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喉を潤した所で再び会話を再開する。
「まず、確認するがその聖剣について本当に何も言われていないのだな?!」
「あぁ、これが聖剣だって事もさっき知ったしな」
包丁にも劣る薄汚れた物が聖剣だと思う奴はいないだろう。
「ふむ、では説明しよう!
その聖剣の名は『ドッペル』!!
初代勇者がこの世界に召喚された際、いつの間にか手にしていたと言われている!!!
『ドッペル』は手にした者の内面を映す剣と言われており、初代勇者が手にした時は光輝く銀の剣だったらしい!!!!」
「銀の剣、ねぇ」
ちらりっと先ほどメイドさんが拾って手渡してくれた剣に視線をやる。
いつ見ても薄汚い剣だ。
……ん?
さっき、手にした者の内面を映す剣とか言っていなかったか?
とすると…………。
「………」
「………」
「…俺の内面は薄汚い、てことか」
「……他人は他人、気にするな!」
「気にするわっ!!!」
あのふざけた王様と言い、剣にまで馬鹿にされてんのか俺は!
「そうそう、『ドッペル』の真髄は外形出はなく内面、つまりは性能だ!
その点に関してはお主の剣の性能は高い!!
誇っていいぞ!!!」
魔王は快活に笑った後、フォローを入れてきた。
「性能?これに?
さっき振った時は別に特別な感じはしなかったが……」
「ふ、やられた方は堪ったものじゃなかったぞ!」 「?
俺何かしたっけ?」
思い返すがさっき魔王を切りつけたら腹の調子が良くなった位しか思いつかない。
「先ほどお主に切りつけられた時、内心
『ふ、この程度の攻撃なんぞではかすり傷一つつけられんわ!』
と思っておった!
だがしかし!!
まさか内部へ攻撃を受けるとは思わなんだ!!!」
「内部…?」
内部って何だ、内臓か?
「攻撃を受けた所、突然我が身を襲った謎の腹痛!
漏らしてはいけない物を漏らしてしまうカウントダウンが始まりかけていた!!
トイレに行くにも勇者の前から突然姿を消したら我が輩は敵前逃亡したことになってしまう!!!
そして、『俺を倒してから行け』と言われた時の絶望感と言ったらもう……!!!!」
「あー。
一応俺もアンタにそれ、されて恐怖体験したからな」
「……すまなかった!」
「良いって、お互い様だ」
こうして茶をご馳走になってるしなとカップを軽く掲げて笑う。
「その恐怖の後の『俺もその辛さは分かる。早く行ってこい』という言葉は天からの光明のようだった!」
「それは良かった」
あまり真面目に言うもんだから思わず笑ってしまった。