国王、逃亡中
「ひ~どいですわぁ~。ひ~どいですわぁ~」
溜まっている政務が怖かった。
なので、こっそりリヴァイアサンまで来た。
……のだが、今、ローラに掴まっている。こってり絞られている。
エイジアの人たち? もちろん、ライナたちに任せきたよ。
「妻を一人置いて、ず~るいですわぁ~」
「妻ってなんだよ。どうせ、婚約者というのも設定なんだろ」
「婚約者は設定ですわぁ~」
「ほら」
ほら、やっぱり。
「でも、妻は本当ですわぁ~」
「どゆこと?」
「サインしていましたわぁ~」
「サイン?」
記憶ないんだが?
「婚姻届にサインしていますわぁ~」
「いや、してないって」
「でも、ほら」
と控えを出す。
「ホントだ。俺の字だ。おかしいな」
サインした記憶ないんだが?
最近は、私掠免状にサインしたくらいだな?
「でも、俺と結婚して、お前にはメリットないじゃないか?」
「王様の妻ともなれば、
国のお金使いたい放題ですわぁ~。
ザクザク、ホイホイですわぁ~」
ザクザクはわかるけど、ホイホイって何よ?
「さて、冗談はここまでですわぁ~」
「いや、お前の存在が、すでに冗談なんだが?」
「ひ~どいですわぁ~。
パワハラですわぁ~。国王の権威かざし過ぎですわぁ~」
「で? 本当の目的は?」
「エイジア皇帝への謁見。
わたくしも参加させて欲しいですわぁ~」
は? そのために、結婚? どうかしてる。
「お前には世話になってるから、
結婚しなくてもそのくらいの頼みくらい聞いてやるって……」
「予想外でビックリですわぁ~」
よくないことにならないといいのだけど……。
大丈夫だよな?
「ところで、ベスティアって、エイジアと国交あるの?」
「ありませんわぁ~」
「どうして?」
「遠すぎますわぁ~。時間かかりすぎますわぁ~」
まぁ、確かに遠いわな。
海路で日本とヨーロッパを行き来するようなものか。
「全自動にしたら問題ないんじゃないの?」
「途中に海賊が出るので、そうもいかないですわぁ~」
確かに途中に、海賊行為を推奨してる変な国があったな。
「お前らなら、海賊くらいなんとかしそうだけど」
「海賊なら怖くないですわぁ~。
問題は、その後ろにいる連中ですわぁ~」
「聖国か? あれ、そんなにヤバいの?」
「ヤバいですわぁ~。激ヤバですわぁ~」
激ヤバって久しぶりに聞いた気がするな。
前世以来じゃね?
「聖国の聖術がヤバいですわぁ~」
「そなの?」
「この星と繋がる術式を使って、星そのものが持つ力で敵を攻撃するのですわぁ~」
へぇ。
「何がヤバいの?」
「この星の全てが索敵範囲で、この星の全てが射程圏内ってことですわぁ~」
わぁぉ。
「激ヤバじゃん」
逃げられないじゃん。
「このリヴァイアサンだけは、例外みたいですわぁ~」
「というと?」
「高速航行時には、この世界から切り離されるんですわぁ~」
ふぅん。
それじゃ、俺たちがいつでもリヴァイアサンに乗り降りできるようにしたら、オレンジタルトを出し入れする時以外は、常時高速航行にするのもありかもしれないな。
おおかた、エイジアとの商売での移動手段に、リヴァイアサンを使いたいというのだろう。
ローラとミカンは、いつでもリヴァイアサンに瞬間移動できるらしいから……
「俺とエリナとライナは、どこにいても、リヴァイアサンとの間を瞬間移動で行き来できる」
という「ウソ」をついた。
澄んだ不思議な音が脳内に響いた。
空気が一瞬入れ替わる感覚がした。
成功したようだ。
これで、次に牢屋に入れられても、いつでも逃げられるな。
「え?」
俺は、スマホを見た。圏外になってる。
そうか、今、高速航行中か。
ということは、執務室は?
行ってみた。開けてみた。山盛りの仕事だ。
そして、見ているうちに増えていく。
そっちは、繋がってるんかい!!
代官がスマホで呼び出せないから、ドアは迫ってこないけど、
仕事は増えてるのね。
この仕事転送システムは、
リヴァイアサン生成時に作られてるから、
謎システムが成立しちゃうのか。
「オレンジタルトへ」
おぉ、オレンジタルトの自室へ移動できた。
「ちょっと勝手に抜け出して、どういうこと!」
今度は、ライナに掴まった。
案の定、こってり絞られた。
今日は、そういう日なのか……。
「ライナ。そろそろ、エイジアに……」
あ!! エリナにも見つかった。
「アーク。こんなところにいた。さっきまで大変……」
「おぉ、そうだな。そろそろエイジア沖だな」
「「ちょっと、アーク!!」」
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次回
『話が違うんだけど?』
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