまた「強敵」から逃れるように錐もみ離脱をかましたりと。


 DEP以外の要素が割とハード。細かく指示出ししてくれてる主任の真剣で凛々しい顔を下から見上げながら、私も小刻みにアクセルとブレーキを使い分けながらのストップ&ゴーを繰り返し、何とかここまでたどり着いた。そして。


<ゴールまで残り:9,830m>


 そんな表示が視界の隅に、緑の文字で明滅する。スタート当初は途方もなく思えた「100km」。それを不断の極限ちからによって消化し、ついに10分の1を切った。


 ここまで来れば……そう思いたいけど。


<対局者残り:134組 /完走者:2組/70組>


 そのような表示も出ているわけで。つまりは今この瞬間、ゴールしたのが出始めているってことだ。対局者は、「共食い」のような潰し合いにより、開始時の10分の1に減っているけれど、ここまで勝ち抜いてきてるってことは、相当の手練れたちしか残っていないとも言える。


 さらに、「勝者が敗者の残エネルギーを得る」というルールなんだけれど、レースが進むにつれて全組の残高は当然減るわけで、倒しても得る物がどんどん少なくなっていくという鬼畜の所業としか思えん状況にも落とし込まれつつもあるわけで。


 選択肢は2つある。


 ひとつは、このままアクセル全開で、ゴールを目指す作戦。でも……残念だけど。


「……残高が『7,500ナジー』しかない」


 私の逡巡をその長い顎部で感じとったのか、主任が一瞬目線を私の方へと寄越しつつそう掠れたテノールで言ってくる。表情は変えないけれど、疲労は目で見て分かるほど色濃いい……ああでもその枯れ方がまた素敵……


「周りをぶっちぎるのは『120km/時』は要る。その場合、『1m進むのに3ナジー』は必要とされるだろう。したがって、今のままではゴールの遥か手前で墜落となる」


 あかんあかん。現実逃避にはまだ早い。状況は軽く絶望的ではあるものの、主任は冷静に状況……燃料の多寡と残距離を推し量って活路を見出そうとしてくれている。


 私も考えなきゃ。いや、考えるまでも、無いことなのだけれど。


 第2の選択肢は、勝負。


 そぁう、結局のところはDEPで相手をねじ伏せるしかないんやぁっちゅうねん。


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